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俺の悪魔  作者: モンチャン
7/15

7 悪魔

悪魔



今日も、いつも通りに二人で朝食を済ませ、愛妻弁当を持ってユタカが出掛けた。


ユタカが出掛けると、みすずは洗濯と部屋の掃除。


適当に昼食を済ませ、庭の雑草取りをして、夕食の買い出し。


いつもは、夕食を準備して、ユタカを待つ。



今日は違っていた。


ユタカが飲み会に出るという。

下戸のユタカが・・・



やっていなかった「歓迎会」をやるらしい。


当然、本人の希望ではない。

周りの人間が酒を飲みたいだけである・・・費用は会社持ち?



行きは車で出掛けた。

帰りは?


飲んだ場合の帰宅方法は「運転代行」か「タクシー」である。



運転代行・・・結構金額が高いし、運転が雑なのか傷を付けられたり、ぶつけられたりしまうこともある。

助手席に車の持ち主が乗っているのだが、酔っ払っているので、次の日にシラフになって驚く事になる。



歓迎会の費用は会社が殆ど負担するが、帰りのタクシー代や運転代行費用は個人持ちである。



ユタカはバスで仕事先に行ったことがない。

明日の朝、ユタカがバスで出掛けるのが大変そうなのが気になった。

みすずは優しい?

そして、運転代行費用・・・勿体ない。

みすずはケチなのである。



そういう訳で、みすずが1次会が終わった頃にユタカを迎えに行く事になった。

みすずの運転代行である。





みすずの昼間は、例の維持管理の日以外は、パソコンをいじっている。


多少仕事をしている。

悪魔への上納金の入金管理である。






人間界に送られる前の教育中の悪魔ではなく、悪魔で人間に憑依していない者がいる。

殆どが悪魔界の幹部である。


大魔王を別にすれば、殆どの幹部悪魔に名前がついている。

「教育担当」、世界各地の「地域担当」、あと「悪魔の館維持管理担当」等である。

勿論、「悪魔の館維持管理担当」はみすずである。



ただ一人?人間界に、人間に憑依していない悪魔がいた。

「悪魔ナンバー 0123456799」、みすずと同期の男型悪魔である。

みすずと仲良しではないが、一緒に授業を受けていた。



この「悪魔ナンバー 0123456799」は、何故かコンピューターに造詣が深く、自分で勉強していた。

みすず、「悪魔ナンバー 0123456789」と同じく真面目、悪魔界の出来損ないである。



教育担当に人間界に送られたが、送られた相手もコンピューターを扱う人間で、仲良くなってしまった。

「悪魔ナンバー 0123456799」は自己流であったが、パソコンの扱いが上手で、何度も褒められてしまった。


人間に憑依しようと思った悪魔が3回褒められると、憑依する能力がなくなってしまう。

「悪魔ナンバー 0123456799」もそのくちだった。


相手の人間の名前はヤマトという。


ヤマトが「悪魔ナンバー 0123456799」に名前を聞いた。

「アクマ」と答えた。

悪魔なので悪魔と答えたつもりであった。


ヤナトは言った。

「これから、ハッカーで金を稼ごうと思ってるんだ。 アクマって名前は最高にピッタリの名前だな。」

細かい事は気にしない男であった。



アクマはヤマトと気が合った。

ヤマトはおおらかな男で、ヤマトとの同居はスンナリ決まった。

二人でハッカーをやることになったのである。



アクマはヤマトのお蔭で人間界で金を稼げるようになった。


しかし、派手な行動で目立ったのか、外に一人で食事に行った時、ヤマトは暴力団に襲われ、あっけなく殺されてしまった。



アクマも暴力団に襲われたのだが、元は人間ではなく悪魔である。

暴力団如きに殺されるタマではなかった。



仕方なく、それからは一人でハッカーを続けていた。




人間界にいて、人間に憑依していない悪魔はみすずとアクマの二人である。


みすずは大魔王と教育担当のお墨付きである。

週3回は悪魔の館に出勤?していた。



ただ、大魔王も教育担当もアクマの行動が読めなかった。

人間界、それも場所は日本の東京にアクマは住んでいた。



みすずにアクマの調査をする依頼が、パパとママ、大魔王と教育担当からあった。


自分達でやるのが面倒臭いのが本当の理由だったが、真面目なみすずは、パパとママに無理矢理調査を押しつけられたのである。


ただ、二人からは、調査してアクマが悪魔界に災いを及ぼすようなら、処分しろとの命令も受けた。

非情である。

悪魔だから・・・




みすずがママ、教育担当の水鏡で確認すると、アクマの居所は直ぐに分かった。

新宿の近く、初台のマンションに住んでいた。



みすずはママ、教育担当に提案してみた。

「ママ、悪魔界もデジタル化しましょうよ。 もう、水鏡なんて古くさいじゃん!」


「そうね。 みすず、何か良い案はあるの?」


「新宿に住んでる「悪魔ナンバー 0123456799」、人間界でハッカーしてるんだって。 こいつにデジタル化をやらせましょうよ。」


「う~ん、名案ね。 あの子、パソコン関係だけはずば抜けて出来が良かったのよね。」


流石、教育担当、 変わった生徒だけは記憶に残っていたのである。



ママのOKを貰って、みすずは初台に現れた。



アクマはハッカーである。

食事の買い出し以外では常に家にいた。


みすずはドアのチャイムを鳴らした。

いきなり部屋の中に入るのは失礼だからである。



インターホンからアクマの声がした。

「どなたさんですか?」


みすずが答えた。

「「悪魔ナンバー 0123456799」さんですよね。 同期の「悪魔ナンバー 0123456789」です。」


こう言われては、「悪魔ナンバー 0123456799」、扉を開けないわけにはいかなかった。


「悪魔ナンバー 0123456789」、みすずはサッと部屋の中に入った。

いくら東京でも、隣近所に悪魔だと知らせない配慮である。



みすずはママの水鏡でアクマの行動パターンは掌握していた。

「儲かっていないようですね?」


「あまり頑張って働いても、つまんね~んだよな。」


「そんなんじゃ、家賃も払えないじゃないですか?」


「ああ、毎月、カツカツだよ。 俺が悪魔でなかったら、餓死してるだろうな。」



「どうです。 悪魔界で仕事してみませんか?」


「はあ?」


アクマはみすずが何を言っているのか分からなかった。



「悪魔界もデジタル化をしたいと思ってるんですよ。 そうすれば、パパ、大魔王からあなたもブラックカードを貰えるし、好きな事が出来ますよ。」


アクマにみすずの提案を拒否する理由はなかった。




そういう事で、みすずはアクマを連れて、大魔王の部屋に行った。


「パパ~! 「悪魔ナンバー 0123456799」を連れてきたよ~!」


大魔王の頭の中は「?」でイッパイだった。


「ねえ、パパ、悪魔界もデジタル化しましょうよ。 丁度良いヤツがいたので、こいつを「デジタル担当」にしましょ!」



みすず、強引である。


パパ、大魔王はみすずに甘い。

直ぐにOKを出してしまった。



そんな感じで「悪魔ナンバー 0123456799」は、「デジタル担当」になった。


「アクマ」という名前は紛らわしいので、大魔王に名前を付けて貰った。

「ツトム」という名前になった。


大魔王曰く、「シッカリ務めろ!」という事らしい。

悪魔なのに・・・



ツトムは、楽しく仕事をした。

人間界にいる時の様に、しがらみはない。

一番嬉しいのは、お金を考えて仕事をしなくても良いことである。

のびのびと、自分の思うようなシステムを構築した。

別に「悪魔的」である必要はない、使い易いシステムを作れば良いので有る。


大魔王、ツトムの仕事ぶりを気に入った。


教育担当が一緒に行ってくれないときは、ツトムを連れてホテルのディナーに行った。

ツトムが初台に住んでいるので、都合が良かった。


ツトムのマンションが初台なので、オペラシティのJJ焼き肉店にも行った。


この店へは、教育担当も連れて行った。

教育担当は、焼き肉も好きだった。

当然、高級焼き肉が・・・


オペラシティからの景色は良いのだが、教育担当は「花より団子」で景色などには興味がなかった。

大魔王は、自分に話を合わせてくれるツトムが好きだった。




まあ、そんな訳で、幹部クラスの悪魔にはパソコンが支給された。



悪魔界の財産管理は大魔王の仕事である。

特に、悪魔への上納金の入金管理は重要である。


今までは、各地域担当から「紙」で書類が提出されていた。

皆、いい加減で、2~3ヶ月に1回提出されれば良い方だった。


大魔王は面倒くさがり屋である。

各地域の合計金額の足し算しかしなかった。


これからは、各地域担当が入力した数値が画面に出てくる。

財産管理が瞬時に可能となった。



逆に各地域担当は、上納金の入金具合で、大魔王から文句を言われる事になってしまった。


ただ、伊達に大魔王ではない。

権力を笠に着て、威張り散らしたりしない。


上納金が下がった地域については、親身に相談に乗っていた。


大魔王は「優しい悪魔」なのである。


だから、幹部の悪魔で大魔王を嫌いなヤツはいなかった。


払いの悪いマフィアやヤクザ、政治家に対しては、大魔王が「取り立て悪魔」を貸し出して、徴収していた。




日本の悪魔の地域担当は、ママ、教育担当である。


ママは教育の指導等で忙しい。

人間界に送る悪魔の最終決定もママが行っていた。


仕方がないので、みすずが日本の悪魔上納金入力管理をする様になったのである。




みすずは、悪魔の館の維持管理で出掛けない時は、家でパソコンをいじる事となった。


家にいる昼間、みすずは一人ではない。

ワンコのタロウとニャンコのクロがお邪魔している。


ワンコのタロウは、お散歩以外は「へそ天」でお昼寝である。


ニャンコのクロはパソコンをいじっている。

パソコンが温かいというだけでなく、ネットサーフィンくらいは楽勝なのである。


試しにみすずがクロに、上納金入金管理システムの見方を教えてみた。

直ぐにクロは、上納金の数値が芳しくない部分を探し当て、みすずに報告した。


「ここの政党からの上納金が減っている。 調べてみた方が良いんじゃないか?」

傍から見れば、猫がディスプレーにお手々を当てて、ニャオニャオと言っているだけにしか見えなかった。


「流石、クロ! 今度、チャオ○○、買ってあげるね。」


チャオという言葉が聞こえたタロウは、直ぐに起き上がってみすずにおねだりした。

「お姉様~! チャンとお留守番するから、○○チュール・・・」


「はいはい、タロウにも買ってあげるからね。」



そんな感じで、タロウとクロに留守番を任せて、みすずは出掛けることにした。

玄関は鍵を掛けたが、庭の方は開けたままである。


ワンコのタロウが留守番しているところに入ろうとする空き巣は、ハッキリ言って「命知らず」である。




服装は気取らない。

いつも通り、GパンにTシャツである。


ただ、シャツのサイズがちょっと小さく、丈も短いデザインで、胸の大きいみすずは「夫に見せる専用」と思っていた。

着てみて大きい鏡で確認すると、思いっ切り胸が強調され、お臍周りも丸出しであった。

東京の渋谷や原宿辺りなら、そんな女の子もいそうであるが、地方都市である。


止めておこうかと思ったら、ワンコのタロウとニャンコのクロに大絶賛されてしまった。

「お姉ちゃん! かっこいい! ヒュー、ヒュー!」

「かっこいい! 凄い! お姉ちゃん、ギャルになってるよ!」


褒められるのに弱いみすずである。

上に薄手のジャンパーを着れば問題無いと言うことにした。




格好付けの薄手のジャンパーを引っ掛けて、お出かけした。

襟にフードを入れられるタイプで、多少の雨も平気な、みすずのお気に入りである。

これは、バイパス沿いにある衣料専門店の、タイムセールの商品である。


荷物は革製のシュルダーバッグひとつである。




みすずは、折角、町に出掛けるので早めに出掛けた。

交通機関はバスである。


ユタカの現場に行くには、バスを乗り換えなければならないが、家から長野駅に行って、現場までノンビリ歩くことにした。

ついでに夕食も食べてしまおうとの魂胆である。


お留守番のタロウとクロの夕ご飯は、チャンと用意しておいた。

出しっぱなしにしておくと、ワンコのタロウは食べてしまうので、管理はニャンコのクロに任せた。




家の近くのバス停からバスに乗った。

通勤時間帯は15分に1本くらいだが、乗客の少ない昼間の時間帯は1時間に1本である。

みすずはチャンと計算してバス停に向かった。

バスの運行時間は、遅くなることはあっても、早くなることはないので、安心である。



乗車券を取って、空いていた一番後ろの運転席側に座った。


窓枠に腕を置いて、外を眺めていた。

ちょっと日が当たって車内が暑かったので、ジャンパーを脱いだ。

前のシートの背もたれででみすずの姿は肩から上しか出ていないので、楽しく外を眺めながら、ぼーっとしていた。



他人の運転で車に乗る、それも景色がよく見えるバス・・・お気に入りである。

観光バスではない路線バス・・・楽しい!

今度、信州新町行きの路線バスに乗ろうかな?


ボケッとしながらマッタリしていたら、終点のバスターミナルに着いた。

本当は、長野駅前で降りる予定であったが、気分が最高だったので乗り越したのである。



運賃を支払って、慌ててバスを降りたので、薄手のジャンパーは肩に引っ掛ける感じだった。

特に周りの人がみすずを見ている様子はなかったが、ジャンパーをシッカリ着た。



ちょっとスキップをするように、楽しく長野駅方面に歩いて行った。

良さそうなお店はないかな?

そんな感じで長野駅に着いた。



折角なので、トイレを借りた。

ジャンパーを脱いだので、トイレを出てから肩に掛けたまま暫く歩いてしまった。


結構視線を感じた。

女性の視線は「羨望」であった。

男性の視線は「羨望」より「スケベ」を感じた。


そうか、「夫以外に見せてはいけない!」、そう気付いて、シッカリジャンパーを着た。



結構駅が混んでいた。

何処かの政党のお偉いさんが来ている所為らしかった。

地元のお偉いさんも、顔見せの為に集まっていたのである。


みすずがその横を通り過ぎた時に、何故か騒がしかった。

政党のお偉いさんの秘書と思しき二人が後ろでもめている様だった。



「くっだらね~!」

そう思って駅から出て、夕食の美味しそうな店を探した。




プラプラ歩いていたら、善光寺に着いてしまった。

折角なので、大好きなお戒壇巡りをした。

暗闇は大好きだが、やっぱり旦那と一緒でないと楽しくなかった。

お賓頭盧さんの頭を撫でて、外に出た。



善光寺から裏道を下ってくると、飲み屋が多い。

思わずお店に入って、ビールでもと思ったが、みすずの今日の仕事?は運転代行である。

運転代行自身がアルコール類を飲むわけにはいかない。

「我慢! 我慢! 我慢!」と3回唱えて諦めた。



流石に時間が有り過ぎる。

長野県庁に歩いて行く。


みすず、健脚である。

そのお蔭で太らない・・・?



県庁の駐車場近くで、駅で見かけた何処かの政党のお偉いさんご一行とすれ違った。


歩き回っていたので、ジャンパーを脱いで、袖を腰で縛ったままだった。

何故かチラチラ見られている気がしたが、みすずの目的地は、少し先の裾花川の河原である。

無視して先を急ぐ。



河原に降りる階段がある。

県庁から直ぐである。



両手を広げて、深呼吸。

夕方に近いが、天気も良いし、気分最高である。


今の家も犀川に近いが、川幅が結構ある。

このくらいの川が丁度良いな。

お気に入りである。


こっそり、魚でも捕まえてクロのお土産にしようと思ったが、持って帰るまでに魚が傷みそうなので、これも我慢!


河原に座ってボーとしている間に、夕暮れとなった。




ユタカが担当している現場は、飲み屋街の権堂の近くである。

車を停めている駐車場もその近く。

今日の歓迎会の会場も権堂の中の1軒である。



みすずが権堂の近くを歩いていると、顔見知りがいた。

初めて長野に来た時に、ユタカの住所を教えてくれた不動産屋のお姉さんである。


「あら、久しぶり。 あの後、どうだった?」


みすずはこの不動産屋のお姉さんに、「ユタカの婚約者」と言ってしまった。

まさか、本当に結婚するとは思わなかったのである。


「結婚しました。」


「まあ、おめでとう! 折角会ったんだから、夕食、奢らせて。」



お姉さんの行きつけのお店に行った。

「乾杯はビールで良い?」


「ご免なさい。 今日、旦那さんが飲み会で、私が運転代行なんです。」


「まあ、仲良しね・・・ じゃあ、飲めない分、沢山食べてね。」


いつも、同じ人とばかり喋っている。

同じワンコやニャンコと喋ることが多いが・・・


不動産屋のお姉さんと色々喋って楽しかった。



スマホの時計を見ると、良さそうな時間になっていた。


「本当にご馳走になって良いんですか?」


「大丈夫よ。 領収書、貰っちゃうもん。」

お姉さん、ちょっと飲み過ぎで、本音が出てしまった。


「じゃあ、安心してご馳走になります。 次は私がご馳走しますから。」

そう言って、みすずはお姉さんに手を振ってお店を出た。




みすずはスマホを持つ様になった。

パソコンと同じ時である。


悪魔の幹部クラスに支給された。

パソコンと連動して、悪魔の情報管理状況を確認出来る様にである。



1件、情報連絡が入っていた。

何と、発信者?はニャンコのクロである。


みすずは内容を確認して、ユタカが飲み会をやっているお店の近くに来た。

スマホは鞄に入れなくても、用事が済むと消えていた・・・便利である。



あまり人通りの多いところは、せわしなくて好きでは無い。

みすずは、あえて人通りの無い裏道に入った。

薄暗い裏道である。

ただ、みすずは暗闇でもよく見えるのである。

悪魔だから・・・




その悪魔の腕を掴む者がいた。


「おい、姉ちゃん! 立ちんぼかい?」

「うちの先生がお前を気に入ってよ! 長野駅でも、県庁前でも、お前を見て気に入ったんだとよ。」


みすずは言った。

「人を見て、ものを言いな!」

「こんな人通りの無いとこで、商売するバカがいるかよ!」


もう、みすずでは無かった、「悪魔ナンバー 0123456789」になっていた。


深い濁った沼の底から湧き上がってきたような、オドロオドロしい太い低い声だった。



その時点で気付けば良いものを、男は更に話を続けた。


「一晩で10万円! 出すんだとよ。」

「特にお前のオッパイが気に入ったらしくてよ、オッパイでいかせてくれたら100万出しても良いって言ってたぜ。」


くだらない下卑た話を男は続けたが、みすずは聞いていなかった。



何故、みすず、「悪魔ナンバー 0123456789」がアッサリ腕を掴まれたのか?


「悪魔ナンバー 0123456789」の意識は10mほど離れた、禿げのスケベジジイに向かっていたのである。



「悪魔ナンバー 0123456789」は、腕を掴んだ黒っぽい背広ネクタイのガタイの良い男に言った。

「お前、「悪魔ナンバー 0345678901」だな。 相変わらず周りが見れねえバカだな。」


男は掴んだ手を離した。

本能的に分かった・・・相手が悪過ぎる。

男の心の中に入り込んだ悪魔が、今の状況を理解したのである。


男も、心の中に入り込んだ悪魔もそこまでだった。

「悪魔ナンバー 0123456789」が両方に当て身をくらわせていた。



男の胸ぐらを掴んだまま、「悪魔ナンバー 0123456789」はスケベジジイに近付いた。


薄暗い裏通りである。

男が若い女を連れてきたように見えたのかもしれない。



スケベジジイの前に男を投げ捨てると、今度はジジイの胸ぐらを掴んだ。


60歳を越えたジジイだが、180cmを越える身長に、100kgを軽く越える体重。

昔はラグビーでならしたのであろうが、今は相撲取りもびっくりの「ブタ」である。

それを軽々と持ち上げた。



ニャンコのクロから細かい情報が送られてきていた。


スケベジジイは、所属する政党の「金庫番」と呼ばれている事を。

このスケベジジイの中にいる悪魔が、悪魔の上納金担当だと言う事を。


そして、上納金を誤魔化して私腹を肥やしている事を!



ジジイの周りにいる背広の男達は、立ったまま気を失っていた。

みすずが、目だけでぶっ飛ばしたのである。

赤く光った目で・・・


ただ、ジジイの後ろにいる第一秘書を除いては。



ジジイは声を振り絞って言った。

「な、何とかしろ!」


第一秘書は言った。

「先生! お久しぶりです。」


第一秘書はジジイに向かって「先生」と言ったのではない。

ジジイは何を言っているのか分からなかった。


「「悪魔ナンバー 0234567890」、久しぶりね。 あなたが付いていてこのテイタラク、どういうこと?」


「すいません。 このジジイとそこに転がってるバカが結託して好き放題をしてしまいました。」

「私の力不足です。」


「今度からは、私かママ、教育担当に相談しなさい。 いいわね! パパ、大魔王に言うと面倒臭くなるから・・・ ね! そうしなさい! 」


「はい、先生。 有り難う御座います。」




みすず、「悪魔ナンバー 0123456789」は優秀である。

結構前から、教育担当が忙しいとき、代わりに授業を担当していた。

悪魔の館の維持管理の合間に、今でもママ、教育担当の代わりをしている。


スタイルは変わらないが、顔が違う。

みすずの時は、顔を可愛くしているのである。

ママ、教育担当の代わりに授業をしているときは、元に戻る。

恐ろしく美人であるが、優しさはない。

触ると凍傷になりそうな冷たい顔になるのである。


滅茶苦茶スパルタで、言う事を聞かない生徒は、平気で鞭で叩く。


授業を欠席しようものなら、見つけ出して身体を荒縄で縛り上げ、授業中「逆さ吊り」にされる。


文句を言う者はいない・・・悪魔だから



ただ、人間に憑依してから「SOS」を出すと、瞬時に現れ助けてくれるのは「悪魔ナンバー 0123456789」なのである。



殆どのIT企業の経営者や上層部に憑依した悪魔は、みすず「悪魔ナンバー 0123456789」の生徒である。


みすず「悪魔ナンバー 0123456789」の授業は厳しいが、面倒見は良い。

特に金銭面で、みすず「悪魔ナンバー 0123456789」の援助を受けなかった者はいなかった。



若手の悪魔の生徒のなかには、「悪魔ナンバー 0123456789」が本当の教育担当だと思っている者もいるのである。




「悪魔ナンバー 0234567890」は珍しく真面目?な悪魔だった。

「悪魔ナンバー 0123456789」は、「悪魔ナンバー 0234567890」が悪魔の幹部に選ばれると思っていた。


しかし、教育担当が日本からの悪魔の上納金を集めやすくするする為に、スケベジジイの第一秘書に憑依させてしまったのである。




泡を吹いて、気を失ったスケベジジイを地面に転がしたとき、背広ネクタイのガタイの良い男が復活した。

止めれば良いのに、「悪魔ナンバー 0123456789」に襲いかかった。


みすず、「悪魔ナンバー 0123456789」、同じ失敗はしない。

背広ネクタイのガタイの良い男、「悪魔ナンバー 0345678901」が建物の壁に叩き付けられた。



「懲りない野郎だな。 2度目は無いんだよ!」

「悪魔ナンバー 0345678901」は、みすず、いや「悪魔ナンバー 0123456789」の生徒ではない。

生徒であれば、こんなに出来が悪くはならないし、恐ろしくて「悪魔ナンバー 0123456789」を襲おうとは思わないのである。



みすず、「悪魔ナンバー 0123456789」は右手を横にはらった。


壁に叩き付けられ、宙に浮いたままの男の身体から、頭だけがゴロリと地面に転がった。


みすずが指を鳴らすと、首から上が無くなった男の胴体が、ジュブジュブと音を立てながら潰れた。


「自分の最後を見るのは、どんな気持ちだい?」

喋っているのはみすずではない、本当の悪魔である。


首から上の頭だけになった男の目からは、血の涙が流れていた。



「さあ、仕上げ!」

みすずがもう一度指を鳴らした。

潰れた男の胴体に向かって、男の頭が壁にめり込むようにぶつかっていった。

グシュっと言う鈍い音と共に、男の頭は潰れ、片方の目玉が地面にこぼれた。



「お片付け!」

みすずがそう言うと、潰れた男と「悪魔ナンバー 0345678901」の痕跡は、綺麗さっぱり、残っていなかった。




本来、悪魔は人間を殺さない。

悪魔のように直ぐに湧いて出てこないからである。

育つのに時間が掛かるからである。


今回、みすずは、憑依していた悪魔もこの男も許さなかった。


「私はユタカのものなのに・・・ 私に触りやがって!」


みすずが、男も憑依した悪魔も両方処分する・・・当然の行為である。




みすずが第一秘書に言った。

「後は、お前が何とかしなさい。」

そう言うと、「悪魔ナンバー 0123456789」は完全にみすずに戻って、権堂の旦那が待つ店に、スキップしながら歩いて行った。





第一秘書はスケベジジイを起した。


壁にもたれさせ、みすずの言ったことを伝える前に、脅しを掛けた。


「人間のあなたも、憑依している悪魔も良~く聞いてください!」


「いいですか、 あなたが夜の相手をさせようとしていた女性は、悪魔界のナンバー3です。」

「力も強いですが、魔法に関しては悪魔でナンバー1と言われています。 そこらの国の軍隊では相手になりません。」


「私がいつも止めてくれと言っていた通り、上納金を誤魔化しているのを調査していたんですよ。」


「あなたの腰巾着のバカは、先生に潰されてしまいました。」

「首を切られ潰された動画も用意してあります。 後でホテルでテレビをつければ、それが映し出されますので・・・」


「私も先生があんなに残酷なのには驚きました。 残酷さでも悪魔界ナンバー1ですね。」



「これからの話は、先生があなたに伝えるように言っていた事です。」


「今回、あたしに夜の相手をさせようとしたペナルティーとして、今、お前の金庫にある金は全て没収する。」

「これからは、上納金をくすねて女などに使ったら、男○○をぶった切ってやる。」

「人間のみすずとして暮らしているが、私や私の旦那に手を出したら、即刻お前を潰してやる。」



第一秘書は、みすずの言葉に注釈を加えた。


「特に最後の「旦那」の件ですが、わざと言っているんだと思います。」


「先生は大魔王をパパ、教育担当をママと呼んでいます。 二人のお嬢さんかどうかは勝手に想像してください。 私も命が惜しいので、迂闊なことは言えません。」


「あなたの様な各地域の悪魔上納金担当を潰す、殺すのには理由が必要なんですよ。」

「大魔王のお嬢さんやその旦那さんを襲おうと考える・・・ それだけの理由があれば、お嬢さんがそいつを潰しても誰も文句は言えません。 お分かりですね。」



本当は、みすずの伝言はもうひとつあった。

「スケベジジイの心臓の血管、冠状動脈に魔法の針を刺しておいたの。 女遊びをさせて、たばこを吸わせれば、血管詰まって、心臓、止まっちゃうから・・・」

「その時は、あなたが選挙に出るのよ。」


これについては第1秘書、、伝えなかった。






みすずがお店の前で待っていた。

同僚に抱えられて、お店からユタカが出て来た。

「すいません、奥さん。 ビールをコップ半分と、ハイボールをグラスに5cm位飲ませただけなんですが・・・」


「いいえ~! うちの人、本当に弱くって・・・」


駐車場までユタカを運んで貰った。


「有り難う御座いました。」

そう言ってみすずは、車を出発させた。


夜も9時近くなると車の数は少ない。

直ぐに家に着いた。



玄関の電気は点いていた。

ワンコのタロウがちゃんとスイッチを押していた。


鍵を開けると、ワンコのタロウとニャンコのクロのお出迎えである。



ユタカをベッドに転がすと、タロウとクロは帰っていった。

「お邪魔したら、悪いもんね~!」・・・そう言いながら。




ユタカと二人になった。

早速、ユタカを素っ裸にした。


「えへへへへ。 オッパイでいかせたら100万出しても良いんだって。 試してみよ!」


みすずの夜は、これからである・・・?


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