13話 アルマクト再び
「それじゃあまり時間もないし、そろそろ行きましょうか」
クリスさんの号令で、いよいよ初パーティでの狩りが始まった。
(さて、戦闘の前にピコをどうするか……)
今、俺の装備欄には空白がある。
この空白をタップするとピコのアイコンが表示され、装備することでピコを召喚することができる。
通常ならモンスターテイマーはテイムしたモンスターを一緒に連れて戦闘を行うのだろうが、ピコのスキルには戦闘系のスキルが一つもなく、完全に戦力外だった。
テイムしたモンスターは戦闘に参加していなくても、経験値は入る。
それならばとピコを引っ込めようとも思ったが、一緒に戦闘した時と比べ獲得経験値は大幅に下がるようだ。
ピコを連れて戦えるのならそれに越したことはないが、もし戦闘でピコが瀕死になった場合、モンスター専用の蘇生アイテムを使わなければいけない。
「クリスさん、あの、モンスター蘇生アイテムの翠蓮草って簡単に手に入るものですか?」
「うーん、多分だけどそんなに簡単じゃないと思うわ。店売りにはないアイテムだし、テイマー自体が少ないからバザーにも売ってるかどうか……」
まずいな……もし相当貴重なアイテムだった場合、ピコの復活ができなくなる可能性もある。
ピコは石礫で瀕死になるほど脆い。
戦闘に巻き込めば、最悪――失うことになるかもしれない。
俺の考えていることが伝わったのか、
「この辺のエリアだと、遠距離攻撃してくるモンスターもいないし、私たちの後ろに隠れていれば大丈夫じゃないかしら?」
クリスさんがフォローを入れてくれた。
このままずっと同じ様にとはいかないもんな、いずれはピコと一緒に戦うことになるならパーティを組んでる今がチャンスか……
「わかりました。できれば俺ではなくピコを優先して守ってもらえると助かります」
レベル上げ程度の事でピコを失うわけにはいかない。俺は念の為クリスさんにそう告げた。
「大丈夫よ。レベル1になったとは言え、聖騎士の守りはすごいんだから」
頼もしい言葉とともにウインクをして返してくるクリスさん。
俺はその言葉を信じ装備欄からピコを選択し、フィールドに出現させる。
いよいよ準備が整い、俺達はモンスターを探すためフィールドを歩きはじめ、
そして散策から5分も経たずに敵を発見する。
「あいつは!」
あのフォルム、そして硬そうな背中。
見間違えはしない、先程手も足も出なかったアルマクトがそこにはいた。
「ゆっくん、私としぃちゃんはサポートに回るわ。だから攻撃をお願い」
クリスさんの言葉に咄嗟に口が開いた。
「待ってください。俺の剣じゃあいつにダメージを与えられなかった、それに盾もあいつとの戦いで壊れてしまって――」
俺の否定が終わる前に、クリスさんはそっと俺の肩に手をおいた。
「大丈夫、アルマクトの攻撃は私が防ぐわ。あなたはタイミングを見計らって攻撃してちょうだい」
クリスさんはそう言って、アルマクトの前に立ちはだかった。
アルマクトはクリスさんに気づくとすぐに臨戦態勢に入った。
威嚇するように鳴き声を上げ、体を丸くして弾み始める。
(クリスさん、堂々とアルマクトの前にでてどうするつもりだ?パリィ狙いだろうけどそんなに簡単じゃないぞ!?)
クリスさんの盾は、ちょうど肘まで覆うぐらいの大きさで、ひと目見て高ランクの装備だと見て取れる。
しかし、今は俺のレベルに合わせて装備も下方修正されているはずだ。
だがそれでもクリスさんは、微動だにしない。
俺はクリスさんの姿を、ただ目で追うことしかできなかった。
アルマクトは弾んだ勢いを殺すことなく力に変えて、一瞬のタメの後クリスさんに向かって突進する。
クリスさんは慌てる様子もなく、左手に構えた盾の位置を調整し、ぐっと足に力を込めてその場に留まった。
そして、アルマクトの強烈な一撃がクリスさんの構えた盾に当たった瞬間、アルマクトは軌道をずらされ地面にのめり込んでいた。
「は?……はぁぁぁぁあ!?」
俺の声が静かな草原に響き渡った。
でも驚くなという方が無理な話だ。
俺があれだけ苦戦したアルマクトをいとも簡単に無力化したのだから――それも俺と同じまでレベルも装備も下方修正されたクリスさんがだ!
「ゆっくん、今よ!」
クリスさんの呼び声に俺は一瞬反応が遅れるが、それでもアルマクトは微動だにせずその場から動けなくなっていた。
俺はアルマクトに向かってショートソードを振り上げた。
弱点と思われる剥き出しになった腹は甲羅と違い、何の抵抗もなく深々と突き刺さる。
見る見るうちにHPが削れていくアルマクトを見て、俺は何の感情も抱かないまま、やがてHPは0になりアルマクトは完全に動かなくなった。
どうしよう。スライム以外で初の勝利のはずなのに全然嬉しくない……
これ、どうみても介護されて倒しただけで、俺は何もやってはいない。
初のパーティでの戦闘は、何の達成感も得られないままあっけなく終えたのだった。




