勇敢な家鴨ケビン
芽衣は、まるでかけがえのない宝石のように、ゴム製のアヒルを腕に抱きしめていた。その空虚なプラスチックの目はまっすぐ前を見つめ、彼女の壮大で、しかし少しばかりばかげた計画の静かな共犯者だった。今日は「ペットを学校に連れてくる日」で、クラスメートたちが小さなケージに入ったハムスターや、眠そうな目をした猫を抱えてくる中、芽衣はケビンを選んだのだ。ケビン、そのゴム製のアヒルを。
彼女の親友の翔太は、学校へ向かう道中、隠しきれない不安の表情を浮かべて彼女の後ろをついて歩いた。「本当にこれでいいの、芽衣?」彼の声にはある種の恐怖と、そしてわずかばかりの憧憬の色が入り混じっていた。「藤村先生は『本物の』ペットって言ってたよ。」
芽衣はいたずらっぽい目を輝かせながら、にやりと笑った。「ケビンは本物…っぽくゴム製なの。それに、間違いなく個性があるわ。」彼女はそう言うとケビンを握りしめ、抜ける空気の甲高く情けない音を学校の廊下に響かせた。通り過ぎる数人の生徒が立ち止まって見つめ、その顔には困惑とこらえきれない笑いが入り混じっていた。
騒ぎは3時間目、藤村先生の悪名高い退屈なイモリの渡りに関する授業中に始まった。藤村先生が単調なうなり声のような声音で話し続ける中、芽衣はケビンを机の上に戦略的に配置した。そして、絶妙なタイミングで手首を返すと、彼女は彼を空中に放り投げた。
ケビンは空を舞い上がり、純粋なばかばかしさを体現する黄色い発射体となり、最前列に座って先生からのすべての質問に信じ難いほどの正確さで答えるクラスの物知り屋、誠くんの頭に、ソフトな音を立てて着地した。
イモリの求愛行動について答えている途中だった誠くんは、突然言葉を切った。彼は手を伸ばして頭からゴム製のアヒルをつまみ上げたため、目が寄り目になった。教室には集団的な息をのむ音が広がり、続いて藤村先生でさえ無視できないほどの爆笑が起こった。
芽衣は無邪気を装い、目を大きく見開いた。「あらまあ」と、彼女はわざとらしい心配そうな声で言った。「ケビンが少し…興奮しちゃったみたい。」
その後の時間は、楽しい大騒ぎの時間と化した。「ペットを学校に連れてくる日」の非公式マスコットとなったケビンは、最初はごく普通の金魚やスナネズミを持ってきた生徒たちによってたらい回しにされ、嬉しそうに黄色い鳴き声を上げた。藤村先生も、最初の衝撃が過ぎ去ると、授業の後半にケビンが地球儀の上にちょこんと座っているのを見て、小さく微笑んだ。
終業のベルが鳴る頃には、芽衣はケビンの伝説的な地位が確立されたことを知っていた。彼はただのゴム製のアヒルではなかった。彼は予期せぬ喜びの象徴であり、時には最もばかげたものが最大の笑いをもたらすことを思い出させてくれるものだった。そして、翔太と一緒に家路につく途中、ケビンをしっかりと腕に抱きしめながら、芽衣は不意に悟りを得た。時には、少しばかりばかげていることが、最高の現実なのだと。