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第十四話


 家に着くなり母さんがリビングのテーブルで押し黙ったまま突っ伏している。

 なんか声かけにくいなぁ⋯⋯


 「あ、咲也、今叔父さんに確認したい事メールしたから返事待ちなの。焦る気持ちは分かるけどあなたにはやるべき事があるんじゃない?」

 「え?」


 唐突に喋りだしたかと思うとやるべき事?俺が今千鶴を助ける以外にやるべき事ってなに?


 「そんな調子でこれから千鶴ちゃんに接して行ったら流石にまずいって事よ。それに千鶴ちゃんと少しでも一緒にいたいと思わない?」

 「思います」


 俺はそう伝えて、足早に自分の部屋へ戻り千鶴へ電話をした。


 「もっし〜咲也どしたの?」

 「あ、いや、千鶴何してるのかなと思って」

 「お家でまったりしてたよ~」

 「行っていい?」


 いやいやいや、俺いきなり変過ぎでしょ?いきなり行っていいとか生まれて初めて言ったんだけど⋯⋯

 

 「咲也から誘われるの初めて過ぎてドキドキしちゃうんだけど♡全然大丈夫ぅ〜早く来てね♡」


 「うん待ってて」


 自分で言っといてドキドキしたんですけど、高鳴る鼓動を一旦鎮めて千鶴の家に向かった。


 『ピンポーンッ』


 ダッダッダッダッ『ガチャ』

 

 「咲也やっほ〜入って入って」

 「お邪魔しまぁ〜す」


 部屋に案内され失礼だとは思ったが、辺りをキョロキョロと見回した、黒を基調とした統一感のある部屋に家具家電は濃いめのブラウンを使っている。


 イメージとは違ったがこれはこれでオシャレだと思い千鶴を見た、頬を少し赤く染めこちらを見ている。

 

 「なに見てんだよ〜」

 「いや、女の子の部屋初めてで⋯⋯」

 「そうなの?えへへっなんか嬉しい♡」

 「なにが?」

 「咲也の初めていただきました♡」

 「くっっ⋯⋯言い方な」


 事あるごとに可愛い、色々考えていた事が全部吹っ飛んだ気がした。

 いや俺しっかりしろと戒め目の前のソファーを避けて、テーブルの前に胡座をかいた。


 テクッテクッテクッ チョコンッ


 「おいっ、お約束か?」

 「えへっ♡」


 胡座の上に座った千鶴の両脇を掴み持ち上げ俺の横に座らせる。


 「キャッ♡」

 「絶対にわざとやってるよな?」

 「ん〜っ?どうでしょう?」


 千鶴は満面の笑みで俺の肩に頭を預け体を寄せてきた。

 楽しんでるな?でもいつも通りの平常運転でめちゃくちゃ助かると胸を撫で下ろした。

 恥ずかしいけどなんか落ち着くんだよなぁとテーブルに頬杖を付いて千鶴を見た。

 

 「なぁに?私の顔に何か付いてる?」

 「いんや」

 「キスする?」

 「うぉぉぉぉぉぉぉいッ」


 なん何だこいつは?なんでそんな事が言える?ものには順序ってものがあるだろ?

 千鶴から露骨に目を逸らしテレビを見ようと目の前のリモコンに手を伸ばした。


 「えぇ〜テレビ見るの?構ってよ~」

 「え?付けるだけもだめなん?」

 

 ムスッと膨れ顔で俺を見る千鶴が可愛く見えてしまうのは病気なんだろうか?

 ま、見たいテレビがあるわけじゃないしいいかと千鶴を見返した。


 「なんかさぁ、こうゆうお家でまったりっていいよねぇ♡」

 「そうか?俺はまったりしてないぞ」

 

 「と言うと?」

 「部屋に来てからずっとドキドキさせられてるしな」

 

 「ふ〜ん♡」


 千鶴にその気が無くてもこっちは色々初めてなんだから仕方ないだろ、俺をいじるのも大概にせいッと喉から出かかったのを飲み込んだ。

 

 そもそも千鶴は俺の事どう思っているのだろうか、やっぱり前と一緒で兄的存在のままなのだろうか?と気になり心の声が漏れてしまった。


 「千鶴って気になる人とかいるの?」

 「もちろん♡咲也は?」

 

 攻守交代された⋯⋯


 「俺もいるよ⋯⋯」

 「え〜どんな人?好きなの?」

 「す、好きだよ!」

 「誰だよ〜教えろよ〜?告らないの?」


 え?本人目の前にして言えるわけ無いし、怒涛の質問攻めに度肝を抜かれたが、平静を装いゆっくり静かに話を続けた。


 「こ、告るよ」

 「ま?いついつ♡」


 なんで千鶴がテンション上げるの?え?俺バレてる?その時ポケットに入ってる携帯が鳴った。

 携帯を出し画面を見ると、母さんからメールが届いていた。


 【咲也、もし本当に夢が現実に起こるなら十二月二十三日よ確定では無いにしろかなり濃厚な線だと思う。根拠もある程度揃っています。母より】


 「十二月二十三日〜!?来月?すぐじゃん」

 「いきなり声デカッ!なんでその日に告るの?」

 「あッ⋯⋯」

 

 ヤバッびっくりして声が出ちゃった。うまく誤魔化さないと。


 「いや、これは違くて、二十三日千鶴何してるかなぁって?」


 全然うまく誤魔化せてない、むしろこれじゃ俺がその日に告る流れになってないかと思い少し狼狽えてしまう。

 

 「その日はパパとママと出かける約束あるんだ〜二十四と二十五が仕事らしくて」

 「そこをなんとかできん?」

 「咲也必死過ぎ〜いちおう聞いてみるけどだめだったら二十四日とかはだめ?私クビにリボン巻いとくからさ⋯⋯」


 必死にもなるよ、てか耳まで真っ赤にしてなに言ってんの?流石にこれは押し切れる気がしない。


 作戦練って出直すか?そうしないとこの流れはヤバイ気がする。とりあえず色々誤魔化そう。


 「二十四日かぁ〜でも俺自信無いんだよなぁ⋯⋯相手の気持ちとか全くわからんし、もう少ししっかり考えてみるよ」

 「ん〜〜ん〜〜♡」


 瞳を少し潤ませ耳まで真っ赤にした千鶴が俺の袖を掴み引っ張りだした。


 なにこれ?俺うまく誤魔化せなかった?もうプチパニックなんだが⋯⋯


 「ち、千鶴今日は時間もあれだし、ほら両親も帰ってくるだろ?一先ず俺帰るよ」

 「ブゥ〜〜♡」


 耳まで真っ赤にした顔で千鶴が睨んできた。


 「ま、また明日話そうな!明日な!」

 「ふんっわかったし」


 そう言われ俺は千鶴の家をあとにする。

うまく誤魔化せたかな?その辺りは全く自信ないが、母さんがくれたメールが気になり過ぎる、早く帰って話を聞こう。


 俺は早足で家に帰った。

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