2話 魔王城:決戦の間から始めます
裕真は目を覚ます。そこはモニターで見た異世界が広がっていた。ただ、予想と違う点が1つ。
「ここは魔王城の中か……。」
そう。裕真がいる場所はゲームで魔王と最後の戦いを繰り広げた『魔王城:決戦の間』である。
高い天井、それを支える太い柱。柱にはそれぞれ魔族の頭蓋骨が飾れており、その一本角に蝋燭が刺さってあたりを怪しく照らしている。
「てっきり、始まりの村にでも居るのかと思ったが、まさかここからとは……。」
始まりの村とは聖魔戦記オンラインでプレイヤーが初めのチュートリアルを受ける場所だ。全てのプレイヤーが始まりの村から旅立ち、各々が好きなことをする。
裕真のようにクリアを目指して冒険する者、釣りや農業などを楽しむ者、秘境などを冒険し隠し要素などを探す者様々だ。
「よく出来てるな。」
見た目もゲームで作ったアバター通りだ。装備は白銀の鎧に聖剣レイスハート。レイスハートに自身の顔を写してみるとそれも自分が作ったアバターそのままだった。
裕真は真面目にアバターを作る派だ。めちゃくちゃイケメンにはしないが、自分の顔を元に少し上方修正する。中の上か上の下くらいの顔を作るのが好きだ。アバターの顔にはクマはなく、それなりに丹精な顔立ちだろう。勇者らしく金髪にしてある。
「そういえば、ステータスはっと……」
裕真がステータスを確認しようと考えると目の前にゲームでお馴染みのステータス画面が表示された。どうやら、見たいと考えるだけで表示されるらしい。便利な物である。
「よし。 ステータスもアイテムもそのままだな」
裕真のキャラクターはカンストしている。ゲーム内最高レベルの99Levelであり、その他ステータスも全てMAXと言うやり込みチートキャラだ。
そして、先程魔王がドロップしたアイテムも全てストレージ内に入っていた。
ドドドドドッ!
ステータスを確認していると大量の足音が近づいてきた。その足音は迷わず裕真がいる部屋。決戦の間に向かってきていた。
バダンッ!
入り口にあった大きな扉が勢いよく押し開かれた。そこから100を超える魔族がどんどん雪崩れ込んでくる。
「おいっ! お前は勇者だなっ!魔王様はどうしたっ!」
魔族の1人が叫ぶ。魔王を倒すにあたり、側近であった魔族などとも戦闘を行い全て倒してしまっている。その為、今目の前にいる一般兵達には情報が行き渡らないのだろう。自分達の天敵がいるにも関わらず魔王の安否を確認にくるなんで、本当に主人思いのいい部下達だ。
そんな事を考えていると、辺りを一周囲まれてしまった。
「……あ、そうだ」
この状況どうしようかと考える。もちろん全員斬り伏せて解決するのは簡単だ。100体の魔族だろうが、カンストキャラにとっては障害にはならない。○○無双的ゲームの状況になるだけだ。それはやり飽きた。
そこで裕真はある名案を思いついたのだ。
裕真は白銀の鎧や聖剣レイスハートとストレージの装備を入れ替えて宣言した。
「魔王は倒れたっ! そして、今日からこの俺が魔王だっ! 全員俺を讃えろっ!」
ここは魔王城:決戦の間
現在、魔族100体の口が開いたまま時間が止まっていた。
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