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再開

最近投稿ペースが早いのですが、単に時間があるというだけです。

 


 入学が決定してからはや三日。

 ルカとスクワールはアルスマキア国立魔術学園の門前にいた。


 入学式は四日後だが、その前にクラス決めの為の選別試験を受けに来たのだ。


 アルスマキア国立魔術学園はレシーア領内、つまるところ実家から近い場所にある為、大掛かりな準備等は必要無い。

「レシーア本家とは暫くおさらばね。寂しくなるわ」

「ですがルカ様から見ればこちらの方が都合がいいのでは?」


「寮は寮で色々柵があるものよ。都合の善し悪しで言うのなら、辛うじて学園寮の方がいい程度。別段いいって言うほどのものでは無いわ。それに私は規則を守るタイプでしょ」

「⋯⋯あの夜に散々殺して回ったのは?」


 あまり表情は変わらないものの、明らかにじとっとした視線を向けるスクワール。

「正当防衛よ正当防衛」

「この国にそういった法はありません。まあ、あの場はレシーア領ですから、ルカ様が罪に問われる事はありませんが、この先は中立領なので、無闇な殺害は控えて頂いた方が宜しいかと」


 スクワールは既にある程度の知識を得ている以上、ルカがどのような人生を歩んできたかは()()()()されている。

「⋯⋯⋯⋯そういえば思い出しました。AからFの中と言いますが、古代語はアルファベットなのですね」


「あら今更? きっと昔に私みたいな人がいたのかもしれないわね」


 その辺りはまだルカが気にすることは無い。

「必要になったら考えましょう? 時間はたくさんあるのだから」

 そう言ってルカとスクワールは門を潜る。


 眼前に広がるのは大きな城のような造形をした美しい建造物。莫大な敷地面積を惜しみなく使い、何千人という数が入れるような巨大な建物。


 レシーアの中心街に聳え立つこの学園には数千もの生徒が所属している。

「今日は好きな格好でいいのよね」

「そうですね。入学が決まったら制服を購入するというのが二百年続くこの学園のルールだそうです」


 ルカは制服という言葉を噛み締め、思考を巡らせる。


 そもそも学校の制服という概念は十六世紀に生まれたもの。中世でも後期に位置する。

「まあ考えても仕方がないかしら」


 もし仮に自分以外の部外者(イレギュラー)が手を加えているのなら簡単に納得出来る。

 それに別の世界である以上、そのままそっくり文明がトレースされている訳では無い事もわかっている。


「⋯⋯ルカ様?」

「なんでもないわ」

 自分の思考の中に落ちていきそうな感覚からスクワールが引っ張り出す。


「さてと。受付してきてもらえるかしら。私は少し周りを見てきたい」

「かしこまりました」

 そう言ってスクワールは選別試験の受付へと向かった。


「さてと⋯⋯⋯⋯あら?」

 何かしたいことがある訳でもない為、視察がてら見てこようかと思っていたルカだったが、周囲から向けられている視線が気になった。


 確かにセーラー服と白衣という異国風の出で立ちは目立つが、それを気にかけているというよりもルカ自身へ向けているものだ。


「なああれって⋯⋯」

「ルカ・レシーアだな⋯⋯」

「レシーア家の落ちこぼれがどうしてここに」


 ボソボソと遠くからルカを見て話している生徒の声を空気に乗せて耳へと無理矢理届ける。

 手に触れている空気から伝達させ、生徒が発した声の一部を短い波長で錬成。足りない音の伝達距離を周辺の空気を錬成し無理矢理数値をかさ増しさせることでなせる技だ。


「そう。私は落ちこぼれ」

 正直周囲の評価は興味の無いルカだが、少なくともアーサーの迷惑にはならないようにしたいと考えている。

「人脈は長期的な関係が重要。短期間でどうにかなるものでは無い」


 アーサーの最も強い点はそこだ。善性と優秀さが相まって周囲からの信用も厚い。

 多少やらかした所でアーサーの信用は失われないはずだが、今後を考えると取り繕っておくのはいい判断だと思っている。


「どこから見て周りましょうか」

 と、気にした素振りも無くアーサーから貰った地図を電子化しインストールしたタブレット端末を見ていると。


「ルカ⋯⋯⋯⋯?」


 呼ばれて振り返ったルカの目の前にいたのは、短く切り揃えられた金髪に、ルカと同じ輝きを持つ碧眼の少女。

 ルカよりも少しだけ身長が高く、全体的にハツラツとしておりルカとは正反対な雰囲気だが、その顔立ちの面影はルカとに通っている。


「あら。シルヴィお姉様」


 シルヴィ・レシーア。三年前に魔術学園に入学したルカの実の姉である。

「あ、えっと⋯⋯。久しぶり、ルカ」

「ええ。お姉様も元気そうで何より」


「雰囲気変わり過ぎてて全然わかんなかったや。ごめんね⋯⋯」

「仕方ないわ。あんな事があったら変わらないといけないもの」


 それを聞いたシルヴィはすっと俯き、ぎゅっとルカを抱き寄せる。

「おねーちゃんがあそこにいてあげられなくてごめんね⋯⋯怖かったよね⋯⋯!」

「⋯⋯大丈夫よ。私はもう踏ん切り付けたもの」


 どうやら既にシルヴィは事件の顛末を聞いているらしく、悲しそうに小さく泣いていた。


「泣かないでお姉様」

「⋯⋯お、おねーちゃんは泣かないよ⋯⋯!」


 と、涙ぐんだ声で答えた。


 宥めるのに数分かかってしまったが、姉をあやすという体験が初めてであった為、これはこれで悪くないと感じていた。




 -----




「それで。お姉様は今Bクラスなのね」

「うん! 最初はCクラスのギリギリ合格だったけど、なんとか突破出来たんだ!」


 泣き止んだシルヴィと共にパンを買ってベンチで食べていたルカは、学園の事について色々聞いていた。

「炎と氷の魔術も中級まで使えるようになったし、これからどんどん上手くなっていくよ!」

「もう中級を習得したの。凄いじゃない」


 ルカはレシーア本家で読んだ文献によると、初級から中級に上がるまでには十年近くかかるという。

 それをシルヴィは八歳で習得してしまっているというのは、ルカからしても驚きだった。


(学園のカリキュラムは知らないけれど、その十年というのも学園に通っている事を前提にしているものだと考えると、相当な才能があるのね)


「ルカはどう? ちゃんと練習してる?」

「頑張っているわよ。選別試験でいいものを見せれそう」

「⋯⋯って、ルカが受けるの!?」


 ルカが選別試験の事について話すと相当驚かれる。

「⋯⋯何かおかしなことかしら?」

「ルカが使えるのって錬金術だよね? 選別試験には戦闘試験もあって⋯⋯」


 シルヴィが説明しようとした所でスクワールが視界の端に映ったルカは小さく手を振る。

「あっちの人は?」

「スクワール。私の傍付きよ」


 スタスタと一枚の紙を持って来るスクワール。

「お初にお目にかかります、私はルカ様の傍付きを務めております、スクワールと申します」

「ご、ご丁寧にありがとうございます、わっ。シルヴィ・レシーアでしてよっ」


「どうしたのその言葉遣い」

「ルカのメイドの圧にやられちゃった⋯⋯だって視線が怖いんだもん⋯⋯」


 と言うのも、シルヴィの名前を名乗った瞬間、目の色が変わったように感じたのだ。

 そもそもの話、スクワールは他のレシーアに対してあまりいい感情を持っていないのかもしれない。


「私の姉なのだから丁重に扱って頂戴」

「かしこまりました」

「私はモノ扱い!?」

「そんな事ないわ。お姉様に相応しい扱いよ」

「????」


 シルヴィをぞんざいに扱いながら、ルカはスクワールが持って来た一枚の紙を見る。


「面接は二時間後。その後に選別試験ね。まだ少し時間があるけれど⋯⋯」

「や、やっぱり受けるんだ⋯⋯」

「準備は出来てる?」

「問題無く。最終調整は済ませましたので、いつでも実戦投入可能です」


 やる気に満ちた無表情でスクワールは頷く。

「今回は調整後初めての実戦な上に武装の上限が指定されている試合形式のお遊びだから、貴女のテストには持ってこいなのよね」


「えっ? スクワール⋯⋯さんが戦うの? ルカの試験なのに?」

「いえ? 私が戦うのよ?」

「??????」


 頭の中がこんがらがっている中で、上の裏を見る。

「今回の入学人数は約二百人。その中で選別試験を受けるのは四十人程度⋯⋯偏りが凄いわね」

「それは仕方ないよ。私達みたいにちっちゃい頃から貴族として魔術や剣術の勉強をしてたならともかく、平民の人達は基礎の基礎からやってかないといけないから」


「それもそうね」

 本格的にクラスが決まるのは二学年かららしく、一学年で才能を開花させることが出来る者は少ないらしい。


「私の場合、選別試験はEから順に標的を倒せばいい。随分と簡単ね」

「おねーちゃんみたいに魔術の才能があると、魔術試験もあるんだよ。その分戦闘試験の方は優しくなるけど」


 標的の内容については書かれていないが、シルヴィよりも難しい課題になるという。

 シルヴィが優しめでCギリギリと言っていた為、それ以上を要求される。


 しかしながら本人としてはとても楽しそうで。

「浮かれていらっしゃるのですか?」

「えっ?」

「そうね⋯⋯こういうのは初めてだからとても楽しみ」


 ルカ、いや呉島瑠楓の記憶に戦闘での試験というものはない。

 面接に関しても書類のみで大学に入学、飛び級で卒業し研究所に所属していた為経験が無い。


 知識はある。


 少なくとも戦略、戦術は構築出来るし、面接の会話のテンプレートもある。


 それでもここは地球では無い。


 それ故にまた違った刺激や楽しみが生まれるかもしれないという高揚感に満たされているのだ。


「知らない事を知るっていうのに、ワクワクしない訳がないでしょう?」


 実は単純。それ故に見る人によっては邪悪にも見える彼女の片鱗。些細な事でも起こりうる感情の起伏は⋯⋯。


「そうだ。予習なんて必要ないだろうけれど、シルヴィお姉様の相手を教えて欲しいわ」

「私からもお願い致します。事前の対策も立てられますし」

「い、いいけど⋯⋯いいのかな⋯⋯?」


 少し困った表情を浮かべたシルヴィだが、姉の意地というのもあるのだろう。自慢げに話し始める。

 それから面接までの間、三人で試験対策について話し合っていた。




学園編のキーヒロイン(?)的登場人物の一人、シルヴィ・レシーアちゃん。実は元気っ子です。

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