木漏れ日の暖かさ
「おねーちゃんすごい!」
暖かな日差しが差し込む何時ぞやの昼下がり。
屋敷の前にある小さな広場で「おねーちゃん」は魔術で氷の花を咲かせていた。
短く切り揃えた金髪にパッチリとした瞳の碧眼。
スラッとした長身で健康的に成長した「おねーちゃん」はルカよりも一回り歳上。
ルカの実姉。長女シルヴィ・レシーアだ。
小さな範囲ではあるが、水晶を削って作られた美術品の様な氷の花畑に目を奪われていたルカ。
「えへへ。すごい? ならおねーちゃん、ルカの為にもっと頑張るね!」
そう言ってシルヴィはパパパっと花畑を更に広げていく。
そして徐にポンとルカの頭に手を乗せる。
「わたし、学校に行くことになったんだ」
「がっこー?」
「そう。魔術を習うために勉強しに行くの。だから⋯⋯暫くルカには会えなくなっちゃう」
寂しそうにルカの頭を撫でるシルヴィ。
少し遅れてその言葉の意味を理解すると、ルカは目に涙を浮かべてしまう。
「うっ⋯⋯やぁだ⋯⋯おねーちゃんと離れたくない⋯⋯!」
「そうは言っても、私ももっと勉強してルカを守れるくらい強くならないと⋯⋯」
「⋯⋯そんなの⋯⋯いい! いかないでぇぇぇ⋯⋯」
ぐすんと鼻をすすりながら涙を拭って駄々をこねるルカを宥めるように撫で続ける。
「よしよし。ちゃんと帰ってくるから。今のままじゃルカを守りきれないんだ」
「まもる⋯⋯?」
「そうだよ。みんな仲良くルカもペパーも、貴族も平民も。みんなが仲良しになれる国を作りたい、そんな国を守りたいから私は学校に行くんだ。だから、ルカにも応援して欲しいな」
幼いルカにはその意味はわからないかもしれない。それでもその覚悟が伝わったのだろう。
鼻をすすり、目元を真っ赤に染めながら、大きく頷いた。
「⋯⋯うん⋯⋯! わかった⋯⋯!」
押し殺しきれない寂しい気持ちを胸に抱え、ルカはシルヴィの背中を押した。
「みんななかよし!」
舌足らずで、泣きじゃくりながらも、ルカは笑って見送ることにした。
それから三年後。二人は想像よりも早く再開する事になる。
それがシルヴィにとって望んでいた再開とは違うものになるという事は、想像に難くないだろう。




