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選別試験 面接と老人と脳筋と

投稿ペースめっちゃ早くて笑っちゃいますね。

 


「以上で入学時面接を終わります」

「はい、ありがとうございました」


 結論として言えば、あまり面白くなかった。


 家の事、得意な事、入学動機といった当たり障りのないもの、趣味や夢、やりたいこと等と面接はどこの世界でも変わらないものだということをルカは理解した。


「次は選別試験についてですので⋯⋯担当の者に代わりますね」

 そう言ってルカでは無く面接官が部屋を後にする。


「随分と手慣れておりましたね」

「テンプレートな受け答えなら余裕よ」


 後ろで控えているスクワールが驚くことも無く尋ねる。

 貴族の端くれでもあるルカには傍付きを置くことが許されている。というより、本来は両親と来るべき場所であり、スクワールはその代理という形で入室を許可されているのだ。


 そして再び扉が開くと、豪勢なローブを着た老人が部屋に入ってくる。

 初老というよりもガッツリ高齢者。推定八十前後のおじいちゃんだ。


「ごきげんよう、ルカ・レシーア。儂はヴァイラント・リオ・クランツレイヴン、と言えばわかるかのう?」

「ヴァイラント⋯⋯という事はこの学園の理事長様で、魔術序列六位の"賢者"様ですか」


 魔術序列はアルスマキア帝国内での魔術的地位を示し、強さや特定の研究分野で秀でた能力を持つ者がその序列を与えられる。

 特に一桁代にもなると、神の如き力と知恵を持ち、類稀なる功績を残した英雄とされているという。


「しっかり勉強しておるようじゃな」

「勿論です。お噂は予々」

 ヴァイラント・リオ・クランツレイヴン。実年齢()()()()であり寿命を引き伸ばす魔術を開発し、魔術学園の改革を行った。

 そして四十年前に起きた隣国との戦争では単独で数万の兵を戦場で()()したとされる怪物。

 膨大な魔術的知識と冷酷さから"賢者"と呼ばれるに至った存在である。


「⋯⋯キミの話もアーサー君から聞いておる。以前から出来損ないと言われていたレシーア家の娘。今回選別試験を受けるのは、それを覆したいからかね?」

「違います。私は他者の評価を気にしません。誰がどのような噂や話をした所で私を歪める事は出来ませんよ」


 ルカの言葉を聞いたヴァイラントはカッカッと大きく口を開いて笑う。

「若い癖に図太いのう? 他者と比べられて劣等感も優越感もないというのか?」

「勿論です。私は私のできることを全力で行うだけ。結果など後から勝手に付いてくるものですので」


 ルカの思想そのものだ。


 他者を顧みず、その先を見据えて全力で自分の出来ることをし、()()()()()()

 他者と比べた所で意味は無い。競争心などただ力を引き出す為の起爆剤。そんなものが無くともルカはいつだって全力だ。


「ハッ、いいぞ。ルカ・レシーア。選別試験を受けることを許可しよう」

「⋯⋯制度上そのような許可は必要無いのでは?」

「そんな訳なかろう。力も無く受けようとする者にはキツく叱る必要がある」


 それもそうね、とルカは頷く。

「内容は戦闘試験のみ。これは能力上仕方の無いものじゃが⋯⋯まあ大丈夫そうかの。使用武器は⋯⋯タブレット端末、スクワール、銃。なんじゃねコレは?」


「全て錬金術による生成物です。いえ、スクワールは後ろの」

「私です。ルカ様の錬金術による調整を受けた私は列記としたルカ様の研究成果(武装)ですので」


「⋯⋯面白い、許可しよう」

 ヴァイラントは引きつった笑みを浮かべてはいるものの、どこか面白そうなものを見る目でルカを覗いている。


 その後の説明をしていくうちに、ルカはヴァイラントとはどこか気が合いそうな感じがして懐かしい感情に浸っていた。



 -----



「クランツレイヴン様はあの方と似ていますね。ルカ様の記憶にある⋯⋯その⋯⋯」

「あの研究所のおじいちゃんね。気質が似ているというだけで、根本は違うけれど似ていると言われると確かに被っているわ」


 以前ルカが所属していた研究所の博士にヴァイラントと似ている者がいたのだ。

 それでもルカの面白そうだから行動する、出来そうだから創るという思考を認められていただけでルカの思想を理解していた訳では無かった。


「誰かに理解されるっていうのは、中々難しいものね」

「仕方がありませんよ。ルカ様の思想は私も理解したくありませんから」

「あら? なんだかハシゴを外されたような気がするけれど」


「分からされたのであって理解したい訳じゃありません」

「わからせなんて同人誌じゃあるまいし」


「ルカ様には同人誌よりもヒドイ事をされましたが。人にする所業ですかね?」

「私は貴女を人扱いした覚えは無いのだけれど」


 今度はスクワールが裏切られたような気持ちになる。

 雑談しながら向かったのは学園の競技場。そこで選別試験を行うという。


「ヨーロッパのアレに似てますね。コロッセオでしたか」

「ちゃんと知識がアウトプット出来て偉いわ。インプットしたとはいえ、それを適切な場面で活かせる場面を見れるのは感動ね」


 愛玩動物を見るような目でスクワールを見るルカ。

 競技場という名のコロシアム。外観的に広さはコロッセオよりもう少し狭そうだが、戦闘試験をするにはうってつけと言える。


「女子更衣室はこっちね」

 薄暗い通路を通りながら女子更衣室、というよりも待合室に向かうと、既に何人かが準備を始めていた。


「鎧、杖、剣。やっぱり前時代的で面白いかも」

「前時代的とはいいますが、単純にこれしか知らないだけです」

「まあ私達みたいな枠は例外みたいな所ありそうよね」


 と言いながら人差し指と中指でスクワールの額に触れる。

「健康状態は問題無し。身体機能オールグリーン。呼ばれたら行きましょうか」

「かしこまりました」


 スクワールがぺこりと頭を下げると、ルカの視界の端から一人の少女がやってくる。

 動きやすさ重視の短い銀色の髪に褐色肌。全体的に軽装備で、強面だが身長はルカとはそう変わらない。

「よう、出来損ないの餓鬼」

「貴女も餓鬼でしょ。何か用かしら?」


 ルカは少女の顔も見ずにタブレットを弄り続ける。

「あ? 上位貴族様だからっていい気になってんじゃねぇぞ出来損ない」

「生憎子供じゃないから、そういう挑発を振り撒くなら別の相手に」


 突如ヒュゴ、という虚空を切り裂くような音が待合室を支配する。

 が、その拳が何かに当たる訳でも無く、ルカの目の前で止まってしまったのだ。


「して欲しいわね。一応私は選別試験を受けに来たのであって、ケンカをしに来た訳じゃない」

 相変わらずタブレットに夢中で少女を見ていないが、その少女は何故空中で止まったのかという疑問でいっぱいだった。


 対するルカは眉を顰めた程度。


「お前魔術は使えないんじゃ⋯⋯」

「魔術なんて使ってないわ。錬成で弄っただけよ」

 ゴポ、という音と共に足元の煉瓦が一部消えている。


 拳を止める為に必要な空気の密度を計測し、足元の煉瓦をそのまま空気に変換し受け止めたという流れだ。

「次、エレナ・スチュアート」

「お、押忍!」


 唐突に係員から名前を呼ばれた銀髪の少女、エレナは一言言い残して外に向かおうとする。

「入学したら覚悟しておけよ」


 という挑戦状にもいじめ宣言にも聞こえるが。

「勝手にして頂戴」

 と、興味無さげにあしらうルカだった。


 エレナが立ち去ると、スクワールが口を開く。

「押忍って言ってましたね。拳法家でしょうか?」

「さあ? 余程自分の実力に自信があるのは確かなのでしょう。私は暴力は嫌いだから気が合わなそう」


「どの口で仰るのですか?」

「全部実験の為なのだから仕方ないでしょう? 死んじゃうのも不可抗力よ」


 スクワールと喋りながらもパパパパとタブレットを切り替えながら、必要なシチュエーションを構築しつつ適宜修正を加えていく。

 数式とアルファベットの羅列が書かれた窓が一秒間に数十も現れては消え、現れては消え、偶に数値を手動で書き換える。


「ああわからなくていいわ。その辺の知識は()()インプットしていないもの」

「かしこまりました」


 そのままタブレット端末を操作しながらふと湧いた疑問をスクワールに投げかける。

「どうして私が出来損ないなのかしら?」

「⋯⋯もしかしてルカ様はご存知無いのですか?」

「記憶を漁っても出てこないのよね」


 はあ、とため息を吐くルカに淡々と答える。

「それは魔術が使えないからですよ」

「それは知ってる。でも魔術が使えない人なんて周りにはいくらでも⋯⋯」

「私は噂程度にしか知りませんが、レシーア家の者は複数属性の魔術が使えて当たり前、その上で錬金術にも秀でた才能を持っているのです」


「⋯⋯あら。知らなかったわ」

 実際、ルカは知らなかった。

 というのも、最近収集する知識の偏りが出てきており、自分でも課題に上げるべき問題だったのだ。


「ですから魔術を使えない、錬金術も並以下だったルカ様はレシーア家の落ちこぼれなのです」

「なるほどね」

 情報が更新されていないが故の落ちこぼれというのならば仕方が無い、と納得した。


「そういえばそのタブレット端末、充電は必要無いのですか? あの世界では電力を供給していたはず⋯⋯」

「実験的に魔術的な供給スクリプトを付けてみたのよ。空気中の物質を魔力に変換して、それを電力にしているから仮設バッテリーはあっても殆ど使わないのよね」


 そのまま雑談を二十分続けた所で、競技場から大歓声が起きた。

 競技場全体を揺らすような振動の中エレナが戻ってくる。


「Aクラス試験突破してやったぜ!」

 意気揚々とはしゃぎながら駆け回るエレナ。

「良かったじゃない。おめでとう」

 と、初めてルカがエレナに興味を示す。


「あ? なんだ急に。アタシがAになったから媚び売りに来たのかよ」

「いえ、クラスメイトなら仲良くしない理由は無いでしょう?」


 とルカが手を差し出したが、鼻で笑われその手を弾かれる。

「もう突破気分かよ。悪ぃが仲良くすんのは出来損ないが突破出来たらの話だ」

「なら終わったら改めてご挨拶しに行こうかしら。まだ帰らずに上で待ってて頂戴」


 ひらひらと手を振って、というより早くどっか行けという仕草でエレナを誘導しようとする。

「は、おいこらテメェ!」

「観戦出来るのでしょう? 態々ここで待たなくても上で何か食べながら待ってなさい」


 と言うと、ルカは空中の物質からアルス金貨を数枚生成しエレナへと渡した。

「おいコレどっから出した」

「はいはいお腹空いてるでしょ。試験前なのだから邪魔しないで」


 ルカは最早無理矢理と言っていい感じに追い出した。

「ルカ様がそういう対応をするのは珍しいですね」

 若干驚いたようにスクワールは呟く。


「あの手の脳筋タイプは無理矢理行動させないとダメなのよ」

「⋯⋯なるほど」

 どこか覚えがある二人(全く同じ記憶)は少し頭を抱えた。


 再び雑談をして時間を潰していると、ルカ・レシーアの名前が呼ばれる。


「さてと。行きましょうか」

 適当な剣を一本手に取り、それらを変換して携帯端末を生成。


 もはや微粒子レベルの操作すら一瞬で行えるようになっていた。

「スマホですか」

「に似たようなものよ。電波が無いから通話なんて出来ないしね。⋯⋯あ、これをルカ・レシーア名義でヴァイラント様に届けて下さる?」


「⋯⋯⋯⋯これは?」

 怪しげな板切れ一枚を手渡された係員は携帯端末をまじまじと見つめていた。

「解説用の端末。とにかくヴァイラント様に渡して頂戴」


 そう言ってスクワールと共に歩き出す。


「よろしかったのでしょうか? 完全に想定されていないと思うのですが⋯⋯」

「実験の意図や内容を説明をしないと分からないのだから仕方ないじゃない」


 はあ、と再びため息を吐きながら光射すフィールドの入口へと向かった。




エレナはAクラス入りです。ちょっといじわるな所は見えましたが、ちゃんと実力は認められる子です。それにある程度皆大人びているとはいえ実年齢は六歳ですからね。大目に見てあげて欲しいです。

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