死神と三人の反逆者
僕も暇つぶしにいろんなところに行ってみることにした。
でも、あったのはノートが一冊だけでそれ以外何も無い。
ノートには《次はお前だ》とだけ書かれていた。
目の前の少女にこれまでの出来事を伝えた。
「ふーん、いろいろあったのね」
ゴスロリ服の少女は片手で紅茶を飲みつつ、もう片方の手でメモを取っているようだ。
「で、アナタ、死んだのは理解してる?」
「え? 俺、死んだのか?」
少女はカップを置き、呆れた顔でこう言った。
「言ってないかしら、私は死の神。簡単に言えば死神よ」
「言ってねーよ、それに何で俺は死んだんだ?」
「アナタの力、望めば何でも叶うのよ? でも代償はそれに合ったものでないといけない」
少女は俺の前まで来て、ペンで胸を指しながら説明した。
「アナタは神を倒すほどの力を願った。そんなの手に入るわけないのに、でも命と引き換えならどうかしら?」
「死んだらどうにもならないじゃないか」
「それもそうね」
少女はまた紅茶を飲みだした。
さっきなくなったはずの紅茶がいつの間にか今入れたかのように湯気がたっている。
それから黙って少女は紅茶を飲み続けた。
「え? 死んだ俺はこれからどうなるんだ?」
少女は何も答えなかった、近寄ってみると。
「紅茶がさんはーい、紅茶がよんはーい、でもおかわりは五杯までー」
寝ていた。
ムカついた俺はカップに入ったまだ湯気のたつ紅茶を頭からぶっかけた。
「熱い、熱いあつ、あっつ! 何するのよ!」
少女はカップやら何かわからない物を投げてきた。
いくつか当たったが柔らかいクッションのようだ、少女はよく見ると半泣きだ。
「これから俺はどうすればいい」
「ふん、誰が教えるもんですか」
いつの間にか出現した紅茶入りのカップを構える。
「ちょ! いいのかしら、こっちにだってカップはあるのよ? うわ! やめなさい!」
テーブルの上に出現するカップが不思議で投げ続けていると、急に体が動かなくなった。
「アナタの肉体と魂を切り離したわ、もうしないと誓うなら戻すけど?」
魂の状態では話すことができないようで、俺は死神の前で土下座をするはめになった。
自業自得である。
体を戻してもらい、改めて謝ったところで話が進んだ。
「アナタ達は転生することができる。それだけ意識がはっきりしてるなら記憶は無くならないでしょ──たぶん」
「達? 他にもいるのか俺みたいなやつが」
「えぇ、それに二人はもう転生したみたいね」
俺みたいなやつがいるなら協力してくれるはずだ。
遅れないよう早く行かなくては。
「転生するにはどうすればいい?」
「簡単、私の後ろのドアを通ること。でも私を通った後は振り返ってはいけない、それは守ること」
「もし破ったら?」
「その時は本当に死んでもらうわ。魂で無をさまよう、本当の死に──最後まで聞きなさいよ!」
ドアの前に立つと声が聞こえてきた。
「ボクを倒ス? 笑わせないでヨ、そんなのヒトのお前にできるわけないだロ!」
あの忌々しい少年の声だ、そんなのできるわけない? できないじゃない! 絶対に殺ってやるんだ!
ドアを開けると、そこには虹色の世界が広がっていた。
青い空、緑の草原、よくわからない生物たち。
足元にはスライムらしき水色の丸い生き物が一匹寄ってきた。
体に登ってくるのを捕まえると、絶妙な柔らかさと弾力で思わず抱きしめてしまった。
すると突然スライムは黄色い光を発して消えてしまった。
倒してしまったのか? こうゆうものなのか? 考えていると。
ポケットの中の何かが動いたような気がした。
出てきたのは手のひらサイズの手帳だ。よく見るとあの死神少女の持っていたのと同じみたいだ。
最初のページをめくると。
《スライムを倒した ただの偶然》
とどうでもいいことまでしっかり書いてあった。
自動でしたことを書いてくれる手帳か、便利だ。
あの死神少女がくれたのか? 分からないが持っていて損はしないだろう。
最後のページには鏡があり、自分の顔を見ると。
「ちょっと、何ですかこれは!」
雫の顔になっていた。
それだけじゃない、服も魔法使いのようなローブになってるし、なんだこれは!
『私のプレゼントは気に入ったかしら?』
どこからか、あの少女の声が聞こえる。
後ろにはカラスが一匹、それが本当に話しているように口を動かして言った。
『この子は私の分身と思っていいわ、私自身はそっちに行けないから』
「なんで、雫の体になってるんですか!」
口調まで雫と同じになっている。
カラスは肩に乗ると近くの町に羽を向けた。
『このまま進みなさい、貴方の仲間がいるはずよ』
「質問に答えなさい!」
『はぁ、転生してそのままの姿なわけないでしょ。貴方が一番印象に残ってる姿にしたのよ』
なってしまったのはいいが、どうも歩きにくい──まだ馴れていないからだろうか。
町の入口には二人、少年とミニスカートで派手な衣装の少女がいた。
「アナタ達ですか、私と同じ目にあったのは」
「し、雫ちゃん!? 何でこんなところに!?」
「魔法少女リリエルちゃんだよ〜よっろしく!」
二人は正反対の自己紹介だった。
少年は雫のことを知っている? 少女の方はただヤベーやつなのか何なのか。
「あなた、私のことを知っているのですか?」
「「あぶない!」」
二人にいきなり大きな声を出され、驚いて戸惑っていると少年の方は私をかばうように前に出た。リリエルと名乗った少女は少年より前にいる。
二人のいる方を見ると、狼のような魔物が走って来ている。
「二人とも! 町に避難を!」
「マジカル〜パーンチ!」
リリエルは魔物を殴り飛ばした、魔物が来たであろう数十メートル先の森まで。
リリエルの拳からは白い煙のようなものが出ていた。
俺と少年が言葉を失っていると、リリエルは。
「じゃあ、行こっか」
「行こっかじゃねーですよ!」
「行こっかじゃないわよ!」
リリエルの手帳に《森の支配者を倒した》が追加された。
やっと異世界転生の始まりです。
シンジ→雫
少年→???
リリエル→???
もうわかってる人もいると思います。