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5話 魔王の仕事

キンッ! カンッカンッ! ドンッ!


広い荒野に、金属などの硬い物がぶつかり合う音がする。荒野を囲うように高台などの建物が並び立ち、そこは一大商業施設ほどの広さがある。

ここは魔王軍の訓練所である。魔王城からは南に位置する場所になる。今ここに虐殺魔王ユマフェルこと裕真は視察に来ていた。


「以前と比べると、大分練度が上がったようだな。」


裕真は高台から訓練をしている魔族達を見下ろしながら隣にいる肌が青く、いかにも悪魔ですと言った風貌の男に声をかける。腕は片方しかない。簡単に例えるなら隻腕のデ○ルマンだ。


「はっ!ユマフェル様直々に考案された訓練マニュアルに沿って訓練をしており、皆効率的に着々とその実力を身につけています!」


青肌の男、名前は『リシトルス』は裕真の言葉に直立不動の姿勢で答える。この男、現在、魔王軍の訓練官長をしている男だ。元々は、旧魔王軍のある部隊の部隊長だったようだが、裕真に片腕を切り落とされ現役を、引退したようだ。裕真はそのことを覚えていないが、本人はその際の戦いで裕真の強さに惚れ込んだようだ。


「彼らには、これから新たな魔王軍としてこの魔大陸を守護してもらわねばならないからな。期待している」


現在、裕真が視察しているのは新人隊員の訓練だ。入隊して一ヶ月で前魔王軍の一年分程の成長を遂げている新人隊員は魔王軍としても期待のルーキーというわけだ。

裕真はリシトルスにそう告げると踵を翻し高台から降りた。


「はっ! 期待に応えられるよう努力しますっ!」


リシトルスは高台を降りる裕真の背中に向け残された片腕で敬礼する。裕真は振り返ることなく訓練所の隅っこに設置された青く輝く魔法陣に乗る。魔法陣の光が強くなり、裕真と魔法陣が消える。裕真の姿が見えなくなるまでリシトルスの敬礼は続いた。


なぜ、裕真が軍の訓練について気にかけているのか。それは魔王の仕事だからという理由も確かにあるが、それだけでは無い。本来、裕真が考える魔王としての目標は勇者の討伐である。


ゲーム時代、この世界には何百という勇者が存在していた。しかし、聖魔戦記オンラインは、今回裕真がラスボスであるディレウロスを倒すまで誰もクリアしたことがない鬼畜ゲーなのだ。それなのに大人気なのは、遊び方の多様性にあるのだろう。レベル1でも村で農業をして暮らすこともできる。カジノでギャンブルだってできる。プレイヤー同士、性別や種族関係なく結婚して平穏に暮らすことも出来るし、PK(プレイヤーキル)や強盗などの犯罪まで体験できるのだ。過去にそれぞれ単体で遊べるゲームや複数の要素が合わさったゲームはあったが、全てが揃ったゲームはこの聖魔戦記オンラインが初めてだろう。


話が逸れてしまった。つまり、人気ゲームであった以上、勇者として魔王討伐を目指すプレイヤーも少なくなかった。現実世界になった今でも、もしかしたら毎日何十何百と言った新規の勇者が誕生しているかもしれない。


しかし、裕真一人でそんな何人もの勇者を相手にするのはめんどくさい。そもそも、裕真が戦って楽しい相手などほんの一握りもいないだろう。それ以外は振い落さなければならない。振るい落とすための網はより大きな穴であればあるほど最後に大きな敵だけ残るのだ。


つまり、魔王軍は振い落しの穴という訳だ。今は穴を大きく成長させる。以前の魔王軍の訓練はただの喧嘩だった。効率が悪すぎる。そこで裕真は効率的な訓練マニュアルを考案し、それをリシトルスに渡したのだ。


玉座の前に青い魔法陣が、現れる。その中には仁王立ちの裕真の姿があった。


「魔王軍も仕上がれば俺も勇者討伐に向けた準備がしやすくなる」


裕真は玉座に腰掛けながら、元勇者とは思えぬ邪悪な笑みを浮かべて今後の計画を、思案するのだった。

ご覧頂きありがとうございました。

皆さまの感想等お待ちしております。

誤字や脱字は適宜修正していきますので、発見された方は教えていただけると嬉しいです。

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