62 ノーマルに無理矢理S役をやらせるのが1番気持ちいいのよね
【前回のあらすじ】
異世界のゲートからやってきたのは、ルカの母親であるルナだった。
ルナの協力を得て、太陽はもう1度ルカと会うべく、異世界へと足を運ぶことになるのであった。
「うおおおおお!! 鳥にぶつかるわあああああ!! 空中ドリフトおおおおっ!!」
「ぐっ、ぐえええええぇぇぇぇぇ~~~~!?!?」
俺は現在――約50メートル上空を飛んでいた。
ルナの協力を得た俺は、ルカの真意を確かめるために再びトイレのゲートを開き、異世界へとやってきた。
そして、クリスマスの日に移動手段として使ったソリを再利用し、ルカの元へ駆けつけている次第である。
御者台に座って、サイコキネシス的な魔法で舵を取っているのはルナだ。
しかし彼女の運転はかなり荒く、道路交通法がないのをいいことに、急アクセル急ブレーキは当たり前。
空中で慣性ドリフトまで決める始末である。
なんでコーナーが存在しない空中飛行でドリフトする必要があるんだよ!?
と、ツッコミを入れたいが……。
胃袋に残留したアルコールと、三半規管がシェイクされたのが原因で、嘔吐に耐えるので精一杯であり、クレームを入れる余力がないのであった……。
「あ、ソリの中で吐かれると困るから、吐くなら地上に吐いてね?」
「いや、市街地に吐くのは不味いだろ……! とんだテロ行為だわ」
転移ゲートが設置された周辺は、まだ魔王軍との戦争の傷跡が、色濃く残る瓦礫の山だった。
それもソリでの高速飛行のかいもあり、既に眼下には、異世界ファンタジーアニメに描かれているような街並みが広がっていた。
異世界人が無許可で侵入した挙句、市街地にゲロぶちまけるような狼藉がバレでもしたら、五体満足で戻ってこれるか分からないので、必死に喉のえづきに耐える俺。
中世の倫理観だと、ちょっとした罪で死罪にされそうなイメージあるので……。
「あ……ちょっとまずいかも」
「ど、どうした!?」
日本の運転免許試験には絶対合格できないであろうドラテクにも馴れた頃。
ノリノリでソリを操縦するルナから、不安を煽るような呟きが漏れた。
冷静に周囲を見れば、ソリの速度はゆっくりになっており、高度も著しく低下していた。
あと10メートル程落ちれば、民家の煙突にソリの底が擦れそうな高さだ。
「ってルナ!? 体透けてるぞ!?」
「テンションあがって魔力の無駄遣いしちゃったわ、てへ♪」
いくら高度が落ちているとはいえ、まだ3階建ての建物並みの高さだ。
ここから墜落したら無傷では済まないだろう。
かといって飛行を続ければ、ルナは魔力切れになってしまう。
ルカと同じで、肉体が魔力でできているルナは、魔力を使い切ると肉体が透けて死んでしまう。
魔力切れだけは絶対に避けなければならない……!
「若い頃より魔力貯蔵量が減ってるのを忘れてたわ」
「ど、どうすんだこれ!? 墜落するぞ!?」
「ソリの荷台の部分に、鞭があるはずだから、ちょっと持ってきてくれるかしら?」
「え!? 鞭!? わ、分かった!」
そんなもの何に使うのか不明だが、俺は言われた通りにする。
御者台から身を乗り出して、荷台を漁って鞭を探す。
「(おっ、これだな!)」
ジョッキーが使っているような、先端が平らになっている短い革鞭を引っ張りだす。
「で、これをどうすればいいんだ!?」
「これでわたしの背中を叩いて頂戴!!」
「…………は?」
「早く! もう時間がないわ!!」
高度は更に落ちて、今にも民家の屋根に衝突する寸前になっていた。
サンタクロースのソリにシートベルトやエアバックがあるはずもなく、不時着できればいい方で、衝突の衝撃でソリから投げ出されたら、命はないだろう。
もはや理由を詳しく聞いている時間はない。
俺は乗馬鞭を振りかざすと、力を入れたら折れてしまいそうな、華奢な背中に振りかざした。
「ええい、ままよ!」
――ビターンッ!!
「お゛ッ❤❤」
――ぽわぽわぽわ。
するとどうしたことか。
ルナの肉体はキラキラと輝き、再び濃度を取り戻す。
ソリもまた〝ぐんっ〟と、安全圏まで高度を上げた。
「ハァハァ……もう1回! もう1回叩いて頂戴! 次はもっと強く!」
俺は言われた通りに、もう1度鞭を叩きつける。
「ん゛ッお゛ッッ❤❤❤❤」
――ぽわぽわぽわぽわぽわ!
「おい!? 大丈夫なのかソレ!?」
「ハァハァ……だ、大丈夫よ! 次は『このブサイクなメス豚が!』って言いながら叩いてくれないかしら? わたし、自分の顔に自信があるからこそ、ブサイクって言われるとめちゃくちゃ興奮してしまうのよね」
「既に大丈夫じゃないことだけは分かった」
あ……そういう……感じなんですね……。
巫女の血族は幸福を感じることで魔力を蓄積することが出来る。
鞭で叩かれて汚ったねぇおほ声漏らしながら〝ぽわぽわ〟を纏っているのを考えるに――コイツ、筋金入りのドMである。
「ちょっと! 手が止まってるわよ!」
「くそぉ……こんな汚い〝ぽわぽわ〟見たくなかった……」
――バシンッ!
「お゛ッ゛ほ゛ッ゛❤❤❤❤」
「あの、ルカの顔でこんな汚い声出さないでもらえますか……?」
――ぽわぽわぽわぽわぽわ。
「あとめちゃくちゃ光るのもやめて貰っていいですかね……?」
「敬語は使わない約束でしょ!? あとちゃんと罵倒しながら叩きなさい!」
「くそがあああああ!! このブサイクなメス豚がああああ!!!!」
「おほおおおおおっっっっ❤❤❤❤」
その後俺は言われるがまま、腕の筋肉がパンパンになるまでルナの背中を叩き続けた。
10回を超えたあたりから涙が出てきた。
俺にとってはかなりのハードプレイに分類されるケツ舐めプレイも、ルナにとっては軽い準備運動程度のソフトプレイなのかもしれない。
会った事ないけど、ルナの旦那に同情してしまう。
巫女の婿として政略結婚させられた挙句、毎晩ベッドの上でこんな激しいSMプレイさせているんだと思うと、気の毒過ぎる……。
SMのSはサービスのSと言われているが、これマジだね。
一見するとSの方が支配者側に見えるけど、蓋を開けてみれば、ひたすらM側に奉仕し続けるSの気苦労は相当なものだろうな。
こりゃSMクラブの需要が尽きない訳だよ……。
俺は先代巫女を鞭打ちにした罰で、この世界の神官に罰せられるのではないかという恐怖に駆られながら、汗ダクになりながらロリババアを叩き続けたのであった。
自動回復魔法によって、叩いたそばから肉体が修復されていくのが唯一の救いだった。




