第十五話
家に着くなり母さんに駆け寄った。
「母さんただいま!あれどうゆう事?」
「あら早かったわね、メールの件かしら?」
俺はそうそうと頷いた。
「叔父さんが車を購入したのが十二月二十三日だったの」
「へっ?」
それだけであの答えに辿り着いた?わけないよね?
「なにその顔?順を追って説明するわよ。まず夢の中の話し千鶴ちゃん冬物の制服に赤いスカーフ付けていたのよね?」
「うん⋯⋯」
「てことは来年の四月までを意味してると思うんだけどどうかな?」
「確かに三年からは青のスカーフだ」
「次に月明かりって言ったと思うけどそれは時間を限定できない?」
「夜って事?」
「そう!その二つと今回初めて車に現れた千尋ちゃんをメッセージと考えた時に日時が隠されてるんじゃないかと思ったのよ、それで叔父さんに購入時期や車の製造日、次の車検日とか数字に纏わる全ての事を聞いたら最後に購入日だけが残ったって事」
「それで十二月二十三日か⋯⋯」
「確実では無いけど今考え得る事で導き出された答えがそれってだけよ。分かったからって千鶴ちゃんを監禁できるわけじゃないしね。強引に動けば変に勘ぐられたりするからね」
「でもできる限りの事はするよ」
「わかったは、私もできる限りの事はするから」
話が終わったので自分の部屋に戻る事にした。
今できることをやろう、まずは二十三日を一緒にいること、次に事故や災難に遭わない場所に避難する事これが絶対だ。
次の日から二十三日をなんとかやり過ごせるように色々提案した。
だがなんだろこの得体の知れない力に引き離される感覚は?無理矢理引き裂こうとしても千鶴の予定はもとに戻る。
この強制力に抗いなんとかしようと八方手を尽くしたのだが時間だけが無情にも過ぎていった。
十二月二十三日
「咲也あんたは良くやったと思うよ、仕事行くけどどうするの?」
「病院行く」
「わかったは、携帯出られるようにしとくから何かあったらすぐかけてきなさい」
「ありがとう」
結局なにもできなかった、何か起こるとすれば夜だけど不安に押し潰され俺は学校にも行かず病院に行くことにした。
十二月も終わりに近付き、ピンと張り詰めた冷たい空気が今日という日の緊張感をより一層高めていく。
病院に着いたのは十時頃だったと思う。夜まではかなり時間があるのになにかできないかと最後の抵抗をしてるつもりだった。
うろうろするのも怪しまれるかもしれないと思い待合室に入ったのだが、そこに掛けてある時計を見る度に気が気じゃなくなる。
できれば何も起きないで欲しいこのまま時間が過ぎて欲しいとゆう願いは届く事はなかった。
夜十九時を過ぎた頃から外が慌ただしくなってきた。人の出入りが激しくなりただ事じゃない何かが起こったのがわかる。
恐る恐る待合室を出た。病院の前に一台の救急車が止まり後部から知った顔の人が降りてきた。千鶴のお父さんとお母さんだ。
勇気を振り絞り足を一歩踏み出そうとしたがその一歩が踏み出せない、気付くと担架に乗せられた千鶴が出てきた。
そのまま院内に入ってくる。千鶴に声をかけ続けるお父さんとお母さん、呼び掛けと言うより叫び声に近い。
覚悟はしていたつもりだが体が硬直して動かない、担架に乗った千鶴が近付いてくる。
「ち、千鶴」
俺の声が病院内全ての時を止めてしまうくらいに響いていく。それに気付いたのか千鶴のお母さんが駆け寄ってきた。
「さ、咲也君」
泣き崩れそのまま座り込んでしまった。ただ事じゃない何かが起こった事は理解できた。千鶴を乗せた担架はそのまま俺の前を横切り手術室へと入っていった。
何もできない、助けられない、自分の無力さ不甲斐なさに形容し難い怒りが込み上げてきた。なにしんてんの俺?バカじゃないの?なにが命かけるだよ。
覚悟なんて嘘か?できもしねぇことでカッコつけんなよ、諦めるか?そんなことできるわけない?今戦ってるのは千鶴だろ?
そんな葛藤の中、なんとか冷静さを取り戻し現状把握をしようと千鶴のお母さんに話しかけた。
「千鶴に何があったんですか?」
「じ、事故に巻き込まれたの」
「容体は?」
「わからない⋯⋯」
実の娘のあんな姿を見たら冷静でいられるわけなんてない、俺なんて担架に乗せられている千鶴を見ただけで取り乱してしまったのだから、でも今はできることをやろうと心に決めて、千鶴のお母さんを手術室前の長椅子に座らせその隣に座った。
手術が始まってから一時間は経過しただろうか?手術室から医師が出てきて千鶴のお父さんお母さんを別室へと連れて行った。
気になるが待つ事しかできない⋯⋯