14 東京 (みすず)
やっと来ました、年に何回もない「13日の金曜日」。
悪魔の話なので、13日の金曜日から始めようと思いましたが、待ちきれずに、同じ13日の6月にスタートしてしまいました。
本当に存在するのか分からない悪魔。
実際は人間の方がタチが悪いのではないかと思う事から、悪魔は人間に憑依するとしてみましたが、話の方はそうじゃないパターンで進んでおりますが・・・。
東京 (みすず)
やっと金曜日。
みすず達は代休で3連休。
マリの方は、夫が出勤である。
いつも通りに起床して、朝食とお弁当を用意する。
マリはみすずの代わりに悪魔に館へ出勤する。
ロシア担当の仕事は、優秀な部下複数人がいるので、チェックだけで済むからである。
いつもみすずが作っているパパ、大魔王やママ、教育担当の分もお弁当を作った。
勿論、隣のおばあさんの分とワンコのタロウとニャンコのクロの分も忘れない。
みすずと同じで出勤日のお弁当は豪華である。
パパ、大魔王から受け取ったブラックカードを使うので、お金の心配はない。
夫とヒカルと三人で、一緒に朝食を食べる。
ヒカルはスプーンを持って食べる気まんまん。
夫が美味しそうに食べる、ヒカルも離乳食を好き嫌いなく食べる・・・マリの至福のひとときである。
マリがヒカルを抱っこして、夫を送り出す。
「行ってらっしゃい。 早く帰って来てね。」
光司はマリとヒカルにキスをして出掛けていった。
「ヒカルちゃん、パパにキスしてもらって良かったね~。」
ヒカルにそう言ったが、自分も嬉しかった。
玄関ではなく、庭の方からみすずの声がした。
「もう少ししたら、東京に行ってくるから。 マリ姉、仕事、お願いね。」
朝食の片付けをしようと思っていると、ワンコのタロウとニャンコのクロが現れた。
タロウは直ぐにヒカルと遊びだした。
流石?母親、テキパキと洗濯と掃除。
洗濯物を干していると、ニャンコのクロが一言。
「今日は、マリお姉ちゃんのとこで、仕事するね。」
クロはいつも通りにパソコンを立ち上げ、やる気満々。
ワンコのタロウは、ヒカルと一緒に大はしゃぎ。
そうこうしているうちに、みすずとユタカが出発の挨拶に来た。
「マリ姉、行ってくるから宜しくね。」
「マリさん、すいませんが宜しくお願いします。」
ユタカが丁寧に挨拶して、二人は出掛けていった。
マリは、隣のおばあさんにお弁当を届けに行った。
「妹のみすずが今日から東京に行きます。 お弁当とお茶、、ここに置いていくので召し上がってください。」
「まあ、マリさん、有り難う。 さっき、みすずさん、 元気に挨拶に来たわよ。」
「あの子、元気だけが取り柄で・・・」
「お姉さんは礼儀正しくて、妹さんは元気で、 本当に良い姉妹ね。」
「有り難う御座います。 仕事から帰ってきたら、お買い物に行ってきますから、必要なものが有れば言ってくださいね。」
どこまでも優しいマリである。
家に戻って、マリは出掛ける支度をした。
「じゃあ、行ってくるから、タロウは警備、クロはお仕事、 宜しくね。 お弁当はそこに置いておくからね。」
「タロウ! 時間になってから食べるのよ。」
マリ、玄関の鍵を確認し、庭の方のセキュリティはタロウに任せて、ヒカルを抱いてお弁当を持って出掛けていった。
マリの両手は塞がっていたが、マリが靴の踵をならすと消えていった。
マリ、直ぐに悪魔の館に到着。
門番が挨拶をして、みすずの部屋までお弁当を運んでくれた。
マリはヒカルを大魔王と教育担当の部屋に連れて行き、教育担当にヒカルを預けた。
「ママ、館の清掃に行ってくるね。」
そう言って、みすずの部屋に戻って、魔法で清掃開始。
直ぐに掃除機やモップが魔法で掃除を始めた。
魔法のプログラムが確立しているので、マリは授業の準備を始めた。
「さあ、今日はみすずのサポートじゃなくて、格闘技の授業だから嬉しいわ。」
マリ、やる気満々である。
事前に生徒達には連絡してあるので、マリの提案で新規に造った体育館で授業が行われる。
今日の授業内容の確認をする。
そうしている間に、魔法の館を掃除しまくっていた掃除機やモップが帰って来た。
インターフォンで、門番の若手を5人呼び出し、掃除のチェックをさせる。
チェックシートを回収して、パパとママの部屋に行く。
「パパ、ママ、ヒカルちゃん、授業に行ってきます。」
ママ、教育担当が言った。
「マリ、今日は格闘技の授業にしたのね。」
「はい。 パパもママも一緒にやりますか?」
パパ、大魔王、ヒカルと遊びたいのでそれどころではない。
「ママ、行ってくれば?」
「私だってヒカルちゃんと遊ぶんだから。」
そういう事で、マリは一人で体育館に行った。
魔法で一発の移動ではない。
準備体操をかねて、悪魔の館を一周する。
結構な距離があるが、授業の開始までは時間があるので、余裕である。
新調したジャージで、気分よく走る。
時々すれ違う警備の悪魔に手を振る。
そうしているうちに、パソコンの授業が終わった生徒達に追いついた。
「わ~、先生、カッコイ~! 」
「みんなも、有酸素運動すれば、スタイル良くなるわよ。」
生徒達、特に女子生徒は、マリは憧れである。
「は~い。 頑張って走ります。」
「駄目よ。 頑張らないの。 頑張ると続かないからね。」
「は~い。」
「ほら、男子は?」
「はい。 僕たちも頑張らないように頑張ります。」
マリと生徒達、体育館に到着。
生徒が全員整列した。
日直が声をあげた。
「 礼! 」
マリが言った。
「今日は型を教えます。」
マリが教えるのは一応空手であるが、色々な流派だけでなく、柔道やテコンドー等の格闘技の良いとこ取りである。
一般の格闘技と大きく異なる点が一つ。
一撃必殺!
相手を殺すための技である。
攻撃の型が50、防御の型が50、都合100の型がある。
ただ、防御と言っても守りと言うより攻撃としか見えない。
マリ。
「見本を見せます。」
壇上に上がったマリが、型を見せる。
「1 、 2 、 3 、・・・・・・ 、99 、 100 」
マリ、息一つ乱れない。
「さあ、みんな、始めるわよ! 1 、 2 、 3 、・・・」
生徒、みな予習をしてきているので、50人全員が舞を舞うようである。
後半はマリが型の番号を組み合わせ、二つの型を同時に行う。
「1と67 、 87と33 、 ・・・」
チャイムが鳴って終了である。
「みな、筋が良いわ。 勉強に疲れたら、型の練習、気分転換と運動不足解消よ。」
生徒全員。
「は~い!」
日直の「 礼! 」で終了となった。
「あと、みんな! ちゃんと食堂で、栄養のあるものを食べるのよ。」
マリとみすずの提案で、寮の近くに食堂棟が造られた。
折角造るのだからと、喫茶コーナーや運動施設や図書館も用意した。
出来の良い生徒は、希望すればそれぞれの施設で働くことも可能である。
マリはシャワーを浴びて、ヒカルの待つ大魔王の部屋に行った。
マリ、ヒカルを抱き上げると、オッパイをあげる。
大魔王がマリの胸を見ようとしたが、教育担当が瞬時にカーテンでマリ達を隠した。
大魔王。
「チっ! もう少しだったのに・・・」
大魔王が言い終わる前に、教育担当のビンタが飛んだ。
「娘のオッパイを見たいなんて、ドスケベオヤジ! 見たいなら私のを見な!」
教育担当、大魔王に胸を放り出した。
「ママ!」
そう言って、大魔王は教育担当の胸に吸い付いた。
「もう! パパったら、子供なんだから・・・」
教育担当、嬉しそう。
暫くすると、マリがカーテン越しに言った。
「お弁当、持ってきたんだから、お茶でも淹れてよ!」
大魔王に胸を弄られて喜んでいた教育担当、優しく大魔王を叩くと言った。
「はい、後は今夜ね。 良い子にしていたら、ご褒美もあげるわよ。」
「う、うん。」
直ぐに大魔王はお湯を沸かす準備をした。
大魔王の部屋の大きいテーブルで、3人がお弁当を食べる。
教育担当。
「マリ、 今日のお弁当はマリが作ったのね。 美味しいわ、腕をあげたわね。」
「いっつも、みすずと一緒にごはんを作っているから、上手になったわ。」
「ほら、美味しくて、パパ、泣いてるわ。」
「あ~、 ママ、 多分シシトウに辛いのがあったのよ。」
大魔王、次のシシトウは一口ではなく、端を囓って確かめていた。
「パパ、お昼は和食だったから、夕食はフレンチにする?」
「今日はイタリアンが良いな・・・」
「うふふふ・・・ じゃあ、、さっきの続きは例のホテルね?」
「楽しみだね~。」
マリ、毎度のことなので、聞いてもいない。
「じゃあ、お弁当箱、洗ったら帰るわね。」
サクサク、仕事を終わらせ、ヒカルを抱くと、マリは帰って行った。
勿論、ジイジとバアバにヒカルが手を振っていた。
「う~ん、ヒカルちゃん、可愛い~~!」
教育担当が言い終わる前に、マリとヒカルは消えていった。
家に帰って来たマリは、ワンコのタロウとニャンコのクロの頭を撫でる。
「ちょっと、隣のおばあさんのところに行ってくるわね。」
そう言って、ヒカルを連れておばあさんお家に。
「こんにちは~、 どうでした、今日のお弁当?」
おばあさん。
「今日のお弁当はマリさんの手作りね。 和食中心で美味しかったわ。」
ワンコのタロウも一緒に来ていて、ヒカルと一緒にお遊び。
その間、マリはお茶を淹れて、おばあさんとお喋り。」
マリ、聞き上手である。
暫くして、マリは買い物に。
折角なのでみすずのファットバイクで素っ飛んで行った。
ニャンコのクロ。
「姉妹だね~・・・」
ところで、みすずの方。
マリ達とは違って、中央道の方から東京に向かった。
薄曇りのオープンカー日和。
夫の運転で、快適に走る。
長野ICから入って、上信越道。
更埴JCTから長野道。
松本の手前の梓川SAで休憩。
売店等に寄らず、北アルプスを眺める。
取り敢えず満足して、長野道を進む。
岡谷JCTから中央道。
直ぐの諏訪湖SAで再び休憩。
トイレと釜飯を購入。
諏訪湖を眺めて、再び中央道。
左手に八ヶ岳を眺めながらひたすら進む。
勝沼手前の釈迦堂PAで、湯麺を食べる。
大月手前でユタカが聞いてきた。
「どうする? 富士山を回って御殿場から東名で行こうか?」
「折角だから色々回ろうよ。」
と言う事で、大月JCTから東富士道路。
須走までで、東名と繋がっていないのが残念だが、御殿場ICから東名へ。
有名な海老名SAに寄って、色々なお土産を購入。
土産なら何でも喜ぶと聞いていたので、長野土産は少なくなった。
東京ICで高速道路とお別れし、環8を北上。
そんなに一般道は混雑がなく、ユタカの実家に到着。
みすず、両手一杯にお土産を持って、母親の元へ。
「おかあさ~ん。 ただいま!」
ユタカの実家であるが、みすずはユタカの母親が大好き。
玄関の扉が開くと、お土産を置いて母親に抱きついた。
以前、長野で抱きついた時に覚えていた母親の匂い。
みすずは、この匂いで安心出来た。
「もう、みすずちゃん。 甘えん坊なんだから。」
「みすずちゃん、 今夜、何食べたい?」
「お母さんが作ったの!」
「まあ、経済的ね。 じゃあ、二人でお買い物に行きましょう。」
近くのスーパーにユタカの母親とみすずが出かけた。
沢山のお土産の片付けは、父親とユタカの仕事となった。
スーパーに着くと、みすずは母親に言った。
「私、お母さんの料理、覚えたいの。」
母親は言った。
「じゃあ、二人で頑張ろうか?」
「うん、 お母さんと一緒に美味しいもの作るんだ。」
娘が欲しかった母親に、理想の娘が現れた。
料理に使う材料を細かく説明して買っていく。
みすずは言われる度に復唱して覚えていった。
そのうち、二人は腕を組んで歩いていた。
母親の知り合いに会った。
「あら、娘さん、いらしゃったの?」
「はい。 娘のみすずです。」
本当は違うのだが、みんな、みすずを褒めるので、そのままにしておいた。
悪魔は生まれた時から一人。
親、兄弟などいない・・・家族の愛など、知る由も無い。
マリと同じく、みすずも夫の母親であるが、母親と呼べるものを手に入れたのである。
みすず、準備が良い。
手で提げる袋ではなく、背中に背負って、母親と手を握った。
温かい、柔らかい、そして優しい母親の手であった。
母親も娘の手の温かさに満足していた。
「お父さん! ただいま~!」
まるで、本当の娘が帰ってきた様に、みすずは大きな声でリビングで寛ぐ父親に挨拶した。
「あ、 みすず、お帰り。」
何の、違和感もなく父親は、みすずに返した。
本当の息子のユタカ、 みすずがみんなに馴染んでくれて嬉しかった。
リビングで、親子4人が寛ぐ。
母親が言った。
「じゃあ、 このお土産でお茶にしましょう。」
母親が立ち上がると、みすずも母親の後を追った。
「次に東京に来た時は、私一人でお茶を用意出来る様に教えてね。 お母さん!」
母親、嬉しくてみすずの頭を撫でた。
「うふふ・・・」
みすずが可愛い笑い声を上げた。
母親が緑茶を用意していると、みすずは冷蔵庫に入れたお土産の野沢菜漬けを取り出した。
まな板と包丁を取り出すと、5cm位に揃えて切っていった。
和食用の中ぐらいのお皿を出し、野沢菜漬けの茎と葉っぱを綺麗に盛り付け、残りはタッパーに入れて冷蔵庫に戻した。
お土産のお茶菓子は、海老名で買ったお饅頭。
ユタカがお菓子用のお皿に用意した。
みすずが言った。
「お父さん、お母さん、 長野だとね、お茶請けに必ず野沢菜漬けを出すんだよ。」
そう言いながら、小さい取り皿と、お箸を配った。
「でもね、お父さん。 野沢菜漬け、食べ過ぎると塩分過剰になるから気を付けてね。」
父親は可愛い娘の忠告を笑顔で頷いていた。
みすずの元気な「いただきます!」でオヤツ・タイムが始まった。
買いたてだから、お饅頭が柔らかくて美味しい。
父親が、野沢菜漬けに醤油を持ってきて掛けようとした。
みすずが父親を睨む。
父親。
「味変だよ。 チョットしか掛けないから・・・」
みすず。
「少しだけですよ。 まあ、長野でもお醤油掛ける人は多いから仕方がないけど・・・」
ユタカ。
「みすず、 厳しいね。」
みすず。
「だって、孫が出来てもおじいちゃんが元気じゃないと・・・ えへ! まだだけどね。。。」
みすず以外、みな、ホッとした。
オヤツの後、みすずは母親にまとわりついた。
夕食の支度も、母親と並んで一緒にやった。
父親曰く、いつもの夕食はもう少し和食寄りらしい。
4人で食卓を囲む。
父親。
「かあさん、 いつもより美味しいよ。」
母親。
「みすずちゃんが手伝ってくれたから。」
みすず。
「お母さん、 みすずで良いよ。」
ユタカ。
「・・・・・・」
食べる事に忙しい・・・母親の料理も、みすずの料理も大好きである。
夕食後、母親とみすずでお片付け。
母親。
「二人だと早いわ。」
みすず。
「長野だと、ユタカさんも手伝ってくれますよ。」
母親。
「ほら、 おとうさん、 聞いた?」
父親、新聞で顔を隠した。
ユタカ、何を言って良いのか分からない・・・
みんながリビングで寛いで、一人ずつお風呂に入る。
ナオミが母親に言った。
「お母さんと一緒に寝る。」
母親。
「ユタカ、 良いの?」
ユタカ。
「いつも一緒に寝てるから、良いよ。」
父親、羨ましそう。
ユタカ。
「父さん、 一緒に寝てやろうか?」
父親。
「ば、馬鹿野郎・・・。 一人で寝れるよ。」
母親、みすず。
「ふふふふふ・・・」
母親の部屋は畳の和室。
みすずが布団を2組敷いた。
「えへへ・・」と嬉しそうに笑いながら、みすずは2組の布団をピッタリくっつけた。
「お母さん、 寝よう。」
二人並んで横になった。
「お母さん、お母さん、・・・・・・」
みすずは母親に沢山話をした。
バス旅行、 動物園、 ドライブ ・・・
「はい、 はい ・・・・・・」
母親は聞き上手だった。
「もう、11時になるわよ。」
そう言って、母親は娘の頭を撫でた。
母親に沢山話していたみすずが目を閉じる。
母親の言葉は、子守歌の様だった。
直ぐにみすずは寝息を立てた。
何事もなく、1日が過ぎていった。




