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鉄板買物

私が今日探索した、ローランド連合国に存在する、大迷宮『リンバス』。

この迷宮と呼ばれる施設は、クロス大陸と称される地続きの大陸に、一つしか存在しない。

大規模な魔力―それこそ地獄から湧き出ていると言われる事もある程の―が、モンスターという形で現れ、長く存在するモンスター程、力を得、存在を濃くする。

そう書いてある文章を読みながら、一人呟く。






「詰るところ、潜れば潜る程敵は、強くなる訳だ」


















テンプレ乙が往くッ!        第五乙 鉄板買物





















薄い冊子の様な、それで居て本!と呼べるような確りとした作りの書籍を捲りながら納得する。

書籍の名前は、【これで君も探索者!】、入門書の発展みたいな物だが、お値段は100G也。


これによると、各階層の敵の分布図というのも大体決まっているらしく、その情報も買えるらしいが、高い。宿代、慌てて揃えた生活雑貨、食事代、これらに比べて探索者が必要とする装備、情報等、これらに結構な物価の差がある。



宿代が1日二食シャワー付き10Gに対して、中古の剣と盾が50G、もっと判り易く表現すると

一階層から十階層までのモンスター分布図の書いてある書籍が1000G…。

それだけ探索者業は稼げるのだろうが、結構ぼったくりだと思ったり、生死を賭けるなら情報を得て安全に行きたいと言う思いで板ばさみだ。



あの後、結局4階層まで潜り、2つLVを上げまだ体力的にも精神的にも余裕は、あったが如何せん生活用品で全額を使い切っていた私は、昼食を持ってきていなかった。

水分は、井戸水をコレットが好意で水筒に入れてくれ持たせてくれ、ダンカンも後払いで良いから昼食を持って行けと言ってくれたのだが、金を出そうと思えばCPを使って出せなくは無いのが何とも心苦しく今日は、本格攻略をせず様子見と言うこともあり辞退したのだ。



今日わかった事だが、リンバスを潜る行程で起きる、戦闘も探索も体力と精神力を使う。



空腹で頭が回らなければ足元を掬われるかもしれない。



まだ遭った事は無いが、モンスターハウスという敵の巣窟に遭うかもしれない。



そう考えると、時間も昼過ぎで、尚且つまだ今日が始めて、と言う事でもう少し行けそうだったが、5階層に降りるポーターで地上に帰還し、神殿内部に在った連合国の出先機関である探索者専用の買取所に、今日の戦果を全部叩き売った。


今日の戦果は、水のクリスタル10Z×4 炎のクリスタル30G×11 風のクリスタル40G×7 バットと呼ばれるコウモリが落とした バットの翼10Z×3 の計610Gと70Z也。


そして、水のクリスタルが特に安い事など色々気に掛かる事が在ったので、その足で書店に来ていた。

もう驚かないし突っ込みもしないが、この世界は本屋という物がある。私が見ている探索者用の指南書や魔法スキルなどに言及した専門書だけでなく、しかも…ファッション雑誌らしき物も普通に置いてあるのだから、初めてみた時は言葉が出なかった…。


余所は余所、この世界はこの世界、と割り切るしか無いのだろう。と無意味に諦め、諦観の念を抱いた。


そして、初心者指南書を立ち読みしていたのだが、この技術力というのだろうか?

文明発展の根幹を理解した文言が在った。


どうやら、クリスタルというのは前の世界で言う鉱石の一つに近いらしく、山などで発掘され、それを一定の魔力を掛けたりする事で、クリスタルから水を抽出したり、火を起こしたりする事が出来るそうだ。

そして、凄い事に、このクリスタルで起こす現象は汎用性が高く、例えば幾つかの加工した材料を持ち寄り、完成形態を想像しながら土のクリスタルを使うと、強固に各素材を接着したりする事が出来るらしい。

これをクリスタル製造法と名づけ、それを更に発展させ、クリスタルが起こす現象を術式で固定し魔法アイテムとする【新型魔法具生成法】が発展したお陰で、電気やガスと言った、科学的な発展を遂げずに、ここまでの文明開化を遂げたようだ。



そしてローランド連合国は、リンバスという無限に貯蔵されている鉱山を持っているに等しい…。



これが教会と諸国の停戦、そして連合が成立した背景なのではないか?と考えてみる。


教会は、独占した方が旨味はあるが、小国の集まりとは言え周辺国家を敵に回し、膠着状態を続けたとしても何れ大国が押し寄せてくる。それならば宗教という立場を確保し、ある程度の影響力を確保する為に、停戦をしたのではないだろうか?

紆余曲折を経て単一国家が統べるのではない、【連合国】と成ったのも各国家の重鎮同士で牽制しあえばある程度フラットな政局が続くことを見越して…。

ローランド連合国の首脳陣は議会制民主主義に近く、連合国に纏まる前の各国家の重鎮が、【貴族】と名を成し、三人の国主を選定し日々この国を良くする為に頑張っている―とは、入国の際に貰った冊子の文言である。

しかし、現在手に取っている書籍の内容と、先ほどの閲覧した初心者指南書に有った内容も付け加え考えると、こうなる。


大きな三日月型を取る、このクロス大陸のほぼ中央に位置していた連合国に成る前の諸国家とメディナ教は、上と下に存在する大国からの侵略の危機があり、それなりに大きな土地を各国が持っているが、それを取り合っている現状では、上下を完璧に支配している大国に勝てる見込みが無い。メディナ教自体も、元々がそこまで信仰されていた宗教ではい上に、大国のどちらも精霊信仰が基本であるため取り潰されるのが目に見えている。


そんな中で、メディナ神殿に迷宮という無限に続く鉱山が出現しメディナ教が、資金源を手に入れ僧兵を強化し、宗教として浸透しつつあり、それに慌てた各国が【リンバス】の占有を目標に【主権を脅かされている】とオブラートに包み攻め込む。

神殿という要塞はあり、迷宮で鍛えた僧兵という兵力があれども、大半は普通の信者のメディナ教側、片や小国ながら連合を組む、上下の大国から自国を守ってきた軍隊の集まり。


メディナ教側は負ける可能性が大きく、連合国側は大国の動向もあり早く終わらせたい。


そこでメディア教側は一計を案じた、【メディア教側が白旗を挙げる】事だ…。

既に、宗教としては各国が恐れる程は浸透し、そして相手は一国だけでなく連合となった組織、この本にも書いてある通り【何処が神殿を管理するか】で揉め、血で血を洗う内戦に発展し、事態は一転二転し、結局神殿は、メディア教側が管理し、連合国側はメディア教を国の主教として定めることになる。


そしてメディアの最高司祭は、枢機卿長として名前を変え、後に出来るローランド連合国の重鎮の1人としての座席に座ることになる。


メディナ教の取り成しで連合国として纏まる事になり、絶対君主制を布いていた各国は、転機を余儀なくされ、貴族中心の議会制として形を変えた。


何処かの国がリンバスを独占するより、連合国として纏まる利点は、幾つかあったのだろう。


例えば、メディア教とのリンバスの占有権の独占など…。


こうして、ローランド連合国は、前の世界の政治体系に近い議会制を導入し尚且つ、リンバスという金が無限に沸く泉を手に入れ、大国の軍事力という脅威に、経済封鎖というカードを手に入れたのだ。


連合国がリンバスから出るクリスタルや素材を優先的に買い取る事で、流通を制御し尚且つ自国で消費する分を安く上げ、力を蓄え、市民の求心を図る…。


貴族と称される人たちや、議会の人たち、それとメディア教の上の人間関係は廃棄物汚染のヘドロより濁ってそうで、注意しておこう。


尤も、貴族に連なる連中は、連合国の街を城壁で囲んだ丸として考えると、神殿を中心に左半分が探索者地区と呼ばれ―私が今居る地域だ―右半分が特権地区と呼ばれ、貴族に連なる者たち等が住んでいる地域と明確に別けられている、らしいのでお近づきになる機会も無いだろうが…。


そこまで考え、探索者の入門書を読んでいたのが、何時の間にか歴史の本に取って代わり、尚且つ考えに耽って余程時間が経っているのだろう、店員にチラチラと見られているのに今更ながら気がつく。


他に立ち読みをしている人間を見かけた時から、立ち読みで済ませる気で居た私は、愛想笑いをしてそそくさと逃げ出すしかなかった…あっ、と引き止めるような声は聞かなかったことにする。









書店で思ったより時間が過ぎていたのに驚きながら、雑貨などを買い足す為に、店が立ち並ぶ場所にやってきた。


露天や出店がひしめき合う広場を道の端から眺めながら、良い匂いに釣られて買ってしまったローランド風タコスを頬張る。

野菜と肉と、仄かに香る柑橘系の生地の匂いが合わさり、見た目は濃いそうな味を覚えるがそれ程でも無く、サッパリした味に満足する。


先程の歴史書の内容を思い返しながら、ローランド連合国が、この地を【国】と定め同時に【首都】と定め物流の中心にしている恩恵が、この賑わいなのだろう。


「あ、あの?お兄さん~?」

「……ん?」



何時の間にか、横に出現していた人に声を掛けられ、振り向いてみるとそこには、惨劇の女王、移動喫茶のメイ店主が居た。無論、移動喫茶と呼称しているリアカーも健在だ。




「あ~~~メイ、さんで良かったか?丁度良かった、喉が渇いていたんだ、お勧めの冷えたジュース一本」

「あ…名前…ッ!わ、判ったよー!今日はね、サルタ産の林檎で良いのが入ったからリンゴジュースが凄くお勧めだよ?」


はい、っと笑顔で渡してくるビンを受け取り、御代を聞くとオレンジジュースと同じ10Zとの事だったので硬貨を渡し、コルクを抜き煽る。


「これも、美味いな。先日のオレンジジュースも美味かったが、それに劣らぬ美味さだ」

「あ、あははははは、そう、かな?」


褒められ慣れてないのか、顔を真っ赤にして明後日を向いているメイを眺めながら、タコスを頬張り、リンゴジュースを煽る。


林檎特有の甘みだけでなく、丁度良い酸味が有り、林檎をそのまま潰しているのだろう、果肉の食感も好みで、個人的趣向としてはオレンジジュースも捨て難いが、こちらの方が好きだ。


「お兄さんそんなに喉渇いてたの?」

「朝からリンバスに潜ってな、最低限の水分摂取しかしてないのも有ったが、少し緊張してたんだろうな、自分でもここまでガッツくとは…」


一気に飲み干してしまった私を呆れた目で見ていたメイにそう告げながら、空き瓶を返し、もう一本頼む。


「お兄さん、シーカーなんだ…見えないなぁ~」

「武器屋の親父にも言われた、『そんな細い腕で剣が振るえんのか?!』とな、御代だ」


現在は法案を守る為、武器防具は一度宿屋に置いてきている為丸腰だから尚更だろう。

硬貨を渡しながら、そう思う。


「今日が初陣だったからな、私もどうなるものかと思っていたが、なんとか成ったよ」

「そっか、大丈夫だった?怪我とか無かった?」

「油断して、一発良いのを貰ったがそれ位だな、浅い階層と言うのもあるが…」


―まぁこれからも何とか成るだろう―そう続けようとした私の言葉は、メイの予想外の行動に消し去られる。


「ちょ!?怪我?!怪我したの!?何処よ!大丈夫なの!?見せなさい!」

「ぉ、ぅぉ?ぇ?まて落ち着け」


何をどう思ったのか突然、私に詰め寄り、体中を慌しく確認しようとするメイの魔の手から慌てて距離を取る。


「ちょっと!なんで逃げるのよ!?」

「はぁ…怪我は魔法で癒す事が出来るくらいの深さだったから問題ない、もう塞がってる」


ほらな?とジャケットの前を閉じて隠していた、Tシャツの爪あとを見せると、どうにかメイは落ち着いてくれたらしく、大丈夫なの?と再確認するだけに留まった。


「ああ、大丈夫だ。心配してくれてありがとう」

「あぅ…大丈夫なら、良いよ。でも気をつけてね?」

「私も、死にたくは無いからな、気をつけるさ」


取り乱しのが恥ずかしかったのだろう、上目遣いでこちらを伺ってくるメイに笑いかけ、約束する。それから暫く話し、仕立ての良く、それでいてリーズナブルな服屋を教えて貰い別れた。


「私!火曜日以外はここか、門の所でお店開いてるからきてね!」

「ああ、また来るよ」

「ぜーーーーーたいだから!」



そんな風なやり取りをしながら、メイのお勧めの服屋へと歩いていく。

















さて、今回は短くなりました。ここが分岐点となるというか…なので取り合えずこの時点でUPしました。


分岐点というのは、このままオリジナルで行くか、二次創作として登場人物を出すか…。


良ければご意見ください。


二次創作とするなら既に作品は【リリカル】なアレに決まっていますが、悩んでいる所です…。

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