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25話 ドン引き

「ゆっくん、そっち行ったわよ!」


一匹のルナールフが、こちら目がけて突っ込んでくる。

盾を構えるも、変則的な動きに翻弄され、左手は忙しなく動いている。


「奇襲が成功して甘く見てた……こいつ真っ当に戦うとこんなやっかいなのか!」


スピードこそスライムの突進ほどではないが、速度を落とさず変則的に動くルナールフは非常にやっかいだ。


(守るなら上半身だ!足への攻撃なら耐えられる)


急所への攻撃は、HPを大きく失う可能性がある。

呪いでHPが半減している今、まともに喰らえばひとたまりもない。


敵が目前に迫る中、俺は盾を胸の位置に固定し迎え撃つ。

ルナールフは地面を蹴ると、盾を持つ左側に軌道を変えた。


俺は瞬時に体を左に向けたが、それがまずかった。

ルナールフは見事なターンを決め、無防備な首元めがけ飛び込んできた。


「くっ、そぉおお」


咄嗟に右腕を前に突き出し、急所への攻撃は防ぐことができた。

しかし、右手に食い込んだ牙は俺のHPを容赦なく削っていく。


(くそっ、引き剥がそうにも俺の力じゃ引き剥がせない!)


レベル2のステータスじゃびくともせず、HPは3割まで減少していた。


「えいっ」


諦めかけた瞬間――シエラさんの渾身のスイングから放たれた一撃が、ルナールフの頭部を捉える。


「遅くなってすみません。援護します!」


シエラさんが呪文を唱えると、俺のHPが少しずつ回復していく。


「クリスさんの方は大丈夫なんですか!?」


俺の問いにシエラさんは「大丈夫です」と答え、目の前のルナールフから目を離さない。

一瞬だけクリスさんの方に視線を向けると、3匹いたルナールフが残り一体にまで減っていた。


(同じレベルでも、経験の差でここまで違うのか……)


自分から申し出た一匹相手にも苦戦している現状に歯噛みするが、立て直したルナールフを前に気を引き締める。


(次はどっちから来る……)


あいつの動きをみてからじゃ対処は難しい。

わざと隙を作って攻撃を誘導するか……いや、もっと確実に――


俺は目の前に現れたパネルを操作し、タイミングを見計らう。


(まだだ、やつが地面を踏み込む直前――今だ!)


パネルの決定ボタンを押すと、突然ルナールフの前に黒い穴が出現し、ピコが姿を現す。

突然目の前に現れたピコに驚き、ルナールフはその場で急停止した。


俺はその隙を見逃さず、ルナールフ目掛けて走り出した。


「ふぅ、危ない場面もあったけど何とか勝ててよかったなぁ……」


俺は今、二人の視線にさらされている。


「ユキトさん……」


違うんです。

わざと隙を作って動きを誘導する方法も考えたけれど、あいつがその上をいく可能性も捨てきれなくて……


しかしいくら戦闘中だったとはいえ、自分でもドン引きする行為だ……

ピコはもちろんシエラさんの反応も納得がいく。


でも決して悪意があってやったことではないと、俺はシエラさんの誤解を解くため必死に弁明した。


ちなみに、ピコの方はさっきからすごい唸り声が聞こえるので、視線を向けることができない。


結局、シエラさんからはもうしないという約束で許してもらい、ピコには全力の土下座と残りの餌を全て献上することで事なきを得た。


「もう少しでリエアに着くわよ」


まだ少し距離があるものの、リエアの街を視認できる距離まで来ていた。


クエストを受けて、金を手に入れる。

手に入れた金の使い道を考えていると、クリスさんは手で俺たちを制止して足を止めた。


「無視しちゃってもいいんだけど、あなたはどうしたい?」


クリスさんの視線の先にはアルマクトの姿があった。

アルマクトを無視して進むか否か、俺に判断をゆだねてくれたようだ。


「倒します。ただ試したいことがあるので俺一人にやらせてくれませんか?」


先程の戦闘で俺のレベルは二つ上がって4になり、装備も充実しているので負ける要素はない。

シエラさんはクリスさんに視線を向け、


「私たちにかっこいいところ見せてちょうだい」


そう言ってクリスさんはウインクをして、俺を送り出してくれた。


クリスさんたちは、俺の申し出を以前のリベンジか何かだと思っているだろうが、それは違う。

俺の目的は前回のメンテナンスでうやむやになった、テイムの検証をここでするためだ。


アルマクトは俺の姿を確認すると、体を丸めて弾みをつける。


(アルマクトの攻撃は避けちゃダメだ。こいつの攻略法は――)


アルマクトは弾んだ勢いを利用して突っ込んでくる。

そんなアルマクトを俺は盾を斜めに構えて、迎え撃つ。


前回のクリスさんのアドバイス通り、軌道をズラされたアルマクトは地面にのめり込んだ。


無防備になったアルマクトに勢いよく剣を振り下ろし、HPの残量が二割になるようにその後も攻撃を続けた。


(よし、HPは削った!あとは――)


俺はアルマクトにトドメを刺さず、一歩引いた。

するとアルマクトは慌てて体勢を立て直すと、再び体を丸めて戦闘態勢に入った。


俺は右手に持った剣を放り投げると両腕を大きく広げ、攻撃の意思がないことを示した。


(これで条件は揃った。今、テイマーの歴史に新たな希望が――)


「ぐふっ」


直後――アルマクトの体が鳩尾みぞおちにめり込んだ。


なんでだ、これがテイムの条件じゃなかったのか!?

いや、そんなことよりも――


急所に受けた攻撃で俺のHPは一気に減少し、反撃しようにも剣は先程自ら手放してしまった。

アルマクトはすでに勢いをつけてこちらに向かってきている。


「う……うわぁああ」


アルマクトの突進を咄嗟にいなし、無防備になったアルマクトを両手で持った盾で全力殴打した。


事切れたことを知らせる討伐報酬が出た後も、俺はしばらく呆然としていた。


背後から近づいてくる二つの影。

二人の存在に気づき我に返った瞬間、俺が見たものは全力で引いているシエラさんとクリスさんだった。


武器を捨てて盾で殴リ倒すとか、そりゃ引かれるに決まってる……


「あ、えっと、これはですね、そのぉ……誤解っていうかぁ……ち、違うんだーーー!!!」


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