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異世界からやってきた褐色銀髪美少女のお世話をすることになったけど、よく見たらちんちんがついているんだが返品不可とのことで後悔してももう遅い  作者: なすび
2本目っ!

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59 ランダム商法でも超えちゃいけない一線はある

【前回のあらすじ】

元旦に初詣にいく太陽とルカ。

帰宅後は大家さんのお節を食べることになっており、この世界の正月の文化をルカに経験させるのであった。

 俺は数年前に一人暮らしを始めてからというもの、お節を1度も食べていない。

 わざわざ作るにしては手間がかかり過ぎるし、かといって出来合いの物を買うにしては高すぎる。


 そもそもThe・〝純〟和風って感じの味付け、そんなに好きじゃないんだよなー。

 なので、いつも俺に料理のリクエストをしてくる夕陽ゆうひにも、お節を作って貰ったことはない。

 作ろうと思えば卵から伊達巻きを作ってくれるほどのスキルはあるんだろうけども。


 そんな訳で、今年もお節はいらないと思っていたのだが……。

 ひょんなことから大家さんからお節を重箱ごと頂戴したので、ルカに日本の正月料理を振舞う機会を得ることが出来たのだった。


「ん。宇佐美ラビィの、カード」


「おお。当たりなんじゃね? 知らんけど」


 ルカはお節に付属しているポストカードを手に取った。

 そこには大家さんが演じているVtuber、宇佐美ラビィのイラストが描かれている。


 そう、これは大家さんが所属する大手Vtuber事務所が販売している、オリジナルお節なのである。

 お節という割には、ローストビーフやら唐揚げやらスモークサーモンやらと――令和ライズされ過ぎているのが気になるが、まあVの視聴者層的にも、ガチお節よりもなんちゃってお節の方が喜ばれるのであろう。


 ちなみにお値段はウチの家賃1ヶ月分です。

 高すぎる!!


 とはいえ、所属ライバーの振袖姿が描かれた限定描き下ろしポストカードがついてくるので、ファンはこぞって買うのだとか。

 大家さんの所にも、サンプルとして商品が送られてきたが、「ウチには婆ちゃんが作ったお節があっから」と言われ、初詣の際にレンタルした振袖と一緒に、半ば押し付けられるように頂戴した次第であった。


「(まぁ、実質家賃1ヶ月免除みたいなもんだから、ありがたく貰うけど)」


 ちなみにおまけのポストカードは、購入者は選ぶことが出来ず、まさかのランダム商法である。

 許されるのかよ……こんなアコギな商売がよ……!!



***


 ――数時間後。


「ほら、剥けたぞ」


「ん。あーん」


 初詣を済ませ、お節も食べて、新年1日目として完璧な1日を送り――現在夜の9時。

 ほんのりと漂う微睡まどろみの心地よさに浸りながら、明日から始まる労働への英気を養っていた。


 俺はルカを膝に乗せながらコタツの中に入り、ルカのためにせっせとミカンを剥いていた。

 コタツと言えばミカンだからな。


 ちなみにミカンも大家さんから貰った。

 これもう実質第2の実家みたいなもんだろ……。


「ん。たいようも、あーん」


「おう、あーん」


 丁寧に筋を取り、皮も剥いで、剥き出しになった果肉を、二人羽織の要領でルカの口に放り込む。

 するとルカも、筋も皮も向いてないミカンをお返しに、俺の口にねじ込んできた。

 なんという不平等条約。


 今年も我が家のプリンセスの暴君振りに、家臣として涙が止まらないぜ……。


「ふわああああ~~。そろそろ寝るか?」


「ん。もうちょっとだけ、起きてても、いい?」


「あ~? まぁ、正月だしな」


「ん」


 ミカンも食べ終わり、心地のいい無言の時間をのんびりと過ごしていると、ルカが珍しく夜更かしの提案をしてきた。

 俺もルカも、バチくそに朝型人間である。


 大晦日でさえ定時通りに床についたくらいに夜に弱い。

 高校生の時は朝5時に起きて、バイト先のスーパーマーケットで開店前の品出し業務をこなし、8時に退勤してその足で学校に登校する生活を送っていたくらいだ。


 ルカもまた眠そうに目をしょぼつかせているのに、まるで時間を惜しむように、寝る事を拒んだ。

 まあ、そんな日もあるだろうと、俺はルカの提案を受け入れたのだった。


 確かに、睡魔に抗いながらコタツでぼんやりするのは気持ちいいからな。


「スマホは使わないのか?」


「ん。使わない」


 いつも俺の体をリクライニングチェア替わりにしながら、スマホで齧りつくようにYouTubeを見ているルカだが……今日はその限りではなかった。

 その代わり――くるりと反転して俺と向かい合うと、俺の背中に腕を回し、へそに耳を付けるように抱き着いてきた。



挿絵(By みてみん)



 俺は左手を畳について、胴が45度くらいになるように体を支えながら、右手でルカの背中に広がる銀髪を、梳くように撫でてやる。


「どうした? 今日はいつもより甘えん坊だな」


「ん」


 …………あ。


 思い出した。


 そういえば、明日はルカが一旦異世界に戻る日だった。

 巫女としての仕事があるとかなんとか。

 年末にマルガレーテがやってきて、そんなことを言っていたのを思い出す。


「(なるほどな)」


 半日程離れ離れになるのが惜しくて、いつもよりベタベタしてきているのか。


「ん。たいよう、お腹、ゴロゴロ、鳴ってる」


「そうだな。ゴロゴロ鳴ってるな」


 ルカはここ最近、更に異世界を行き来する頻度が多くなった。

 戦時では魔王を封印する重大な使命の持つ巫女だが、平時では平時で、巫女の仕事が沢山あるらしい。

 俺には詳しく教えてくれないが、いつも異世界から帰還すると、ぐったりとしているので、小学生くらいの肉体のルカからすれば、結構なハードスケジュールなんだろうな。


 そして、ルカが異世界へ行く前日と、戻ってきた直後は、こんな風に、ベタベタとしがみついてくるのだ。

 それだけ、俺と離れるのを惜しんでくれているのだと思うと、多少の重さは許してしまう。

 こうして俺と抱き着いているだけで、その疲れが癒されるのであれば、抱き枕冥利に尽きるというものだ。


 ルカは巫女として崇められ、贅沢三昧な暮らしをしていると思うのだが、やはりこの幼い体で、重役を務めるのは疲れてしまうのだろう。

 日本の皇族のニュースとか映像とか見ると、「生まれてから死ぬまで、国民の象徴としてあり続けるのも大変そうだな……」と、庶民視点で見ても気の毒に思ったりするので。


 似たようなものだと思えば――俺という止まり木が、ルカという小鳥の羽を休めるための、一時の安らぎになるのであれば、これほど光栄なこともない。


「ん。眠い……」


「じゃあ、もう寝るか?」


「でも……寝たくない」


「じゃあ、もう少し、こうしてるか?」


「…………ん」


 下半身をコタツに沈めながら、俺はルカが寝落ちするまで、赤子を寝かしつける要領で、一定のペースで髪を梳き続けるのであった。

 しばらくすると寝息が聞こえてきて、俺の呼びかけにも反応しなくなる。


 俺は起こさないようにルカの脇と膝裏に腕を差し込み、お姫様だっこで布団まで運び、ルカが冷えないように、抱き締めながら目を閉ざした。


 おやすみ、ルカ。

 今年もよろしくな。



***



 ――翌日。


「うー、さみぃ……あれ? ルカ、どこだ……?」


 1月2日。

 仕事始めの早朝。


 3分後に鳴るアラームを止めるべく腕を伸ばすと、布団との間にできた隙間から寒気が流れ込んでくる。

 一瞬で体温を奪われた右腕を布団にひっこめ、30キロ級の抱き枕で暖を取ろうと思ったが――いくら布団の中で手足を伸ばしても、ルカが見当たらない。


「ルカ?」


 異変に気付き――布団の中に蓄えた暖気も惜しまずに、布団をめくり上げる。

 しかし……やっぱりルカはどこにもいない。


「トイレか?」


 俺より早く起きるなんて、珍しいこともあるもんだ。

 布団を畳み、部屋の隅に寄せ、ルカの姿を探す。


「ルカ~、朝飯はお節の残りでいいか? 餅も焼くけど、何個食う?」


 寝癖のついた前髪を掻きあげ、スウェットの中に腕をつっこみ、ケツを掻きながらトイレに向かって声を張り上げる。


 ……。


 …………。


 ………………しかし、おかしなことに返事がない。


「あいつ、トイレで二度寝してんのか?」


 欠伸を嚙みしめながら、トイレを開ける。

 半畳しかないトイレには、太ももを乗せるのが憚られる冷えた便器が鎮座するばかりで、ルカの姿はどこにもない。


「ルカ?」


 ワンルームアパートの我が家に、他に隠れられる場所はない。

 考えられる可能性は……。


「まさか、もう向こうの世界に行ったのか? だったら一声かけてくれてもいいだろうに……!」


 しかし、なんだか嫌な予感がするのは、真冬の冷気だけが理由ではないだろう。

 俺の意識は急速に覚醒し、せわしなく畳の上を歩きまわる。


 やがて――コタツテーブルの上に、1枚の便箋が置いてあるのを発見する。

 昨晩には確実になかったはずだ。

 食べ終えたミカンの皮を捨てるついでに、テーブルの上を掃除したのだから間違いない。


「(たしか以前にも――こんなことがあったよな)」


 などと、不穏な予想をしながら、俺は生唾を飲み込んでから、それを開いた。



【たいようへ】



 1番上に、そう書かれていた。

 拙いながらも、1文字1文字丁寧に綴ったであろう、日本語で書かれた文字が並んでいる。


 それは、

 ルカが書いた、

 俺へ宛てた手紙だった。




【まず、最初にたいようにあやまらないといけません。


 ぼくはもう、たいようと会うことができません。


 もともと、異世界の間をいききするのは、よくないこととされていました。


 魔王の封印と、ふっこうのために、特例中の特例で、お母さんやマルガレーテがかくしょに説得をして、たいようといっしょにいられる時間を、1日でも長くできるようにじんりょくしてくれたのです。


 けれど、もう十分にふっこうも進み、お母さんがつないだ異世界へのゲートを、閉ざすこととなりました。


 そして、ぼくは次の巫女を作るため、ケッコンすることになりました。


 なので、もうたいようと会うことはできません。



 あいさつもせずにお別れになってしまい、ごめんなさい。


 でも、たいようにそのことを言ったら、ぼくは泣いちゃうとおもったので、言えませんでした。


 たいように最後に見せるのが、悲しい顔になってしまうのが、いやだったからです。


 本当にごめんなさい。


 たいようといっしょにすごした時間は、毎日がとても幸せでした。


 たいようは優しくて、ぼくは沢山ワガママを言って、たいようを困らせてしまいました。


 本当はよくないと思っていたのに、たいようといっしょにいると、つい甘えてしまいました。


 でも、きっとたいようは許してくれるとおもいます。


 短い間でしたが、たいようとすごしたおもいでを、ぼくは一生忘れません。


 だから、たいようもぼくのことを忘れないでいてくれるとうれしいです。



 さいごに



 だいすきだよ




 たいよう】




 鉛筆で書かれたその文字は、何度も書き直したのか、消しゴムで消した痕が各所に残っていて、拙いながらも、ルカの思いがひしひしと伝わってくる内容だった。


 でも――その思いは――悲痛の思いだと、俺は感じた。



「だからよ……そういう大切なことはよ……前もって言えよな……」


 思わず指に力が籠ってしまい、手紙を握り潰しそうになったが、ギリギリで正気に戻り、ゆっくりと手紙を折りたたんだ。


 こうして、

 俺とルカの生活は、

 なんの前触れもなく、

 なんともあっけない形で、

 幕を下ろした。


「……マジかよ」


 フラフラした足取りでトイレへ向かう。

 やはりそこには便器しかなく、そしてこの便器はもう2度と、異世界と繋がることはない。


 こんな時でも尿意は襲ってくることに苛立ちを覚えながら、俺はスウェットとパンツを下ろし、排泄物を処理することしかできなくなった便座に腰を下ろした。


 ひんやりとした感触が――俺から熱を奪っていった。


 心の熱さえも。


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