64 もうやりたい放題
【前回のあらすじ】
無事ルカと再会を果たした太陽。
太陽とルナは、ルカを攫うと、再び日本へ戻るためにソリに乗るのであった。
――場所は変わって再び上空。
俺、ルカ、ルナの3人を乗せたソリは、ルナの魔力で宙を浮き、再び我が家と繋がっている転移ゲート目掛けて飛翔したのであった。
「ん。たいよう……勝手にいなくなって、ごめんなさい」
「本当だぜ全く。以前もこんなことあったよな? これで前科2犯だぞ?」
「ん……」
御者台に座るルナに運転を任せ、俺は荷台でルカに説教をしていた。
まあ、再三言うけど、どちらかというとこっちの世界の重要な儀式をめちゃくちゃにした、俺とルナの方が重罪なんだけどな……。
こっちはまた後日、ちゃんと謝罪するので許して欲しいです。
っていうか、殆どこのドMロリババアのせいです。
俺は半ば巻き込まれただけなんです。
信じてください。
先代の神官長を務めていた〝ばあや〟の対応を見るに、ルナは現役の頃からめちゃくちゃやってることは想像に難くない。
ばあや氏の心労を考えると、同情してしまうくらいだ。
「それで……ちゃんと聞かせてくれ。俺によくない部分があったのなら、謝るから……。だから、急にいなくならないで欲しかった……」
「たい、よう……うぅ……」
ルカと離れていた時間はたった1日に過ぎない。
それでも、まるで数年振りの再会のように感極まってしまい、俺はルカの体躯を力強く抱きしめながら、嗚咽を漏らしてしまう。
「あー、ちょっと待ってねお2人さん」
「なんだ? また鞭打ちか?」
「いや、確かに魔力補充もしたいんだけど……追手が来てるわ」
「追手?」
ソリの荷台から身を乗り出して、地上の様子を確認する。
そこには、上空にいる俺達を追いかける騎馬が3騎。
「流石は巫女の近衛隊。優秀な人材ばかりで困っちゃうわ」
「振り切れるか?」
「んー。スピードはこっちの方が上だけど、地上に降りる時に減速しないといけないし、ソリから降りてゲートを潜る間に追いつかれちゃうかもしれないわ」
「くそ……」
向こうも死に物狂いだろう。
いきなり訳の分からん異世界人に、魔王封印の要である巫女を誘拐されたのだから。
こっちから「後で返却しますんで、今は見逃してください!」なんて言っても信じて貰えないだろう。
「ここはわたしが囮になるわ。だからルカちゃん、運転変わって頂戴な」
「ん」
ルカは荷台から御者台に移動する。
「ルナ、ここまでマジでサンキューな」
「ふふっ♪ いいのいいの♪ わたしも楽しかったから♪」
やり方はかなり強引であったが、ルナがいなければ、俺は一生ルカと再会することは叶わなかっただろう。
だから俺は、最後に1度だけチャンスをくれたルナに、誠意を込めて頭を下げた。
ルナはそれを軽く受け流すと、そのまま――
「んじゃ、後は若い2人でごゆっくり♪」
――と、ソリから飛び降り、数十メートル下方の地上へと落下していくのであった。
***
「むっ! ソリから誰か落ちてきたぞ!?」
「あれは巫女様か!?」
「全員止まれ! 是が非でも巫女様を受け止めるのだ!!」
――一方、地上では。
巫女の婚姻の儀式――この世界で交血の義と呼ばれる神聖なる儀式に乱入した、先代巫女ルナエルナと謎の異世界人により、今代巫女であるルカエルカが攫われた。
その報を聞き、神殿の警護にあたっていた近衛隊の騎兵部隊3人は、即座にルカを奪還すべく騎乗し、上空を飛ぶソリを目印に駿馬を駆けさせていたのだが……。
そんな折――ソリから1人の子供が落ちてくるのを発見する。
あの姿はどう見ても、彼らの奪還対象であるルカエルカであり、彼らは慌てて手綱を引いて馬を停めると、その内の1人が落下してくる子供を受け止めたのであった。
「ご無事ですか巫女様!?」
「ええ、あなたの逞しい腕に抱きとめられたおかげで、この通り無傷よ? それに、腕だけでなくて、胸板も逞しいのね?」
「あっ/// ちょっ/// そこを弄ってはなりませぬっ///」
横抱きで受け止められた子供は、腕の中で指を伸ばし彼の胸板――否――乳首をこねくりまわし始めた。
床上で鍛えあげた妙齢の女性がするような、巧みな指使いに、騎兵は思わずあられもない嬌声をあげてしまう。
「まて! このお方は本当に巫女様なのか!?」
「確かに怪しいぞ、もしや先代巫女のルナエルナ様の方ではないのか!?」
「ン。違ウヨ。ボク、ルカダヨ?」
「いや、この雄の乳首を撫でまわす老獪な閨技、子供らしからぬ凄絶な色気、紛れもなくルナエルナ様に間違いない!」
「くっ! バレてしまっては仕方がないわ! 煮るなり焼くなり好きにしなさい! ほら、鞭もあるわよ! これでお尻を思う存分叩きなさい!」
「い、いえ……先代巫女様にそのような狼藉、できるはずがありませぬ……ど、どうか落ち着いてくだされ……」
「いいや! これは命令よ! さぁ早く!」
ぐいぐいと、乗馬鞭を押し付けるルナに、たじたじと困り果てる騎馬隊。
その状況を作り出したルナは、内心でにやりとほくそ笑むのであった。
「(2人とも、これで十分に時間は稼いだわよ……)」
ルナの時間稼ぎのかいもあり、ルカと太陽を乗せたソリは、無事に転移ゲートへ到着したのであった。




