初めての仲間と初めてのクエスト
ここには、生き物はいない。いるのは幻の触れない生き物だけ。退屈しないためのものだろうけど、全く意味がない。
せめて、あと──でも連れてくるんだった。
町に入り、生活用の金をどうにかしないとゆう意見となり冒険者ギルドに行った。
冒険者は様々で剣や斧、鞭なんかを持っている者もいた。
受付のお姉さんに仕事がないか聞くと。
「見たことのない人ですね、まずはギルドに登録をして下さい⋯⋯って言っても、パーティーの名前を契約書に書くだけてずけど」
契約書にはクエストの報酬の半分をギルドに渡す(一日につき一回)とパーティー名、個人の名前を書くところがあった。
近くのテーブルに契約書を持って行き、話し合いが始まった。
「まず、個人の名前から始めましょう。私の名前は──シズク」
「リリエルだよ〜」
「えっと、レ、レオンです」
契約書にそれぞれの名前を書く、そういえば異世界に来たのに文字が日本語なのは何か違和感があった。
普通、言葉は違うと思ったが。
「次、パーティー名は──」
「魔法少女シスターズ!」
「「却下」」
レオンとは息が合う気がする。
とゆうかどこかで会った気すらする、全く見覚えもないのに──でも、雫のことを知っているのだから他人では無いのだろう。
「えぇ〜、じぁあ〜リベリオン!」
「「きゃっ──え?」」
ずいぶん普通のがリリエルの口からでた。てっきりまた変なのだと思ったのに。
「私は良いと思います、レオンは?」
「え? あ、うん、さっきのシスターズじゃなければ」
「ひど〜い」
書き終えた契約書をお姉さんに渡して契約は成立、クエストは掲示板からやりたいのを選ぶそうだ。
「じゃあ、掲示板を見に行きましょうか」
「わかった〜」
「あっ、シズクちゃん! ちょっと。リリエルちゃんは先に行ってて」
レオンがローブを引っ張って呼び止め、リリエルは先に掲示板のある二階に行った。
「雫ちゃんですよね! 何でここに! 先輩はどうなったんですか!」
「ちょ、ちょっと待ってください。アナタこそ誰なんですか? 私の名前を知っている人はいないのに──先輩? もしかして梨花?」
「そうです! 梨花です! で、先輩は!」
「目の前にいるじゃない」
「え?」
レオンもとい梨花は理解しきれていないのか口を開けたまま立ち尽くしていた。
「転生する時にあの死神に言われたでしょう、一番印象に残った人の姿になると」
そういえば、町に入ってからカラスが一言も喋ってない。
右肩に乗ったカラスを見ると──寝ていた。
こいつ、また紅茶ぶっかけて泣かしてやろうか、この大事なときに寝やがって。
「せ、先輩なんですよね?」
「そう言ってるでしょう、見た目と声、話し方まで雫のものだけど中身はアナタの先輩よ」
「じ、じゃあ私の好きな食べ物は?」
「いつも私に作らせるカルボナーラ」
「せんぱーい!」
ようやく気づいたのか抱きついてきた。さっきからの言い合いで周りの冒険者や受付のお姉さんに見られている。
「ちょっと、離れなさい!」
「いいですね、仲良さそうで──知り合いだったんですね」
テーブルの下から二階にいるはずのリリエルが低い声で言ってきた。
「「ひっ!」」
二人で驚き、尻もちをつくとさらに怖いことに丸型のテーブルの裏側に張り付いていた。
「仲間外れにしないでよ。パーティーなんだから」
「「う、うん」」
声を震わせて、何とか声になったのはその二文字だった。
「それじゃあ、皆で行こ?」
リリエルは重力を無視するかのようにテーブルの上に立ち二人を指差して言った──その時だ。
「誰か! 妹が森に行ってしまったんだ! 助けて下さい! 報酬はいくらでも出します!」
少年が息を切らして叫んでいた。
だが、報酬がいくらでも出るのに他の冒険者は気の毒そうに見ているだけだった。
受付のお姉さんが駆け寄り、話しを聞いているようだ。
少年が必死に説明しているがお姉さんは首を横に振り、帰らせようとしていた──その時、リリエルが少年の所まで跳躍して華麗に着地した。
一体、どんな身体能力をしているのか。
数分後リリエルが帰ってくると。
「はい、入口近くの森に行くよ〜」
「いやいや、説明してよ」
「ええ〜、なんか妹が森に薬草取りに行ったから連れて帰ってきてだって」
「まぁそのくらいなら、レオンも良いよねっていつまでくっついてんのよ!」
「え? あ、はーい。わかりましたー」
と言いつつ、離れないレオン──やばい、リリエルの目がまた怖くなってきた。
無理やりレオンを引き離し、出発しようとすると。
「おいおい、本当に行くつもりか? 死んでも知らねーぞ」
入口の若い男に忠告された。でも、リリエルがいれば大丈夫だろう。
三人とも無視してギルドを後にした。
「で? 手がかりとかあるの?」
「うん、金髪に緑の瞳だってすぐ見つかるでしょ」
「魔物が出たら守って下さいねリリエルちゃん」
「え〜男の子じゃん、一人で頑張ってよ。それとも男の娘とか?」
「くだらない話ししてないで、ほら、森の入口につい──」
「入口に何かあるん──」
「何よ二人して〜え?」
入口にはリリエルが殴り飛ばした狼の魔物が黄色い光を放ちながらまだ消えていなかった。
『すごい生命力ね、ほらそこの少年! 見てないでテイムしなさい!』
「「カ、カラスが喋った!?」」
そういえば二人はこいつが話しているのを見るのが初めてだった。
声に聞き覚えがあるからそんなに驚かなかったけど、これが普通の反応なのか。
「で、どうするの?」
『アナタに言ってないわ、少年! ほら! それを抱きしめなさい!』
「こ、こうですか?」
戸惑いつつ黄色い光を抱きしめるレオン──すると、さらに光が増し、狼の魔物は元の最初に見た姿に戻った。
「もう一回、殴っとく?」
『やめなさい! もうあの狼は少年のものよ』
カラスがレオンの頭に乗ると続けて言った。
『名前を決めて飼い主になりなさい』
「え! じゃあシン──」
「ダメに決まってるでしょ!」
何とかレオンの口を塞ぐことに成功した。
自分の前の名前をつけられるのは何としてでも阻止しなくては。
「仲、いいんだね」
後ろからは黒いオーラが漂ってきている。
早くなんとかしないと! いろんな意味で!
「ほら! あれ以外なら何でも良いから!」
「うーん、じゃあ⋯⋯リカにします!」
「え?」
意外な答えに言葉を失っていると。
「ワオーン!」
リカと名付けられた狼の魔物は嬉しいのか遠吠えを上げた。
「ねぇ私達、仲間だよね?」
「ウン、ナカマデスヨ」
「ウン、ナカマヨ」
「うん、良かった。じゃあ探しに行こ?」
まるで首にナイフを突きつけられているような感じがした。
森の中に入ろうとした時、リカと同じ魔物が大量に姿を現して囲まれてしまった。
「ちょ! どうするんですかこれ!」
「どうもこうとないでしょ! リリエル! 何とかして!」
「仲間ならハグの一回くらいしてよ」
「こんな時に何言ってんのよ!」
「そうですよ! ハグなら僕が! せんぱーい!」
『うるさいわ、よく見なさい』
三人が黙り、狼の魔物が何か咥えている──それは依頼された少年の妹の特徴と一致する少女だった。
「「「いた!」」」
ギルドに戻ると冒険者の皆が剣を構えたり逃げたりした。
「おい! そのシルバーウルフ大丈夫なんだろうな!」
「ええ、いい子ですよ? 依頼者の妹も見つけたし」
レオンがリカに乗ると冒険者達は一気に駆け寄った。
「あのシルバーウルフが人を乗せてる!?」
「おいおい、嘘だろ」
冒険者はレオンを囲み、珍しそうに話している。
「完全に残されたわね」
「そうだねー」
二人でいるとなると何を話していいのか⋯⋯あ! そういえば。
「リリエルちゃん、ガルガウルってゲーム知って──」
「ガルガウルやってたの?! じゃあ私の名前知ってるよね!」
ガルガウル、オンラインで人と獣に分かれて殺し合うゲームだ。
「うん、トップランカーで他のゲームでも凄い記録を残したりしてる──もしかして本人!?」
「ふっふっふ、そうだよ。私達、気が合いそうだね!」
二人で握手をし、冒険者がいなくなるまで話し合った。
「やっと開放されたー」
「お疲れ様、受付行ってくるわ」
受付のお姉さんに報酬を聞くとお姉さんの報酬を書いた紙を渡す手は震わせていた。
見てみると、町の奥にある屋敷を報酬にします(庭の木の実なども自由にして下さい)とあった。
場所を聞いて行ってみると三人で住むにも大き過ぎ、庭には花や果物の木があり、あの少年もいた。
「気に入ってくれましたか?」
「ええ、でもこんなにいいのでしょうか」
「多いに悪いことはないじゃないですかー」
「そうだよ〜貰うよ〜」
既に自分達のものにしたように庭の果物を取って食べている二人。
「では、僕は城へ戻ります」
「城?」
「ええ、旅の方でしたか? 僕はこの国の王子ラインといいます、今後ともよろしく」
「え、あ、はい。よろしくお願いします」
ただの少年だと思っていた人が王子で町だと思っていた所は国だった。
シズク→シンジ
レオン→梨花
リリエル→???
異世界転生らしくなってきました。