勇者になる為に 英雄になる為に
ここからは遺跡調査編です。
「お願いだ、力を貸してくれ兄さん!」
放課後、俺は生徒会室に向かった。
高等部には生徒会副会長の兄がいる。
俺の憧れた⋯⋯"みんなの英雄"として頼りにされている、凄い兄さんだ。
「クラスメイトに虐げられている子がいるんだ! 助ける為に⋯⋯」
「駄目だ」
兄さんは俺に失望したような瞳を向けてくる。
「どうして! その子が可哀想じゃないのか!」
「確かに俺も良くない事だと思う。でも、それはカナタが受けた事に俺が手を出すのは違うだろ」
俺には兄さんの事がわからなかった。
どうして彼女を助ける為に立ち上がってくれないんだと。
確かに俺が受けた決闘だけど"正しい"ことをする為に協力して欲しいというのに、何が間違っているのか。
それとも俺が違うのか。
「わからないのか?」
「⋯⋯わかんないよ! 兄さんの事がわかんない!」
そう言い切った。
「そうか。だからお前は勇者になれないんだ」
突き放された。
ずっとそうだった。
ここ一年、俺は兄さんに追い付く為に努力した。
兄さんみたいに強くてかっこよくて、勇者の末裔に相応しい人になる為になんだってやってきた。
その結果がこれ。
「カナタ様⋯⋯」
後をつけてきたアラルが俺に哀れみの視線を向けてくる。
「俺には⋯⋯何が足りないんだよ」
「⋯⋯私には何とも」
アラル。本名はアラル・リリエト。貴族家で俺の師匠だ。
「お前が分からなかったら俺には一生わかりそうにないな」
こうして俺は人を集めた。
自分の主張を通す為に戦力になる者を。
フィールズ家に縁がある平民、貴族関係無く強い者を集めたはずだったんだ。
その結果が⋯⋯。
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「このザマかよ」
ボロ負けした。
俺は競技場の待合室にいた。
「カナタ様⋯⋯今回は相手が悪かったと諦めるべきでは」
「わかってる、わかってるんだ⋯⋯」
俺には実力が無い。
正義を主張出来るほどの強さが無いんだ。
「クソっ⋯⋯!」
悔しさから拳を思いっきり柱に叩き付ける。
じんとした痛みが手に拡がった。
「アイツにとっては⋯⋯」
明らかに遊ばれていた。いや、遊びなんて感情は無かった。遊ばれていたと感じただけ。
「"勇者"になる為に何でもやってきた。兄さんみたいな⋯⋯英雄になる為に⋯⋯」
策を練った。勝つ為に手を尽くした。時間いっぱいで出来る限りの事はした。
「俺に何が⋯⋯なんで⋯⋯」
何が足りないんだ?
なんで、ここまで来て何も無いんだ。
兄さんを追ってきた今までは間違いだったのか?
⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
最初は暗い感じでスタートしましたね。
正直に言えば贅沢者ですよ、カナタは。その歳で大いに悩めるのは贅沢以外の何ものでもありません。羨ましいですね。
ちなみに、この世界では貴族がいるのは当然として、年齢的に幼くとも相応の教育がされている為、貴族としての血が濃ければ濃いほど早熟の傾向にあります。知能面、肉体面、精神面で早熟なので、六歳にしては大人びています。




