霊魂祭と世界の理
ここにいる幻はとても懐っこい。でも触れないから虚しいだけだ⋯⋯僕の力はまだ生きてるのだろうか? 使ってなかったなぁ、久々に使ってみるか『創造』の力を──
あれから数日後、二人と話し合いやカラスから情報を聞いていろんなことがわかった。
死神以外にも神がいること、あの少年が神だったこと、世界が複数存在すること、それが手帳に上書きされた。
「で? これからど〜するの」
「どうするってアイツに復讐するのが皆の目的でしょ」
リリエルの部屋に集まり、今後の活動を話し合うのが毎日だが、ただの時間潰しになりつつある。
「具体的にど〜するのってこと、あっちから来るわけでもないんだよ?」
「それは、そうね」
確かにそうだ──ならどうしたらいいのか。
『それはセカイから出て直接殺るしかないでしょ』
「は? ここから出る? そんなこと──」
「来るとき外から来たんだから出るのもできるんじゃないの〜」
リリエルがベットにダイブしながら言った。
『離せ! それに俺はシルフだ! リカではない!』
急に男の声がした──声の方を見るがレオンがシルバーウルフと呼ばれていた魔物をモフっているだけだ。
シルバーウルフがレオンから抜け出すとリリエルの方に行った。
『いいか、俺はこいつに負けたのであってお前に従う理由は──』
明らかに話したのはシルバーウルフだった。話の途中でレオンがシルバーウルフを消してしまった──どうやらレオンは仲間にした魔物を出したり消したりできるようだ。
「ね、ねぇレオン? さっきアイツ喋ったわよね?」
「そうです、昨日くらいから喋るようになりました」
何か不思議な生物だ、飼い主の思考を読んで王の妹を連れて来たと思えば話すことができるのようになったり──次は人間になったりしてな、なんて考えすぎか。
「ど〜でもいいけど。あ、王様から依頼来てたと思うよ〜」
リリエルがベットの引き出しから手紙を渡してきた。
手紙には、次の霊魂祭のためにエルフを連れて来て欲しいとあった。
「次の霊魂祭っていつよ?」
「三日後だって〜早くしないとね〜」
「リリエル、これいつの手紙?」
リリエルはベットでゴロゴロ〜ゴロゴロ〜している。
「いつか忘れたけど買い物行ったメイドが渡してきたよ〜」
その時、部屋のドアが開いた──そこにいたのは王のラインだ。
「あ、皆さん。エルフはもう連れて来てくれましたか?」
三人とも黙り込んで気まずい空気になった。
「えっと⋯⋯エルフは霊魂祭当日でも大丈夫ですが、連れて来れなかったら⋯⋯わかりますよね」
少年だが王としての言葉には凄い圧力があった。
「行ってきます!」
リリエルとレオンを引っ張って屋敷から逃げた。
「え〜、やらなくちゃダメ?」
「あの屋敷から追い出されるだけはゴメンよ、エルフはあの森にいるって手紙に書いてあるから行きましょう」
『だから、乗るのはやめろと言っているだろ!』
後ろではレオンがシルバーウルフに乗って一人だけ楽をしていた──振り落とそうとしてロデオみたいになっている。
「ほら、ワンコ〜飼い主はレオンなんだから諦めなよ〜」
リリエルの言うことは聞くらしい、おとなしくなった。
『だが、俺はシルフだ! リカではない!』
「わかったよ、これからはシルフって呼びますよー」
リリエルの言葉に従うのが気に食わないのかレオンはなんだか不満そうだ。
森についたはいいがどう探せばいいのか全くわからない──そもそも本当にいるのだろうか。
悩んでいるとシルフが迷うことなく先に進んでいる。
「ちょっと! どこ行くの!」
突然だったのでシルフの尻尾を掴んで止めた。
それが悪かったのかシルフが飛びかかってきて押し倒された。
『尻尾は最も触られたくないところだ! 次やったらその喉食いちぎるからな!』
歯を剥き出しにして今にも食らいついてきそうな勢いだ。
「いいですか、先輩を押し倒していいのは僕だけなんです。だからその汚い手をどけろクソ犬」
優しく、でもその後ろにはリリエルに似た黒いオーラを出しながらシルフの首を掴んで言った。
『⋯⋯すまない。エルフには知り合いがいる。案内しよう』
シルフはレオンのことを飼い主と認めたのかそれともただ怖かったのか、とても素直な子になった。
シルフの案内で巨大な木のある場所に来た。
木には入口があり、中に入れるようになっているようだ。
『ここで待っていろ』
シルフはドアでガリガリと爪とぎをしているようだ、何をしているのかと思っているとドアが開いて耳の長い少女が出て来た。
「ちょっとシルフ! ドアで遊ばないでっていつも言って──どちら様?」
『お前を祭りで呼びに来たのだと』
「あぁ、そんな季節だったっけ。じゃあ、はい」
勝手に話が進んでいると思えば手を出して何かを待っているようだ。
「はい?」
「え? もしかしてお土産も無しに来たの? ええー行くのやめよっかなー」
身体は小さいのに態度は大きい少女にイライラしつつ、来てもらえないとこっちも困る──どうしたらいいのか。
「ね〜早く帰ろうよ〜もういいでしょ、引きずってでも」
どこから持って来たのか果物を食べながらリリエルが前に出て来た──その時、エルフの少女の目が光った。
「ねぇ! その服どこにあるの!」
リリエルの服に興味津々な少女の質問攻めに面倒くさそうなリリエルは。
「じゃあこの服あげるから来てくれる?」
「喜んで!」
リリエルの新しい服は少女が作ったのを貰って着ることになった。この間、レオンはずっとシルフをモフモフしていた。
少女の名前はアリアと言うらしい。
アリアに霊魂祭のことについて聞いてみた。
「霊魂祭は、ほら魔物とかは光を出すのとださないのがいるでしょ? 出さない方の魂はその辺を飛んでるらしいわよ」
「いや、見えないけど──いるの?」
「あなた、夜にいる外の白い光は見たことあるでしょ?」
「いいえ、夜は外にでないから」
実際、夜になるとメイドさん達が鍵をかけるし、窓もカーテンをして外は全く見たことはなかった。
アリアは何とも言えない表情で続けた。
「黄色い光は転生の光で、その流れに乗るのは難しいの」
「何でですか」
シルフに乗ったレオンが聞いた──テイマーとして当然の疑問だ。
「そこまでは私も知らないわ、それよりここが目的地なの?」
話している間に屋敷についた、王様に報告しなくてはいけないがそれはメイドさんがしてくれるはずだ。
「ええ、私達の家よ」
「ね〜この服なんか違うと思う〜新しいの作ってよ」
リリエルが手帳の鏡を使って自分の服をいろんな角度から見ているが気に入らなかったようだ。
「わかったわ、あなたが満足するものを作ってあげる」
変なところに火がついたのかアリアはやる気で屋敷につくと、裁縫道具や布などを集めて部屋に閉じこもった。
次の日、アリアはリリエルが着ていた服の色違いを作った。
何で同じのを作ろうと思ったのか。
「似合う?」
「リリエルはそれが一番似合うと思うわ」
逆に他の服が似合う保証がない。
その場合また話が振り出しに戻ってしまう──それだけは避けなければならない。
しばらく服を見たあと、リリエルはスキップして部屋に戻った。
アリアには霊魂祭まで休んでもらうことにして部屋まで連れて行った。
部屋に戻り、今日何するかを決めようとしていたその時。
『お、終わったぁ』
地の底から出てくるような声にびっくりして辺りを見回すとそこには忘れられていたカラスがいた。
「何が終わったのよ」
『魂の整理よ、よしこれで休める』
「そうだ、聞きたいことがあるの。この世界から出ることは可能なの?」
『出来るけど、死なないと出れないわ。死ぬことが最大の幸福だから』
「は? 何で死ぬことが最大の幸福なのよ」
『言ってなかったかしら、そのセカイでは死が最も偉大なのよ? だから皆は満足して死ねるように今を生きてるわけ』
死が偉大? 何を言ってるのか、でも出ることは出来るのか──いやまた死なないといけないの!?
「死ぬ以外に出る方法はないの?」
『あるとしたら、デスサイズちゃんが連れて来るぐらいかしら』
「誰? それ」
『私の分身、と言ってもあの子は自立してるけど』
「生きてるってこと?」
『そうね、ツクモガミに命を与えてもらった──のだと思うわ』
何だ今の間は、それにツクモガミって他の神のことか。
「とにかく、デスサイズってのに会って頼めばいいのね」
『会えればね、あ! でも霊魂祭ってのにはいつも行ってるらしいから会えるかもね』
いいことを聞いた、霊魂祭は二日後。その日にデスサイズってのに会ってここから出して貰えればアイツを一発殴ることもできるかもしれない。
『じゃあ、私は紅茶飲んで寝るから。起こしたら死んでもらうから』
カラスは糸が切れたように倒れた。
あと二日、楽しみだ。
シズク→???
レオン→テイマー
リリエル→魔法少女