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4話 虐殺魔王

裕真が魔王となることを宣言してから1ヶ月がたった。現在、魔王として魔族に認められている裕真だが、ここまで来るのに一苦労している。


 裕真が魔王になると宣言した際、魔大陸は3つの派閥に別れた。1つ目は、裕真を魔王として新たな魔大陸を目指す派閥。2つ目は、裕真を魔王と認めず、他者を推薦または自身が魔王となることを宣言した派閥。3つ目はどうでもいいから早く魔王を決めてしっかり国を回してくれ、と我関せずな派閥だ。


 どこの世界も政治に無関心な物は一定数いる。これが異世界だろうが、魔大陸の魔族だろうがそこに変わりは無いのだろう。


 さて、話は戻り、この魔大陸で魔王と認められる方法として選挙は使えない。なぜなら選挙という仕組みそのものが無いからだ。よって平和的で誰もがなっとくせざる負えない選挙が使えない以上、力技で認めさせる必要がある。


 そう、裕真は、この1ヶ月間、敵対派閥の魔族達と決闘してきたのだ。決闘と言っても魔王を葬ったもと勇者である裕真が戦うのだ。基本的に相手は皆殺しの刑に処されている。


 そんなこともあり、裕真につけられた異名が『虐殺魔王』だ。なんと心外な名前だろう。これでも、裕真は捨て猫に餌をやったり、蛹の状態で落ちているセミを木に返したり、コンビニでもらったお釣りの1円とレシートを募金箱に突っ込んだりしたこともある心優しい男だ。


「はぁ~っ……」


 裕真は大きくため息をつく。疲れからくるため息なのか、不名誉な異名とこれからの生活を考えてのため息か。裕真自身でも判断できない。


「ユマフェル様!」


 むぎゅっ。


 まだ、聞き慣れない名前とともに後ろから柔らかい物が首筋にまとわりついてきた。ユマフェルとは現在裕真が名乗っている名だ。本名のユマと魔王ルシフェルの名を足しユマフェル。安直な厨二ネームだ。異名と合わせ、虐殺魔王ユマフェルとして魔大陸の民達にその名を知られている。


(またか……)


 裕真はまた出そうになる溜息を我慢して思いあたる名前を探す。


「イリアか。」


 裕真ことユマフェルは、まとわりついてきた者の名前を呼ぶ。


「さすがユマフェル様! 私の顔を見なくても私がわかるくらい私のことを考えてくれてるんですね~!」


 首筋に絡めた腕に更に力を込めてくる。彼女はイリア。裕真が勇者時代に倒した(ゲームで)魔王ディレウロスが人間の奴隷との間に作った半魔の子だ。ディレウロスが生きていた時代は使用人として魔王城で生活していたそうだ。見た目は人間だ。黒いロングヘアーに赤い瞳、肌は外に出た事がないのかと思うほど白い。身長はそんなに高くなく、155㎝くらいか。そしてさっきから後頭部に当たっている柔らかい物。身長の割に大きく林檎くらいあるだろう。実にいいスタイルをしている。母親もそうだったのならディレウロスが攫ったのもうなずける。見た目の年齢的には18程度だろうか。族に言われる美少女である。


「こんなことする奴はイリアしかいない。」


 首筋に絡まった腕を解く。


「もぉ〜。 ユマフェル様は恥ずかしがり屋なんだから。 私はいつまででもくっ付いていたいのに〜」


 ぷーッと頬を膨らませながらイリアが離れた。

 イリアはディレウロスに対していい感情を持っていなかった。魔王という肩書通り乱暴でわがままだ。更に顔が気に食わない、見るだけで涙目になりそうなあの般若のような顔。いくら自分の血を引いていても奴隷の子だと言うことでかなり雑な扱いを受けていたようだ。それは他の正妻といえる女王とその子に対するパフォーマンスだったのかもしれないが、イリアが父親であるディレウロスを嫌うのには十分な理由だった。


 その日もイリアはディレウロスを怒らせ、殴られた上に罰則を与えられていた。罰則といっても夕食抜きと言う魔王が与える罰としてはかなり可愛いものだったらしいので、本当は気にかけていたのではないかとも思う。そう考えると、ディレウロスを討伐する前に酒でも一杯やりながら悩みでも聞いてやればよかった気もする。まぁ、未成年だから飲めないけど。


そんな、イリアが裕真に懐いてしまったのは訳がある。1つは自分をいじめる怖い魔王を倒したのが裕真だから。もう1つは裕真が魔王になると宣言したとき、調子に乗ってある言葉を言ってしまったためだ。この事はまた機会があれば述べよう。


「ユマフェル様、今日はなんだかお疲れみたいですね? まだ、明るいですが今から癒して差し上げましょうか?」


少し頬を赤らめながらイリアが裕真の腕に指を這わす。イリアは半魔であり、通常の人間に比べて強い魔力を持っている。そして、イリア得意とするのは回復系の魔法のようだ。

この1ヶ月、反対派の魔族達との戦いで傷つく事はなかったにしろ、疲れる事は多々あった。その都度、裕真を癒したのは他ならぬイリアだ。その癒しは魔法だけでなく、夜も踏まえてのことではあるが。


「ふん。それも良かろう。」


「キャッ!」


裕真はイリアを抱えて寝室へと向かう。昼間だが、そんな事は関係ない。今の名は『虐殺魔王ユマフェル』。現在裕真に逆らう者はおらず、誰に遠慮することも無い。たとえ相手が神だとしても。


だって、セクシャルな状況なのだから。

ご覧頂きありがとうございます。

感想やご意見お待ちしています。

誤字脱字などは適宜修正していきますので、発見した方は教えていただけると嬉しいです。

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