【チキンボーン】
【タイトル】チキンボーン
帰りの電車内の床に鶏の手羽先が落ちていた。
それはスーパーの精肉売場でパック詰めされている姿でよく見かける、生の骨付きの手羽先。
だれかが今日の夕飯にと思って買ったそれを、何かの拍子でパックが破けて落っことしてしまったのかな? などと初めは特に気にもしていなかったが、次の瞬間にはそんな風に呑気な事を考えていた自分自身を心底恨んだ。
周囲に悲鳴が上がり、車内が騒然。ようやく自分に置かれた状況を思い出した。
そうだ、あの手羽先は……僕の指だ。
僕は仕事で恨みを買った男に包丁で一突きされた後、バラバラに切り分けられてクーラーボックスに詰め込まれてしまっていたのだ。
男は剛胆にもその肉塊が入ったクーラーボックスを担いで電車に乗り、どこか遠くにまで赴いて「僕だった物」を捨てようとしていたんだよな。そしてあろうことか転んで「僕」をぶちまけちゃったってワケか。
まったくドジな奴。そんなんだから僕みたいな口だけ男に騙されるんだよ。あまつさえ逆恨みで僕を殺して遠くに逃げようだなんて……
とんだチキン野郎だよ。
THE END