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12話 初パーティ

「それでは、この子の名前はピコちゃんに決定しました~」


俺はシエラさんの発表に、拍手で答えた。


シエラさんからラピードラビットの名前を聞かれたものの、俺には名前をつけるセンスはないようで、口にした名前を聞いた二人は難しい顔をするばかりだった。


ラピードラビットはシエラさんに懐いた事もあって、彼女に名前を決めてもらうことにした。

その結果、「耳がたまにピコッて立つのが可愛いんです」という理由で名前はピコで決定となった。


「さて、と。それじゃあそろそろ、記念すべき第一回目の活動を始めましょうか。ゆっくんは何かしたいことはあるかしら?」


初心者の俺を気遣ってくれているんだろう。クリスさんは俺のしたいことを優先してくれるようだ。


「そうですね……まずはレベル上げをしたいです」


先程の戦闘では、自分の不甲斐なさを痛感させられる結果になった。

装備不足、戦闘での立ち回りなど課題は山ほどある。


どれも足りていないが、一番優先すべきなのはやはりレベルだろう。

レベルが上がればステータスも上がり、新しいスキルも覚えられるかもしれない。


「いいですね。レベルを上げれば新しいスキルも覚えられますし、ダンジョンに行くこともできますよ」


「ダンジョンってレベル制限があるんですか?」


「レベルに制限はないわ。ただ適正レベル以下でダンジョンに入ると経験値と報酬がガクッと下がっちゃうのよね」


そうなるとますますレベル上げが重要になってくるな。

一部の装備には適正レベルがあるようだし、いい加減布の服とはおさらばしたい。


「では早速レベル上げに行きましょう!」


俺は逸る気持ちを抑えきれずに、二人に声を掛ける。


「その前にちょっといいかしら。モンスターを倒す前にパーティを組みましょう」


「はーい。それじゃあリーダーは、ユキトさんお願いしますね」


シエラさんは笑顔でこちらに投げかけてきたが、俺はそれを全力で拒否する姿勢を取った。


「ちょ、ちょっと待ってください。俺がリーダー!?それはさすがに……」


俺が慌てて否定を口にすると、クリスさんが「実際に見てもらった方が早いわね」と言って、メニュー画面を操作しはじめる。


ピコンッ。何かを通知する合図の音と共に、パーティ申請の文字が画面に表示される。


『クリスからパーティに招待されました。承諾しますか?』

       【はい】 【いいえ】


俺は流されるままに申請を承諾し、クリスさんの作ったパーティに参加した。


(なるほど、パーティリーダーは名前の横にマークが表示されるのか)


画面の隅に、仲間のレベル、HPとMP、名前と顔のアイコン表示される。

その中でクリスさんの名前の横には王冠に似たマークがついていて、パーティリーダーが誰か一目でわかるようになっている。


(クリスさんのレベルは78、シエラさんは……83!?)


わかってはいたが、やっぱり二人とも相当やりこんでいるみたいだな。

このゲームのレベル上げがどれだけ大変かわからないけど、上限が100だとしたら二人とも相当な高レベルプレイヤーだ。


ピコンッ。再び通知を告げる音と共に、


『パーティリーダーが変更されました』


と、短い文が画面に表示された。


始めはどうして初心者の俺がパーティリーダーをするのか理解できなかったが、それは変更後すぐに理解する事になった。


「ごめんなさいね。説明するより見せたほうが早いと思って」


画面をよく見ると、先程までの高レベルが一転、二人のレベルが俺と同じレベルまで下がっていた。


「パーティを組む時、リーダーのレベルを超えることができないようになってるのよ。それから――」


クリスさんの話では、発売当初はこのようなレベル修正はなかったそうだ。


しかし、何人もの上級プレイヤーがクラン拡大の為、新規プレイヤーの獲得に躍起になり、

即戦力を求めたクランは、高レベルの狩り場へ初心者を連れていき、半ば強引にレベルを引き上げていた。


その結果、過剰なまでの介護プレイを受けた新規プレイヤーは、早々とゲームを辞めてしまうようになった。

(ゲームの楽しみ方は人それぞれだが、俺なら自分の成長を感じられる機会を奪われてまでゲームをやる気にはなれないな……)


その後程なくして、レベルの修正に関するアップデートとストーリーの進捗に合わせたマップの開示などが行われ、なんとか問題を回避することができたようだ。


「高レベルの敵にしても、レベル差があった場合一定のダメージを与えないと経験値が大幅に下がるようになったわ」


なるほどな、リーダーを上限としたレベル補正、そして経験値の獲得率の修正。この二つがあれば介護プレイをある程度防げるってわけだ。


「ストーリーもパーティを組んだ時は、リーダーでなければ進行できません。 なのでユキトさんにリーダーをお願いしちゃいました」


「そうだったんですね。あれ?でもそれなら今回はただのレベル上げですし、リーダーになる必要はないんじゃ……」


今回はストーリーを進めるわけではないので、俺がリーダーをしなくても特に問題はない。

なのにどうして全員がレベル1になるデメリットを負ってまで、俺をリーダーにしたのか理由がわからない。


「それはですね、私たちも今だけはユキトさんと同じ速度で歩いてみたくなったから……って理由じゃダメですか?」


「でもこれ以上お二人にご迷惑をおかけするのは――」


二人の気持ちは純粋に嬉しい。

でもそれ以上に俺のレベル上げに付き合わせてしまっている状況で、これ以上二人に迷惑を掛けるのは心苦しかった。


「そりゃあレベルが下がるのは面倒な事も多いわ、でもね迷惑なんてこれっぽっちも思ってないわよ」


「そうですよ。むしろこちらこそ勝手にお手伝いしちゃって申し訳ないと言うか――」


二人はどこまでも優しい言葉を掛けてくれた。


「ありがとうございます。今は無理でも、このお礼は必ずしますので」


今の俺に返せるものなんて何も無い。

それでもここまで優しく接してくれる二人には、何か絶対にお礼をしたいと強く思った。


「もぉ~堅いわねぇ。私たちは好きでやってんのよ。気にしちゃだぁめ」


クリスさんの言葉に俺がまだ渋っていると、


「うーん、ユキトさんがどうしてもお返ししたいって言うなら――」


シエラさんは少し悩んだ素振りを見せ、言葉を続けた。


「――てください」


「あらぁ、いいじゃない。私もそれに賛成よ」


シエラさんからの提案は俺にとって予想外のもので、でもそれはとても彼女らしい願いだと思った。


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