貴方の望む私になれてますかね?
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
またお会いしたいと思います。
この世に私は要らない存在で、誰からも必要とされない。それが本当に苦しくて、死ぬ事を考えた事がある。死んだ様に朝起きて、死ぬ為のロープを調達する算段を考えて、ただ玄関まで歩こうとした。これで終わる。私の全てが終わる。
そう思っていたら、ふと、目の前に一人の青年が現れた。鮮やかな黒髪に、柔和な顔立ち。姿は人だが中身は神。そんな御前は、私の頬に手を当ててゆったりとした口調でお話になる。
「僕との約束、覚えてる?」
その問は、今の私の傷口に塩を塗る行為に等しかった。この頬を摩る指を振り払って、そのまま逃げ出してしまいたかった。けれどもそれだけは、私の意地にかけて出来なかった。
「……大団円を迎える為に……修羅の道を歩く事を……決めました……」
自分から願ったのだ。一番良い終わりが見たいと。万事解決したままでお別れしたいと。だから、今此処で死ぬ事は、掟破りに他ならない。其れを知った上で、御前は問われたのだろう。
「死んじゃ駄目だよ。君が死んだら、全てお終いなんだから」
「ぅうぅっ……」
その言葉の意味の全てを分かっては居る。此処で死んだら皆から受けたお守りも、言葉も、御前から受けた慰めも、全て全て、無意味になってしまう。でも……。
「少し休もうか。死ぬのはそれからでも遅くないよ」
そう仰って、御前は姿をされた。
姿を眩ませていた彼が戻ってきた。その顔には僅かな憂いと、困惑が見て取れる。自分の感情と、理性の板挟みになっているのだろう。
「あの子が可愛くないの?」
「可愛いと、思ってますよ。それはもう、我が子の様に。だからこそ、あの子の成長した姿が見たい。どれ程どん底に叩き落とされても、這い上がる姿が見たい。其れは貴方様もきっと同じでしょう?」
それから意を決した様に私の顔をじっと見て答える。
「苦しみの後の果実は大きくて甘い。あの子にはその経験が何よりも必要だと、僕は思います」
人間というのは、いとも容易く手に入ったものは、同じ様に簡単に手放せる。でも困難の先に掴み取ったものは、何があっても手放さない。
冷たいけれど、それが真理なのだ。彼女が容易く手放さない為の、制御装置とも言える。
それから数年の月日が経った今、私の管轄に入れ、面倒を見ている。あの時ほど苦しくはないし、周りが見えない程に我武者羅でもないけれど、同じ様に目標を決めて走る姿は、やはり愛おしい。
――私、貴方様が好きな私になれてますかね?
その言葉、彼が聞いたら喜ぶと思うよ。
二度と経験したくないと思いながらも、あの経験がなければ直ぐに手放してしまっただろうと思います。
頑張る子は総じて神様好きだとは思っているのですが、その限度を超えたものを下賜した話。
『流石に死ぬ一歩寸前まで追い詰める趣味はない。けれども願われてしまったから、此方も容赦はしないよ』
という心情かと。
今でもあの時のお心遣いを考えては、様々な解が出ます。
でもあの方の顔を立てなくてはならないので、もう管轄からは外されていると思うんですよ。
基本甘ちゃんなので、意地になって頑張ろうと思ったのは、あの時と今な気がします。
数奇なものですね。