第一話
その夢は普段見る夢と明らかに違い、夢の中でこれは夢だと気付くと同時に、実際に起こる、正夢になるってわかる。理由はわからないがそんな感覚に襲われる夢だった。
太陽の陽がアスファルトを焼き陽炎の発生で道路が揺らめいて見えた高二の夏休み不思議な体験をした。
叔父の周りで最近おかしな現象が多発し、『何かに憑かれたかもしれない』と聞き両親と俺が付き添いで一度専門家に見てもらう事になったのだ。
叔父と俺達家族はそれぞれ別々の車で神社に向かう事になり、叔父の車の後ろをついて行く事にした。
「叔父さんの車新車?」
「違うわよ、確か去年の十二月に買った新古車だったはずよ?」
「へぇ、めちゃくちゃ綺麗に乗ってるじゃん」
「車が趣味だからね〜、自分で手入れ頑張ってるんじゃない?」
「そうなんだ?俺も早く免許取りたいな」
「早く取って私達を温泉旅行に連れて行きなさい、親孝行よ」
「免許取れたらな」
車中は他愛も無い会話で盛り上がっていた。
けれど、神社に近付くにつれ不思議な感覚に襲われ始める。
「なぁ、この場所って初めてくる?」
「初めてよ、何かあった?」
夢で見たことのある風景だったのか?はたまた以前友達と来たことがあったのか?はっきりとは思い出せない。
ただ、前にも似たような体験をした事があった、夢で見た場所に現実でも行くみたいな、形容し難い感覚に襲われた事があったのだ。
それと今同じ状況に置かれていたので聞いてみたのだが⋯⋯更に車で走ると初めて行く場所なのに、明確に覚えのある風景にもう疑いの余地が無くなり話を続けてしまう。
「ねぇ本当に初めて行く?次の交差点を左に曲がるよ、曲がった先すぐの左手に大きな木が一本、信号を2個過ぎた先に神社がある筈だよ」
母さんが俯きながら時折俺に視線を向ける。
言った通りの風景と場所が出てきたからだ。
車中は重苦しい空気になってしまい俺はどうしたら良いか分からなくなってしまった。
でもここまで来たら覚えてる記憶を全部吐き出してしまおうと車中の空気を振り払い意を決して話をする。
「鳥居をくぐったすぐ右手に小屋みたいなのがあって、その中に入るとお地蔵さん三体とお供え物が並んでる、その場所を出てすぐ右手に水飲み場があって、それを背に真っ直ぐ行くと御祓場と言うか神主さんの家がある。まずはそこに入る事になると思うよ」
もちろん全部当たっていた。
間違いなく俺はこの場所を見たか来たことがあると確信している。
今までの体験と明らかに違う事が一つあり、これを言っていいのか、悪いのか?悩みながら両親の顔色を窺った。
なんでだろう、なんか口ごもっている気がする?
俯き、何かを俺に伝えて良いものかどうか考えてるようにも見える。
いやもしかして変な事を言っている息子に嫌悪感を抱いてるのかもと少し苛立ち最後の一つを言う決心をした。
「叔父さん、車に女の子の霊が付いてるはずだよ⋯⋯」
勿論俺に霊感があり霊が見えたわけではない。
俺が見た夢か何かの最後の結果がそれだったからそのまま伝えただけの事だった。
ただ、両親にとっては衝撃的な事だったのだろう。
除霊師に見てもらった結果、やはり車には女の子の霊が付いていた。
ただし決して悪霊では無いので除霊するかどうかの判断を叔父が委ねられていたのだ。
もう両親の顔をみるのが怖い、どんな顔をしているのだろうか?結局神社内の間取りから取り憑いてるそれまで言い当ててしまったのだから⋯⋯
その後、俺も両親も重苦しい空気を纏ったまま家に帰った記憶だけはある、何か隠しているような感じもしたがこれ以上このはなしを話すまいと心に決めてこの日は終わっていったのだが⋯⋯
本当になんだったのだろう?自分に起こった不思議な体験が何度も何度も頭の中を駆け巡っていた。
作者の木村と申します。
私の執筆した作品を手に取り、読んで頂きありがとうございます。
この作品は私が実体験した不思議な事を元ネタに書かせて頂きました。
この後の話でも二箇所不思議な実体験を織り込んでおりますので、それが何か考えながら読み進めて頂けると幸いです。
仕事上時間はかかってしまうかもしれませんが、どんな些細な事でも感想を頂ければ返信させて頂きたいと考えております。
最終話まで一気に投稿して行きたいと思いますので、是非最後までお付き合い下さい!