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俺の悪魔  作者: モンチャン
2/15

2 出来損ない-2

悪魔には、尻尾が生えていたり、角があったりと、色々設定されている様ですが、実際はそうだろうか?


人間だって、進化して尻尾が無くなり、毛むくじゃらだった身体がのがスベスベに変わっている。

たまに、濃い人もいるが・・・



悪魔だって、進化して尻尾が無くなり、角も無くなったのではないのかな?


元々、見た目が人間に近かったのだから、同じ様な見た目になってもおかしくない。



そういう訳で、登場する悪魔の見た目は、人間と変わりません。



出来損ない-2



大魔王と教育担当が帰って来た。



部屋は大魔王の部屋である。


殺風景な部屋の筈であった。


教育担当の部屋のように模様替えが行われ、素敵な部屋に変わっていた。


二人は部屋から出て、抱き合った。




大魔王と教育担当の部屋は隣り合っている。


城のような悪魔の館の最上階である。



他にも沢山の部屋があるが、殆どの悪魔が太平洋戦争で消滅したので、空き部屋である。


地域担当の悪魔達は、通いである。

近くには住んでいるが、同じ場所では無い。



一人?例外がいる。

「悪魔ナンバー 0123456789」である。


湧いて出てから時間が経っていたので、悪魔の館に移り住んだ。

移り住む条件として、悪魔の館の維持管理を行っている。


仕事は多岐にわたるが、楽勝である。

魔法で一発だから。



授業を真面目に受けて、自分で勉強もしていた。

多分、魔法については「悪魔界一番」である。


悪魔なのに真面目なのである。


悪魔で真面目は悪いことであるが、大魔王も教育担当も便利なので許している。






「悪魔ナンバー 0123456789」が、屋敷内を点検していた。


丁度、最上階の廊下に差し掛かった時である。

大魔王と教育担当が人間界のホテルから帰ってきたところだった。



大魔王と教育担当が廊下の真ん中で抱き合ってキスをしていた。



「悪魔ナンバー 0123456789」は、わざと大きく咳払いをした。



大魔王と教育担当は離れたが、お互いの手は勝手に繋がっていた。




「悪魔ナンバー 0123456789」は表情を変えずに二人に言った。

「貸しにしておきます。」



何かイヤミを言われた方が気が楽である。

「貸しにしておきます。」

恐ろしい言葉である。


後で何を要求されるか分からない。




自分の部屋に戻ろうとしていた教育担当は、大魔王の部屋に大魔王を引っ張った。


「まずいんじゃない! サッサと「悪魔ナンバー 0123456789」を人間界に送っちゃいましょうよ。」


「そうだね。ハニー。」


もう、昔の教育担当ではない。

こんな言葉を言われたら、大魔王でも殴っていた筈である。


「もう、ダーリン! 愛しているわ。」



また二人抱き合ってキスをしてしまった。



ノックも無しに扉が開いた。

「悪魔ナンバー 0123456789」である。


「まだ、いらしたんですか? 早朝会議が始まりますよ。」



意地悪そうな顔で「悪魔ナンバー 0123456789」が言った。

「貸しが増えましたね。」







早朝会議である。

特に議題は無い。

各地域担当からの状況説明くらいである。



大魔王と教育担当は、別の話で持ち切りである。

「悪魔ナンバー 0123456789」を人間界へ送り込む話である。



悪魔が集まっている会議である。


真面目に聞いている悪魔などいない。


しかし、ロシア担当が大魔王に質問した。

どうでも良い内容だった。




大魔王は質問もその前の話も聞いていなかった。

大魔王はそれどころではなかったのである。


「悪魔ナンバー 0123456789」を何とかしなければ。



ロシア担当はひねくれた悪魔である。

わざとらしく、大魔王を皮肉った。

「人には話を聞けという癖に、自分では聞かないんだ。 偉いヤツは良いよな。」



大魔王は、苦虫を噛み潰したような顔をした。



いつもは「それ見ろ!」と言わんばかりの顔をする教育担当が、大魔王を援護した。


「うちのひと、イヤ、大魔王は早朝会議の意義について考えているのよ。」

「大体、悪魔なのに、人間みたいに朝っぱらから会議なんておかしくない?」



殆どの出席悪魔から賛同の声が上がった。


「それで質問の内容は何なの?」


「い、いや、大した事はないんで。」


「じゃあ、質問なんて止めなさいよ。 朝っぱらからイライラしてんだから。」



教育担当のイライラのお蔭で、早朝会議は終わってしまった。

イライラの原因は「悪魔ナンバー 0123456789」である。



大魔王と教育担当は、大魔王の部屋にいた。


教育担当が言った。

「部屋が違うから、廊下でキスをしてしまうのよ。 壁をぶち抜いて、一部屋にしちゃいましょうよ。」


「おう、名案だな! じゃあ、早速。」

そう言って大魔王は二人の部屋の壁を取り去った。


魔法で一発である。



壁を取り去ったまでは良かったが、教育担当の部屋は掃除のチェック中だった。

当然、掃除の担当者は「悪魔ナンバー 0123456789」である。



当然、「悪魔ナンバー 0123456789」はこう言った。

「また、貸しが増えましたね。」





教育担当は、大魔王に耳打ちした。

「もう、一刻の猶予もいらないわ。 あいつを人間界に送っちゃいましょう。」


目の前にいた「悪魔ナンバー 0123456789」に、教育担当は言った。


「1時間後に、あなたを人間界に送ることになったの。 早朝会議で決まったのよ。 支度をしておきなさい。」



何も言わずに出て行くと思ったら、「悪魔ナンバー 0123456789」はこう言った。

「この館の維持管理は、もうしなくても宜しいんですね?」


「勿論、大丈夫よ。 サッサと行きなさい。」



「悪魔ナンバー 0123456789」が、部屋を出ていったのを確かめると、大魔王と教育担当は抱き合って喜んだ。

「これで、好きな時にあなたとイチャイチャ出来るわ。」

「じゃあ、早速・・・」

「「悪魔ナンバー 0123456789」がいなくなってからよ。 もう、大魔王ったら、 せっかちなんだから・・・」






数ヶ月前の情報で「悪魔ナンバー 0123456789」の送り先を決めていたのである。

現在がどうなっているかなど、確認はしていなかった。

とにかく「悪魔ナンバー 0123456789」を送り出して、厄介払いをしたい、それだけで行動してしまったのである。






送り先は、長野県長野市・・・

権堂という飲み屋街がある。

その中にアパートがある。


悪運の強いヤクザが住んでいるアパートである。

5階建である。

ヤクザの部屋は404号室。


「悪魔ナンバー 0123456789」が404号室の前に現れた。




人間界に送られた。

悪魔にとっては就職である。


服装は、当然リクルート・スーツである。


勿論、リクルート・スーツの色は「黒」である。

悪魔だから。




悪魔なのに「悪魔ナンバー 0123456789」は律儀である。

いきなり部屋の中などには入らない。


チャイムを鳴らした。

何度も鳴らして、しぶとく待った。



誰も出てこなかった。



暫くすると、音がしたので管理人のおばあさんが現れた。


「悪魔ナンバー 0123456789」は、一歩下がって頭を下げて挨拶をした。


「この部屋の人はいないのでしょうか?」


「この部屋の人?」

「引っ越したわよ。」


「行き先は分かりませんか?」


「私はここの管理人になったばかりで、詳しい事は2軒先にある不動産屋に聞いておくれ。」

「もうすぐ、お昼休みになっちゃうから、早く行った方が良いよ。」


「有り難う御座いました。 直ぐ行ってきます。」



管理人のおばあさんは、「悪魔ナンバー 0123456789」が立っていた部屋の話をしたのである。


おばあさんに挨拶した時、「悪魔ナンバー 0123456789」は一歩下がったのである。


「悪魔ナンバー 0123456789」は足が長い。

まして大きく一歩下がったのである。


隣の部屋の前へ。




立っていた場所がずれた所為で、、おばあさんは「悪魔ナンバー 0123456789」が立っていた、405号室の事だと思ったのである。




「悪魔ナンバー 0123456789」はスーツケースを転がして走り出した。


昼食に出掛けようとしていた不動産屋にギリギリ間に合った。




「すいません。 2軒先にあるアパートの4階に住んでいた人の引っ越し先を知りたいんですけど。」


「お昼休みに出掛けるところだったわ。 丁度良かったわね。 引っ越し先もうちの物件なの。」

「引っ越した人とのご関係は? 近頃、個人情報とかうるさいのよ。」


「婚約者です。 新しい住所のところに行って、驚かしてやろうと思って。 えへへへへ。」

悪魔である。嘘は上手である。



「まあ、お幸せね。 はい、これが住所のコピー。」

「ちょっと、遠いわよ。」


「大丈夫です。 タクシーで行きますので。 有り難う御座いました。」




「悪魔ナンバー 0123456789」、人通りのない裏道で、住所を唱え指を鳴らした。


直ぐに「悪魔ナンバー 0123456789」は、ある一軒家の前に立っていた。




今日は日曜日である。多分、ターゲットはいる筈だ。


チャイムを鳴らした。



「は~い。 どなた様でしょうか? 新聞の勧誘は結構ですが・・・」


「違います。 あなたのところに一緒に住む為に来ました。」


「は~? 宗教の勧誘ですか? それなら扉は開けませんよ。」


「いいえ。 何と言ったら良いのでしょう?・・・ 私も初めてなもので・・・」



「知らない人のところに住むなんて、おかしいでしょう?」


「でも、あなたに追い出されたら、、あたし、行くところがないんです。」


「ちょ、ちょっと待ってね。」


ドアスコープで覗かれている。


「田舎なんだから、隣近所に聞こえるような大声で話さないでくださいよ。 引っ越した途端、変な噂は困るんですよ。」

言いながら、男は扉を開けて「悪魔ナンバー 0123456789」を家の中に入れた。




「悪魔ナンバー 0123456789」は、家の中を見渡した。

3部屋でキッチン付き。

キッチンは板の間で、少し広く、他は全て畳の部屋。


奥は寝室のようで、ベッドが置いてある。

ダブルベッドだった。


真ん中は居間の様な感じで、もう一部屋は洗濯物干し場になっていた。




キッチンのテーブルに、向かい合って座った。



「悪魔ナンバー 0123456789」が言った。

「あなたがワルのヤクザ屋さんですよね?」


「は? 何のことですか?」


「ほら、権堂とかいうところのアパートから引っ越してきたんでしょ?」


「あ~! あそこのアパート。」

「あそこ、ボヤ騒ぎがあって、一酸化炭素中毒で死んだ人がいたんだよね。」


「俺、隣の部屋だったんだけど、入居前だったから、変えて貰ったんだ。 事故物件の隣ってイヤじゃん?  一軒家でこんな田舎になっちゃったけどね。」



「じゃあ、あなたはヤクザ屋さんじゃないの?」


「死んだ人が、確かヤクザだって聞いたけど。 君はその人の知り合い?」


「そ、そう言う訳じゃないんだけど。 知り合いに頼まれて荷物届けに行っただけなの。」

「困ったなあ、今更戻れないし・・・」



人間界に送られた悪魔で、戻ってきた者はいない。

普通の悪魔は、直ぐ人間に憑依してしまうからである。




「お金は持ってないの?」


「一応、カードが使えるようになる筈なんだけど、まだ手続きが終わってないみたいなの。」

教育担当からカードは渡されたが、普通の悪魔は直ぐ憑依して、カードなど使う事はないので、本物かどうかも疑わしいのである。




「知り合いはいないの?」


「まあ、ひとりぼっちかな?」



「大変だね。 君さえ良ければ、カードが使えるようになるまで、ここに居てもらっても良いけど・・・」

この男は優しいと言うより、人が良過ぎるのかな?




「お兄さん! もしかして、恋人とかいたりします?」

「悪魔ナンバー 0123456789」は、ダブルベッドを見ながら言った。


「嫌なこと聞くねえ。 残念ながら、年齢イコール恋人いない年数ですよ。」


「そこのベッドは、不動産屋さんのサービスだって。 どうせ、売れ残りで処分に困ったんでしょ。」





「そう言えば、君は昼飯食べたの?」


「いいえ。 権堂のアパートから直接来たから。」


「どうやって来たの?」


「自分の力で。」


「結構距離あるよ。 健脚だね。」


「あ、ありがとう。」



「ねえ、そこに置いてあるのは、買ってきたもの?」


「ああ、車で買い出しに行ってきて、帰って来たら、直ぐに君が現れたってとこかな?」



「あたし、お料理、得意なんだ。」


「じゃあ、お願いしようかな。」


「直ぐ作るね。」


「悪魔ナンバー 0123456789」は、スーツケースからエプロンを取り出した。


料理は得意である。

人間界に送られた先でも、料理を作ろうと思ったのである。



初めての家なのに、調理器具の場所が全て分かっている。

食器の場所も。

悪魔だから?



「ご飯はもうちょっとで炊けるから、待っててね。」

ご飯は、既に炊飯器が頑張っていた。



ご飯が炊けた。

テーブルの上には、油揚げと青菜の味噌汁、メインは肉野菜炒めである。



「さ! 出来たわよ。」


二人で、「いただきま~す。」



「美味しいね。 料理が上手なんだね。」


「あ、ありがとう。」

「悪魔ナンバー 0123456789」、生まれて初めて褒められた。

嬉し過ぎて赤くなった。



「ねえ、名前は何て言うの?」


「え~と・・・」


「べ、別に言わなくても良いんだけど・・・」



「山田、 山田みすず。」



「山田」は、以前大魔王と教育担当が、ホテルで名乗っていたものである。

以前、教育担当の部屋の掃除のチェックをしているとき、机の上に領収書がそのままになっており、そこに記載されていた名前が「山田」だったのである。


「みすず」は、この家の居間に置いてあった「みすず飴」からいただいた。



「へ~、可愛い名前なんだね。」


「あ、ありがとう。」

また褒められた。



何度も褒められると悪魔はあることが出来なくなる。



「味噌汁も美味しい。」

「凄いね、プロになれるよ。」



3回も褒められてしまった。

悪魔のある能力が消えてしまった。

人間に憑依出来なくなったのである。



食事の後片付けを二人で終わらせ、コーヒーを飲む。



「苦いけど、美味しい~!」


「コーヒー、初めてなの?」


「は、初めてじゃなくて、久しぶりなの。」


本当は初めてだったが、嘘は上手である。

悪魔だから・・・




「お兄さん、お酒は飲まないの?」

以前、教育担当の部屋の机の上に、ウイスキーの特大サイズが置いてあり、ちょろまかして飲んだことがあった。


「悪魔ナンバー 0123456789」は美味しいと思った。

いける口なのである。



「僕は飲まないんだけど、君は飲むの?」


「た、嗜む程度よ。」

女性の「嗜む程度」は、「ザル」と言うか「バケツの底抜け」レベルの大酒飲みである。

「バケツの底抜け」は、ザルよりも抵抗が少なく、シコタマ入るがダダ漏れで、かなりの大酒飲みである。



「夕食に君の好きなもの買って良いから、ビールとかも買いに行こうか?」


「夕食はあたしが作るから、食材だけ買いましょうよ。」


「みすずさんは、家庭的なんだね。」




「悪魔ナンバー 0123456789」は、嬉しかった。

ヤクザなんかにくっつけられなくて、本当に良かったと思った。


もう憑依は出来ないが、何とかこの男と一緒にいられる様にしたいと思った。




買い物に行って、色々買い込んだ。

カートにかごを2個乗せたが、お酒も買ったので、満杯になった。



レジを通った後、精算機で試しに教育担当から渡されたカードを使ってみた。

スンナリ精算出来た。




教育担当は、いつも悪魔を人間界に送り出すとき、カードなど持たせなかった。


直ぐ憑依するので、カードなどいらなかったのである。



今回、「悪魔ナンバー 0123456789」は女型悪魔なのに、男に送り込んだ。

かなりのワルである。


もし、直ぐ憑依出来ない場合があるかと思い、お金を持たせようとしたが、日本のお金など悪魔の世界には用意していなかった。


直ぐに厄介払いをしたかったのと、面倒臭いのでカードを渡してしまったのである。


いい加減に、近くにあったカードを渡した。


大魔王や教育担当が使っているブラックカードとは思いもしなかった。




「ねえねえ、お兄さん! カード使えた。」


「良かったね。 でも、、お兄さんってのは何かイヤだな。」


「何て呼んだら良いの?」


「俺の名前、 ゆたかって言うんだ。 ユタカって呼んでよ。」


「良いわよ。 ユタカ!」


「うわ~、恋人に言われてるみたい。」


「ず~っと言ってあげる。 ユタカ!」


「うん。 みすず!」




二人仲良く、スーパーから家に帰ってきた。



冷蔵庫などに買ってきた食料品を入れ、居間でノンビリする。


「支払ったの幾らだった? 僕が払うよ。」


「大丈夫よ。 その代わり、ここに泊めてね。」


「まあ、君が良ければ、それで良いけど。」


「それで良いのよ、 ユ・タ・カ!」




一時でも恋人が出来たようで、ユタカは嬉しかった。

どうせ、長続きなどしないと思っていたユタカは、今だけだからと安易に考えた。



でも、みすずを好きになったら、別れるときに悲しくて辛いだろうと思ったら、ちょっと距離を置いた方が良いと思った。




そんな感じで、ユタカとみすずは一緒に住む事となった。


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