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【パーティ追放殺人事件】捜査会議 余談

「ユキノちゃん、わからないところある?」

 ユキノがボードを凝視しながら「そうですね……」


「種者のところとか、種者とのころとかどう?」

 説明したいんだろうなという雰囲気を感じとったユキノが「種者がちょっと」


「うんうん。一番ややこしいところね」


 種者の欄には現生者か転生者かが記載される。

 現生者であっても転生者の子や孫であれば世代が書かれる。

 さらに、転生者にはタイプが存在し、それに応じて一型や二型といった表記が使われていた。


一:前世の記憶や経験を持った状態で赤ん坊として生をうけた者

二:現生者として生きていたが、ある時期を境に精神が入れ替わった者

三:前世と同じ姿や年齢でこちらの世界にやってきた者

四:動物、無機物など人間以外に生まれ変わった者

五:前世で伝説や物語として語られていた登場人物に精神が入れ替わった者


 一から順に型番が大きくなるにつれて希少性が高い。

 五型にいたっては数例しか報告されていない。

 また、三型をのぞく転生には肉体としての年齢のほかに、前世と現世で生きた年月を合算した精神年齢が記載される。


 これが非常にややこしい。

 子どもなのに中身が大人、大人なのに中身が子ども、というように見た目から精神の成熟度を図れない人が転生者の中には数多く存在する。


「クリスとカスパルの欄、声に出して読んでみて」


「クリスティーナ・シリー、現生者かつ世代表記なし、21歳」

 続けて。

「カスパル・ダリル、二型転生者、18歳で精神年齢は21歳。15歳で二型転生しており、それまで現生者として生きてきた記憶は残っていない」


「どの部分が気になる?」


「記憶や精神年齢は自己申告ですか」

「転生者の場合、新たに戸籍を作る必要があって、申請時に前世の生い立ちや境遇を聞かれるの。嘘をついたりごまかしたりすることもできるから、完全に正しいとは言えない。もちろん、嘘を暴く魔法を使える人もいるけど、証拠や証言として採用しないというのが国家としての方針ね。嘘を暴く人が嘘をつくこともあるから」


「罰則もありましたよね」

「嘘偽りが発覚すると重い罰則が課せられ、転生者としてのサポートも受けられなくなる。まあ、機能しているかと聞かれると微妙かもね。ほかには何かある?」


「記憶や転生タイプが犯罪につながることもあるんですか」

「おおいにある。とくに、二型や五型はベースになった現生者としての記憶が残っていることもあるけど、ない場合はトラブルが起きやすい」


 俺が割って入り「婚姻関係を結んでいる人やすでに家庭を持っている人だと悲惨だな。記憶喪失ってだけじゃなく別の人格が形成されているから、見た目が同じ『別人』と生活することになる。魔力の性質も変わるから仕事にも影響するし、そういった変化に耐えきれなくて大抵は離別する」


 これまで生きてきた日々をなんの前触れもなく乗っ取られる。

 現生者からすれば、もっとも忌むべき転生だろう。

 言葉を失うユキノを気遣うようにマイさんが明るい口調で。


「まあ、二型転生で険悪な夫婦関係が改善したパターンもあるし、一概に悪とは言えないわ。とりあえず種者が犯行の動機につながっている可能性があることだけは覚えておいて」


「わかりました」


 アルが空気を変えるように「ちなみに俺は三型の26歳」

「俺は二世代現生者の23歳」と流れにのる。

「私はただの現生者、32歳」

「私は……。一型の16歳、精神年齢は24歳です」


「よく考えたらケイが一番年下じゃない。敬語使わなくていいよ、ユキノちゃん」

「そうだそうだ」

 上司はいいが、精神年齢が一番低そうな同僚に言われたくない。


 困ったように「いえ。先輩ですし、私の見た目で対等に話してしまうと周りがケイさんにいい印象を持たないと思うので」


「……こんなできた子、よくうちの課に来てくれましたね」

「急に敬語になってマジメな話をするな、アル」


 本格的に議題がそれてきたので軌道修正しよう。


「そろそろイリッド村の報告をしてもいいですか」

「そうね。お願い」

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