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炭酸に誓って

一応、真面目なお話です。


今回、ガ=ルス監査官はハルオ達に敬意を表してリアルタイムで機械翻訳した日本語で会話しているので、一部おかしな言い回しがあります。

多少の翻訳ズレは指摘しないのがユルダ=オルのマナーなのです。

人工重力のわずかなゆらぎが、〈ヒナギク13号〉の船体を包み込む。星間航路を抜け、ユルダ=オル文明圏最大の経済ハブ、“ピルヴァ第6環”が目前に迫っていた。


コクピットの前面スクリーンには、環状構造の巨大ステーションが映し出されている。数百ものドッキングポイントが浮かぶその姿は、まるで機械仕掛けの天体だった。


ハルオは、操舵モジュールのそばに腕を預けながらつぶやいた。


「……ピルヴァって、俺たち人間が常駐してる中では、いちばん遠いステーションだったよな?」


「正確には、“有人運用されているユルダ=オル系外施設の中で、地球時間と重力標準の互換を持つ最遠地点”です」

ツバキが、端末から目を離さぬまま即答した。


「要するに、今の人類が“まともにやり取りできる限界点”ってことか」


その言葉にツバキが頷く。


「今回の貨物、地球側から送られたのは“医療用ナノファイバー”と、“日本製クラフトコーラ《コハク・スパーク》”ですね」


「……医療資材とコーラ。すごい組み合わせだよな」


「《コハク・スパーク》は、ユルダ=オル上層階級の一部で根強い人気を持っています。今回は、文化価値資源としての登録も申請されているようです」


「文化価値資源って……ワインとかと同じ枠か」


ハルオはやれやれと頭をかいた。


ハルオの脳裏に、かつて地球で体験したささやかな記憶の断片が浮かぶ。高校時代、真夏の駅前で飲んだ冷たい缶コーラ。あの時の泡のはじける音と喉越しを、今でも鮮明に思い出せる。


〈ヒナギク13号〉がステーションにドッキングすると、接続信号がブリッジに響いた。


ツバキが操作を終え、ハルオに振り向く。


「外交ブースでアヤセ機関員がお待ちです。今回の交渉任務、同行されるとのこと」


「……あの人か。“久しぶり”だな」



ステーション内の地球文化適応区画を抜け、彼らは白磁質の通路を通って外交ブースへと足を運ぶ。


先に到着していたアヤセ機関員は、すでに通訳ナノリンクを同期させ、電子紙端末を手にして待機していた。白地のスーツに無駄のない所作。目元の柔らかさと口元の鋭さが共存する、典型的な現場外交官の風貌だ。


「ようこそピルヴァへ、ハルオさん、ツバキさん。今回の“泡案件”は例によって――急転直下ですよ」


「ご無沙汰しております、アヤセ機関員。今回も無茶な荷物を運ばせていただきました」


ハルオが軽く頭を下げる。公的な場での会話ということで、少しだけ敬語を意識していた。


「いや、助かってる。こちらも“泡”を巡って一悶着ありそうだからね」


アヤセが口元に笑みを浮かべつつ、端末を操作する。浮かび上がったホログラムには、赤と青のラベルが輝く二本のボトルが並んでいた。


「さて――これを覚えているかな? ペカコーラ。そして、プシココーラ。いずれも“伝説のコーラ”として、ユルダ=オル圏で神格化されている飲料だよ」


ツバキが眉をひそめた。


「これらは……アメリカ資本の現行製品では?」


「その通り。だけどね、2035年、啓蒙艦隊が最初に地球圏に派遣されたとき――この2種を飲んだユルダ=オル側の異星人たちが、“これは記憶を封じ込めた液体だ”って大騒ぎした」


アヤセの言葉に、ハルオが吹き出しかける。


「たしかに、初めての地球接触でそれ飲んだら、印象強いだろうな……」


「問題はね――彼らがその後、輸入しようとしたが失敗したってこと。ユルダ=オルは“契約と標章”を聖域扱いしていて、商標も特許も絶対に破れない。“宗教的理由”だそうだよ」


「つまり……?」


アヤセが軽く肩をすくめた。


「つまり――“ユルダ=オルはアメリカから輸入するルートを持っていない”。それで今、“アメリカをよく知る日本”の力を借りたい、という依頼が来たわけさ。公式には“文化仲介”と呼ばれているけどね」


ツバキが静かにうなずいた。


「なるほど……それで《コハク・スパーク》のサンプルも含めたのですね。“代替可能性”を評価するために」


アヤセが笑う。


「お見通しだ。ガ=ルス監査官が、試飲の準備を整えて待っている。彼は例によって形式を重んじるタイプだから……今回は、ちょっと緊張感を持って臨んでくれ」


ユルダ=オル文明圏の公式会見ホールは、光と影のバランスに厳格な設計思想が貫かれていた。空間の奥行き、壁に埋め込まれた有機照明、そして天井の静かなパルス光――すべてが「交渉とは精神的な儀礼である」という彼らの価値観を物語っていた。


中央の座卓に、ハルオ、ツバキ、アヤセが並んで着席し、対面にはユルダ=オル監査局所属の中階級官僚、ガ=ルスが姿勢を正していた。頭部の後方に伸びた触角様の神経結晶が微細に振動しており、彼の緊張を示している。


その前に、銀製のトレイが置かれていた。


トレイの上には、冷却済みの日本製クラフトコーラ《コハク・スパーク》が二本。複雑な和漢系スパイスの香りと共に、瓶の外気が淡く霧をまとっている。


「お持ちいたしました、《コハク・スパーク》。日本より直送した小規模工房の製品で、今回が初のユルダ=オル圏展開です」


アヤセが静かに説明すると、ガ=ルスは慎重な所作で瓶を手に取った。重力変動を嫌う彼らの慣習に従って、トレイから口元までの動線は完全に固定された姿勢で維持される。


瓶が傾き、琥珀色の炭酸がグラスに注がれた瞬間――ガ=ルスの目が細められた。


「……この音だ」


炭酸が弾ける音を、彼は神聖な“記憶再生の兆候”として受け取っているらしい。


そして一口、グラスを口に運ぶ。


一拍置いて――異星人の表情筋が柔らかくほどけた。


「――……これは、記録通り。いや、それ以上だ。芳香、微細な刺激、そして後味の甘苦しさ。“時空を越えて情報を抱える液体”という定義に、完全に合致する」


ハルオが思わず眉を上げる。


(コーラをそんな高尚に語るか……)


だが内心では、これが“啓蒙艦隊の最初の衝撃”――いわば、ユルダ=オルにおける“文化第一接触”の一部であったことを思い出していた。

“コーラ・ブーム”。それは彼らにとって単なる嗜好品ではなく、“地球文明の味”そのものであり、永遠に再現困難な“原体験”なのだ。


そしてガ=ルスは、グラスを置いたまま、静かに言葉を紡ぎ始めた。


「さて、ここからが本題だ――地球日本の皆様」


彼の声音は一段と重く、語尾に特有の抑揚が現れた。これはユルダ=オルの言語習慣における、“神域的議題”に入る際の前触れである。


「……伝説のコーラ、《ペカコーラ》と《プシココーラ》。これらは、我々の社会構造の中で“起源体験の象徴”として文化的遺産に登録されている。にもかかわらず、宗教的・契約的制限により、正式な商取引が長らく不可能だった」


アヤセが一度、短く頷く。会話の導線はすでに読み切っている。


「なるほど。“再現”ではなく“正規輸入”を望んでいるのですね」


ガ=ルスは唇のような器官を一度震わせたあと、悔しげな表情で言った。


「――レシピの化学構造と配合比率は、すでに解析済みだ。だが……それを模倣し、製造することは“信義契約の破壊”に相当する。商標、意匠、製法特許……それらは、我々にとって“宗教的禁止区”だ」


ハルオが思わず身を乗り出す。


「……つまり、正規ルートでアメリカから輸入したい、と?」


ガ=ルスが重々しく頷いた。


「しかし、我々の外交機関は“アメリカ”という文明との接触において、文化的摩擦を多く経験している。彼らの内政的事情、歴史的背景、企業体制――理解できないのだ」


ツバキが補足するように声を添えた。


「それで、“アメリカに詳しい日本”に仲介を依頼した、というわけですね」


「その通り。我々は、日本人の皆様の“間合い”に賭けたい。あなた方ならば、伝説の味を、正規の手順で、ふたたび我らの社会に届け得ると信じている」


場に静寂が落ちた。だが、そこに張り詰めた緊張はなかった。


アヤセはグラスを軽く回しながら、柔らかな声で言った。


「……この件、日本の民間ルートと地球側の外交資源を通じて“文化復元事業”として扱う方向で、調整可能かもしれません。詳細な手続きは、我々にお任せいただけますか?」


ガ=ルスはゆっくりと立ち上がり、頭を下げる。


「……日本の知恵に、我々の未来を託す。これは、ユルダ=オルの新たな契約の始まりだ」


その言葉に、ツバキが静かに記録用のナノデータを送信する。


ハルオは、グラスの中でゆらめく琥珀の炭酸を見つめながら思った。


(こんなにコーラについて大真面目に話し合うのは産まれて…いや、前世含めて初めてだよ)


外交的合意の一歩手前――つまり“事実上の握手”が交わされたあと、会談は一段階進んだ。


ユルダ=オル側が提示したのは、実に細密な物流経路案であった。伝説のコーラ、《ペカコーラ》《プシココーラ》を地球からピルヴァ第6環を経由し、複数の中継ステーションを通じて文明連盟全域に分配する構想である。


ハルオは、投影された航路図を見ながら、静かに腕を組んだ。


(なるほど、ピルヴァは“炭酸のハブ”になるわけか……)


中継ステーションの名がまた風変わりだ。《泡の門》《炭酸脈動域》《記憶配送管》――いずれも、ユルダ=オル圏で“記憶の再生媒体”として扱われる炭酸文化を反映している。


「つまり、こちら側の実務としては?」アヤセが視線を向ける。


ガ=ルスが手元の端末を操作し、言った。


「地球アメリカ内の二企業に対して、製品の正規契約輸出を働きかけていただきたい。交渉の窓口設計、文化翻訳、政治的反発の緩和も――すべて“地球側”の裁量に委ねたい」


アヤセは一瞬考えこみ、やがて頷いた。


「……それなら、日本の在米文化庁ルートと、グローバル文化資源省を使って動けます。商標権と意匠保護の宗教的取り扱いも説明し、適切な“再解釈モデル”を提案することになるでしょう」


「ありがたい」ガ=ルスは礼を述べると、ふいに興味深そうにハルオを見た。


「貨物を届けてくださったのは、あなたですね。地球日本から、我々の惑星圏まで……」


「はい。通常通り、低圧冷却貨物室で護送しました。やや重力歪曲のある中継もありましたが、炭酸圧は安定していたかと」


「……素晴らしい」


ガ=ルスは瓶をもう一度掲げ、満足そうに唇を濡らした。


「この味が変質していないこと、それ自体が地球の輸送技術の証左です。あなた方の時間感覚に、敬意を払います」


ハルオは恐縮して頷いた。


「恐縮です、ガ=ルス様」


モノローグの中で、ハルオはふと旧地球のある逸話を思い出す。


(……そういえば、ほぼ鎖国状態だったソ連市場に最初に参入した西側製品が、確かコーラだったんだよな……。時代も場所も違うのに、コーラってやつは、どうしてこう……国境も星系も軽々と越えてくる)


そのとき、ツバキが静かに口を開いた。


「物流計画の中に、ユルダ=オル圏内での小規模製造拠点設置案が記されています。これは“緊急避難的な生産”を意味するものでしょうか?」


「仰る通りです。将来的には地元生産も検討していますが、伝説のコーラは“オリジンである地球”からの輸入であることが価値なのです。だからこそ、まずは本物でなければならない」


アヤセが補足するように微笑んだ。


「……つまり、“神話を再演する”ことが目的なわけですね。文化というのは、味や商品を超えて、“体験”の再現なんですよ」


「まさに。それが可能になるのなら――」ガ=ルスは、そこで言葉を切り、眼差しを正した。


「我々は、日本に第二次“文化交易協定”の締結を正式に要請したい。今回の件は、その象徴であり、試金石だ」


アヤセは驚いたように目を見開いたが、すぐに表情を引き締めた。


「……承知いたしました。本国と協議の上、速やかに対応いたします。伝統と契約の尊重という観点で、我が国は貴文明と価値を共有できると信じています」


そのやり取りを見届けながら、ハルオはそっと息を吐いた。


(最初はただの炭酸飲料を運んだつもりだったんだがな。気づけば、文明間条約の触媒か……)


会談を終えて、通訳を兼ねた文化交流サロンへと案内される道すがら、ハルオは無意識に肩の力を抜いていた。


(うまくいった……のか?)


異星の空気は冷たく乾いていたが、どこか落ち着いた静寂が漂っている。人工天蓋の空には淡い二重星が照っており、紫に染まった建築物の群れの中で、地球の言葉がぽつぽつと響いていた。


「ハルオさん、交渉お疲れさまでした」


アヤセ機関員が隣で声をかけてきた。手には地球側記録用のタブレットが握られている。


「いえ、私は貨物を届けただけで……正直、ああいう高位の方と正面から話すのは場違いかと思ってました」


「でも助かりましたよ。ああいう場では、“届けた本人”が出るだけで交渉の重みが変わるんです。実体験を持つ者の言葉は、数字よりも強い」


「そういうものですか」


「そういうものなんですよ」


アヤセはにこやかに言った後、すっと真面目な表情になった。


「ただ……ここからが本番です」


ツバキがその言葉に頷く。


「ペカコーラとプシココーラ、いずれもアメリカ合衆国の特定企業が知財保護を保持している製品群です。実際の輸出には複数の国際的認可、文化摩擦、過去の商標紛争の解消が必要となります」


「やっぱり……地球が一番、ややこしいな」


ハルオがぼそっと呟くと、アヤセが笑いながら答えた。


「宇宙を旅しているあなたがそう言うと説得力がありますね。でも実際、アメリカというのは、極めて“自我の強い”文明です。だからこそユルダ=オルも日本に声をかけてきた」


「つまり……間に立ってほしいってことですか」


「その通り。“アメリカを知っていて、アメリカではない”存在として、我々日本は理想的なんです」


ハルオは頷いた。文化交易における“第三者の翻訳者”という役割――それは自分たちの国がかつて何度も担ってきた役回りだった。


(……そうか。俺たち、今回もその延長にいるんだな)


廊下の向こう、交流サロンの扉が開くと、先に到着していたガ=ルスが、グラスに入った琥珀色の液体を掲げていた。


「来たか、日本の勇者たちよ。まずは祝杯といこうではないか」


テーブルの上には《コハク・スパーク》の瓶がずらりと並べられていた。すでにいくつかは空となり、キャップが整然と脇に積まれている。どうやら、彼は一本や二本で満足するような男ではなかったらしい。


「これぞ……“記憶が泡立つ液体”だ! 君たちの文化は、味覚のレベルで我々に融合する!」


「恐縮です」


ハルオが軽く会釈する横で、アヤセが端末を取り出し、控えめな声でツバキにささやいた。


「早速、“泡の記憶文化群”の分類変更申請がユルダ=オル文明評議会から来てます。あの人たち、本気ですよ」


ツバキも静かに笑う。


「それだけの味、ということですね」


ガ=ルスはグラスを置き、表情を引き締めた。


「さて。歓談はほどほどに、本題に戻ろう。伝説のコーラ――《ペカコーラ》と《プシココーラ》――それらはユルダ=オルの象徴となった。だが我々は……未だ、それらを自由に再現できていない」


重々しい口調。まるで歴史の転換点に立っているかのような語りだった。


「我々はレシピを解析した。成分も手に入れた。だが……“宗教的な理由”により、特許と商標を破ることができない。契約こそ文化だからだ」


そこまで言うと、ガ=ルスは悔しそうに拳を握る。


「だからこそ、君たちの知恵が必要だ。アメリカを、よく知る日本の君たちの力を……!」


アヤセは一礼しながら応じた。


「お任せください。日本の交渉技術と文化翻訳力があれば、きっと突破口は見出せます。伝説を再演する――そのお手伝いを、我々がいたします」


ガ=ルスは深く頷いた。


「その言葉が、文明をひとつ動かすと信じよう」


——


ハルオは、静かにそのやりとりを見ていた。


(……やっぱり、ただの炭酸飲料じゃないんだな)


彼の手元にも一杯の《コハク・スパーク》が注がれている。ゆっくりと口に含むと、スパイスの香りと甘みが喉を駆け抜ける。


そして遠く、地球から旅立った飲み物が、異星の文化と響き合う音を、確かに感じた。


〈ヒナギク13号〉の船内。

人工重力下の中央ブリーフィングルームに、アヤセ機関員、ツバキ、そしてハルオが揃っていた。地球本部宛の報告映像の最終確認が行われている。


「第6環交渉ログ、映像と音声、双方に乱れなし。データ送信は本航行経路の折り返し点“イーヴ軌道中継ステーション”にて実施予定です」

ツバキが卓上のターミナルに指を滑らせながら告げる。


「いやあ、しかしあのガ=ルス監査官、完全に《コハク・スパーク》の虜だったわね」

アヤセが軽口を叩くが、その目には満足げな光が宿っていた。

「“文化価値商品”の認定が下りた以上、日本の中小メーカーにとっても絶好の機会になるわ。……大げさに言えば“ソフトパワー輸出の一里塚”よ」


ハルオは、腕を組んで椅子にもたれかかり、静かに考えていた。

《コハク・スパーク》が、“未来記録庫”に保存される。それは、たしかに大したことかもしれない。でも――


(それでも、やっぱり……コーラなんだよな。こんなに宇宙の果てまで来て、話題がコーラになるとはな)


彼はふと口を開く。


「コーラってすごいですよね。思想も、言語も、宗教も超えて。泡立った甘さひとつで、他文明との扉を開ける」


「……“宇宙の共通語”かもしれませんね」

ツバキが静かに言った。


ハルオは笑った。


「まあ、それにしても今回は異様な依頼でしたよ。結局“伝説のコーラ”って……《ペカコーラ》と《プシココーラ》のことだったんですから」


「ガ=ルスが悔しそうに言ってたでしょ。“レシピの解析には成功したが、宗教的制約ゆえに特許と商標には手出しできない”って。まさか、異文明が“知的財産権”にここまで配慮するとは思わなかったわ」


アヤセは立ち上がりながら、スーツの裾を整えた。


「次は本格的なルート構築になるでしょうね。アメリカ本国の輸出管理、宗教的ライセンス遵守、そしてユルダ=オル側の規格認証――」


「面倒くさい未来が待ってそうです」

ハルオがぼやいた。


「でも、その面倒くさい未来こそ、我々の価値ってことじゃないかしら?」


「……ああ」

ハルオは頷いた。

(“面倒くささ”を乗り越えてこそ、文化は宇宙を超える。そこに俺たちの存在理由があるんだ)


「地球時間換算で、そろそろ帰還ログの照合に入ります」

ツバキの声が入り、彼らはそれぞれの端末に向き直った。


アヤセが最後に一言。


「じゃあ、ハルオさん。次の案件、ちょっと変わってるけど……“たこ焼き器”って知ってる?」


「……え?」

ハルオが目を瞬かせる。


ツバキがそっと言葉を添える。「“丸い加熱食品生成装置”として、文化交流カテゴリに分類可能です。既に概念翻訳も済ませています」


「まさかとは思うけど……本気なんですか?」


「本気よ。文化はね、真面目な顔でふざけるのが一番よく伝わるの」


アヤセがウィンクを残して退出する。


〈ヒナギク13号〉は、既に次なる星の航路へと進路を取り始めていた。

船体を揺らす微細な慣性に、宇宙の深奥が静かに近づいてくる。


ハルオは、窓外の星々を眺めながらふと思う。

(たぶん、また変な荷物を運ぶことになるんだろうな。でも、どんなに馬鹿馬鹿しくても――“時間の味”を届けるって、案外悪くない仕事だ)


彼はツバキに向き直り、軽く肩をすくめた。


「じゃあ、パートナー。次の“文化外交案件”も、よろしく頼むよ」


「了解です、キャプテン」


そして、〈ヒナギク13号〉は再び、星々の海へと滑り出していった。

ユルダ=オルから見た今の日本は「支援したらちゃんと発展して自分達とWin-Winの取引ができるレベルの先進国になったアフリカ」みたいな感じです。


ハルオが同席を許されているのはユルダ=オルにおいて宗教的に神聖な〈リク=ラム〉を投与されている事自体が信頼できる人物である事の証明だからです。


所であなたが好きなコーラはコ○ですか?ペプ○ですか?

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