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異世界からやってきた褐色銀髪美少女のお世話をすることになったけど、よく見たらちんちんがついているんだが返品不可とのことで後悔してももう遅い  作者: なすび
2本目っ!

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51 同居人はサンタクロース

【前回のあらすじ】

クリスマスプレゼントに欲しいものを尋ねられたルカは、「クッキーを作るための材料が欲しい」と太陽に訴えるのであった。

「お迎えにあがりました、巫女様」


「ん」


 大家さんの家でクッキーを焼いた日の夜。

 全国のサンタクロース(親御さん)がアップを始める12月24日の夜。


 異世界からやってきたマルガレーテは、トイレの便器を背にしてやうやうしく片膝をついて、綺麗なうなじをルカに晒していた。


「んで。この大量のクッキーはどうするんだ?」


 ルカの足元には、サンタクロースが背負っているような白い袋が、パンパンに膨らんだ状態で置かれている。

 ほんのりとバターの香りが漂っている。


 中に詰め込まれているのは、紙袋に小分けに梱包した大量のクッキー達。

 レシピ通りに作ったおかげで、これといって失敗することなく量産することに成功した。


 しかし――これだけの量を俺達3人で消費するには、いささか多すぎる。

 近所の知り合いに配るにしたって、結構な余りが出るだろう。

 それくらいの量だ。


「ん。向こうの世界の、子供達に、配る」


「向こうっていうと、ルカの世界か?」


「ん」


 マルガレーテの背後にある、転移ゲートを展開したままの便器に目線をやると、ルカは肯定の〝ん〟を返してきた。


「やっぱ、怒ってる? たいようのお金なのに……たいようの見ず知らずの人に、配るの、ダメだった?」


「言っただろ。好きなもん買ってやるって。怒る訳ないだろ」


「……ん」


 泣きそうになっているルカの頭をそっと撫でてやる。

 するとルカは、不安が消えたのか、その顔に笑顔を灯した。


 ルカの世界は復興が進んでいるものの、未だ苦難の最中にいる民が大勢いる。

 そこでルカは、子供達を幸せにするサンタクロースの思想に惹かれ、クリスマス文化を持ち帰って、子供達を笑顔にしたい――とのことだった。


 まだクリスマスプレゼントを貰う側の年齢なのに――まさか自分が与える側になるとは、ルカの慈愛の精神も大したものである。


「ん。それじゃあ、たいようも、来て」



 ……。


 …………。


 ………………は?



「お、俺も行くのか?」


 ルカは小さな両手で、俺の右手を取る。


「たいようにも、見て欲しい。ぼくの世界を。たいようのお陰で守られた、世界を」


「お、おお……なんか、緊張してきたな……」


「ん。いいよね、マルガレーテ」


「はぁ……仕方ないですね。見なかったことに致します」


 かくして――予想外なことに。

 俺は今日初めて、便器を潜り、ルカの世界を訪問することになるのであった。



***



 アニメや小説で散々見て、そして憧れた異世界転移。

 その当事者となった俺の最初の感想は――


「さ、さみぃ……」


 ――今すぐ帰ってコタツの中に潜り込みたい、だった。


 便器の向こう側。

 そこは荒れ果てた荒野だった。

 いや――日が沈んで見えづらいだけで、よく見れば、崩壊した街のように見える。


 荒野にそびえる岩だと思ったものは、崩れた建物の残骸だった。

 デコボコした足元には、崩れたレンガや建物の残骸が散らばっており、クレーターのように抉れた箇所もある。


 先の魔王軍との戦争の爪痕なのだろう。

 上を見れば、厚い雲が夜空を覆っており、雪が降っていた。


「こっちはホワイトクリスマスか」


 寒さも手伝ってか、見ていて胸が痛くなる場所だ。

 けれどそれは、余所者の俺よりも、この世界に生まれて、育って、住処を失ったこの街に住んでいた人の方が、よっぽど辛い思いをしているのだろう。


 戦争のない時代に生まれた俺でも、想像に難くない。


「ん。ここが、ぼくの世界。全部壊れちゃった。でも、ちょっとずつ、直ってきてる。それは、ぼくに〝ぽわぽわ〟をくれる、たいようのおかげでも、ある」


「その通りだ太陽殿。本来であれば向こうの世界の者を、こちら側へ連れてきてはいけない掟なのだが、この時間ならそれを咎める者もおらぬ。どうか、巫女様と共に、貴殿が救ったこの世界の一部を見ていって欲しい」


「はは、そう言われると、なんだか照れくさいな……」


 俺はただ、親戚のガキを預かるような軽い気持ちでルカと過ごしていただけだ。

 世界を救うなどという崇高な意識など持っていないので、改めて言われると、なんというかむず痒い。


「ん。マルガレーテ、頼んでおいたモノは、できた?」


「はは。抜かりなく」


 夜目が慣れてきた頃。

 マルガレーテは、2センチ程積もった雪を踏みしめながら、俺達を誘導する。


 転移ゲートから少し離れた場所にあったのは、大きなそりだった。

 まさしく、サンタクロースが乗っているような。


「して、こちらがサンタクロースなるものの装束にございます」


「ん」


 続いてマルガレーテは、折りたたまれた赤い布を差しだした。

 広げてみると、それは紛れもなく、サンタクロースの衣装だった。


 ルカはそれを頭の上から被る。

 するとどうしたことか、可愛らしいサンタクロースが出現したではないか。


挿絵(By みてみん)



「ん。サイズも、ぴったし」


「勿論でございます! わたくしめが、巫女様の3サイズを忘れるはずがございませぬ!」


「ん。たいようの分も、ある」


「え? 俺も着るの?」


「ん。たいようも、サンタクロースだから」


 俺もまた、マルガレーテから衣装を受け取る。

 デザインこそドンキの売っているようなコテコテのサンタ衣装だが、生地は厚いし防寒具としてしっかり作用している。


 これは……ビロード生地ってやつか?

 化学繊維で編まれた安服ばかり着ている俺の肌を、滑らかな上布が優しく撫でる。


 その肌触りだけで気持ちがいい。

 これ持ち帰ってパジャマとして使いたいんだけど。


「んしょ、っと」


 ソシャゲのクリスマス限定キャラみたいな、ポンチョ型のサンタ衣装を纏ったルカは、件のソリにクッキーを詰め込んだ袋を乗せた。


「なるほど。これで市街地まで行くんだな。でも、トナカイがいないぞ?」


「ん。マルガレーテ」


「はっ! 申し訳ございませぬ! 不肖マルガレーテ、ソリを引くトナカイを手配するのを失念しておりました! しかし! ご心配には及びませぬ!!」


 するとマルガレーテは、スチャっと――トナカイの角のような形のしたカチューシャを取り出し、それを自身の頭部に装着。

 そのまま地面に膝をつき、四つん這いの体勢になる。


「その責任を取るべく、わたくしめがトナカイの代わりを務めさせて頂きます! ハァハァ! さぁ巫女様! ワタシの背に! 遠慮なさらず! ハァハァ!!」


 息を荒げるマルガレーテ。

 いや絶対ワザとじゃん。


 ルカを背中に乗せたい故に、ワザとトナカイ用意するの忘れてただろ。


「ん。サンタさんが乗るのはトナカイではなく、ソリ」


「確かに!!」


 ルカはドM騎士の戯れを華麗にスルーし、ソリに乗り込む。

 俺も続いて乗り込むと――


「ん。◆◆◆◆◆」


「うおっ!? なんだこれ!? 浮いてないか!?」


 ――ふわっ。


 どうしたことか。

 俺達を乗せたソリは重力に逆らうように、ゆっくりと中へ浮かび始めた。


 どうやらサイコキネシス的な魔法を使ってソリを浮かせているようだ。

 先月も、体が入れ替わった時にスズキエブリイを動かしていたので、この程度の重量を動かすのはお手の物なのだろう。


 そのままソリはサンタクロースの伝承通りに、空高く飛び出した!


「おい、マルガレーテ置いてってるぞ!?」


「ん。ソリと衣装を用意して貰ったら、もう用済み」


「相変わらずマルガレーテの扱いだけ雑だな!?」


「お、おまちくだされえええええ!! わたくしめもお供いたしますぞおおおおおお!!!!」


 しかし――マルガレーテは地上から助走をつけて跳躍。

 プレートメイルを着たまま10メートル程ジャンプすると――ギリギリの所でソリの足を掴み、宙ぶらりんになりながらも同行したのだった。



 かつて東ローマで発祥し、脈々と引き継がれていった高潔な志は、現代では全世界に普及している。

 そして今日――サンタクロースは遂に、異世界にまで進出することになるのであった。



 という訳で――今回はここまで!

 次回サンタクロース編完結!

 小さなサンタの頑張りを最後まで見届けよう!


今回のおまけAIイラストは、クリスマスプレゼントを配りにいくルカ達です(絶妙に季節感を外している……あと1ヶ月早ければ……)

挿絵(By みてみん)

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