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第十三話


 「ちょっと、あんた顔真っ青だけど何かあったの?」

 

 そりゃ真っ青にもなるかあんな夢を見て今現在も不安に駆られているのだから、こりゃ誤魔化すだけ無駄かもと思い事のあらましを説明した。


 「咲也その夢が現実になる根拠みたいなのってあるの?」

 「うん、説明が難しいんだけど、夢と気付いた時にこれ現実に起こるやつだって感じる」


 母さんは神妙な面持ちで咲也聞いて頂戴と話しを続けた。


 「私の記憶が確かなら咲也のそれは事故に遭った直後から見るようになった夢なのよ⋯⋯千尋ちゃんの腎臓が見せている記憶かと思っていたのだけど少し違うようね」


 「腎臓の記憶?」


 「そう、記憶の転移って言うらしいんだけどね、臓器移植によって記憶の一部や性格とか趣味などが移ってしまう現象らしいの」


 顔を顰めてしまった。

 確かに漫画や小説の世界では耳にした事あるが現実世界でもありえるのか?例えば俺が体験した事が記憶の転移だったとしたら⋯⋯


 「咲也がそんな顔する気持ちもわかる、私も今は記憶の転移は無いと思っているからね、だって千鶴ちゃんが死んでたんでしょ?記憶の転移なら辻褄が合わないのよ、それに必ず夢に出てくる女の子千尋ちゃんなのよね?」


 「たぶん、最初は千鶴の面影があったから千鶴かと思ったけど、でもそれだって千鶴が転校してきたから思っただけで⋯⋯」


 千尋ちゃんだとわかる確たる証拠や何かがあったわけではなかった。


 「う〜ん?もう一つ確認したい事があるのよ」

 「うん⋯⋯なに?」


 「夏休みお祓いに行ったでしょ?咲也は色々言い当ててたけど、その夢には小さな女の子出てこなかったの?」

 「出てこなかったけど、車には取り憑いていたよ⋯⋯」

 

 母さんに言われてハッとした、確かにその夢だけは直接小さな女の子と会っていなかったからだ。

 なんで出てこなかった?俺が忘れてしまっただけなのか?


 「明日神社に行ってみようか何かわかるかもしれないし」

 「うん⋯⋯ありがとう母さん」


 そう言うと母さんは今までの微笑顔を引き攣らせ少し険しい顔付きで俺を見た。


 「確認したい事が二つあるの」

 「なに?」

 「少し残酷な話になるけど、夢で見た事が現実に起こるとして、今話している事もこれからの行動も全て織り込み済みの結果だとするとどうやっても千鶴ちゃん死んじゃうけど咲也耐えられるの?」


 「そ、そんな事は、そんな事には絶対にさせない!」

 

 母さんの言った事への答えにはなっていないのは分かってはいるけど、実際に千鶴が死んだらなんて考えたくも無い。


 違う⋯⋯母さんに素直に言えなかっただけだ耐えられないと、千鶴がいない未来なんて考えられないと⋯⋯

 母さんが深い溜息を付いて俯いた。


 「千鶴ちゃんは私にとっても大事な娘なのそれに、桜井さんには大きな恩がある、だからやれる事は全部やるから心配しないで、でも覚えておいて私達にとって一番大事なのは咲也だからね」


 全部悟られてしまったのだと思う⋯⋯俺は小さく頷いた。


 「二つ目は咲也、あなた千鶴ちゃんの事好きなの?」

 「へっ?」


 母さんの俺を見る顔がさっきまでの引き攣った顔と違い満面の笑みに変わった。


 「す、好きだよ、なんでだよ?」

 「ふ〜ん」


 なにこれ?さっきまでのシリアスな展開は何処に行った?


 「ふ〜んってなんだよ?」

 「ふふふっ、私ねいつか咲也が千尋ちゃんか千鶴ちゃんと結婚するんじゃないかって昔考えた事があったのよ、それで桜井さんが本当の家族になるの」

 「な、なんか話が色々飛躍していませんか?」

 「そう?そんな事無いと思うけど?」

 「そ、それに千鶴と付き合えるって決まったわけじゃないし、向こうの気持ちだってわからないし⋯⋯」

 「咲也それ本気で言ってるの?」


 母さんが訝しげな表情を向けてきたので俺は咄嗟に目を逸らした。何が言いたいのかわからん、なに?どうゆう事?


 「まぁいいわ、早く孫の顔見せなさいよ」

 「だから、なんでそうなるの?」


 気が早すぎるでしょ?千鶴の気持ちだってあるわけだし⋯⋯


 「ふふふっ、もういいから寝なさい明日は早くから神社に行くわよ」


 「わかった⋯⋯おやすみ」


 一体何なんだ?母さんは何が言いたかったんだ?わけがわかんねぇ、俺は頭を抱え込みながらベッドに入った。

 

 次の日俺と母さんはお祓いに行った神社に来ていた。


 「電話した篠崎です、先日はありがとうございました」

 「とんでも御座いません、それより何かありましたか?」


 母さんが一枚の写真を出してみせた。


 「先日車に取り憑いていた霊ってこの子だったりしませんか?」


 俺は母さんが出した写真を覗き込んだ。その写真には仲睦まじそうな双子の女の子が写っていた。


 「断定はできませんけど似てますね」

 「やっぱり⋯⋯その確認で今日はお伺いしました。すいませんありがとうございました」


 なに?どうゆう事?理解が追い付かないんだけど?母さんが俺の顔を見て話しだした。

 

 「咲也少し現実離れした話をするからね」

 「え?」

 「恐らく車に取り憑いていた霊は千尋ちゃんよ、咲也は夢でしっかり千尋ちゃんを見ていたって事、私が思うに咲也が見てた夢って警告夢なんじゃないかって?」

 「警告夢?どうゆう事?」

 「千尋ちゃんは千鶴ちゃんが死ぬ事が分かっててそれを助けたくて咲也の夢に出てきてたのよ」

 「まじか?」


 驚愕している俺に、母さんは小さく頷きながら話を続けた。


 「ここからが重要なんだけど、この神社だけ今までの夢と違ったじゃない?だからここ?もしくはここでの出来事には千尋ちゃんからのメッセージが隠されているんじゃないかなって?」

 「じゃ千鶴助けられるの?」


 俺は藁にもすがりたい気持ちからか焦っていた気持ちを抑えられなくなりそのメッセージが何処かに無いかと周りを見渡した。


 「咲也この話はまだ憶測でしかないからね、一旦帰って落ち着いて考えましょう」

 「⋯⋯わかった」


 千鶴を助ける事ができるなら何でもする、なんなら命だってかける。

 そう強く決意し帰路についた。

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