電話で愛を確かめ合ってみた(ボイスドラマ台本)
楓「もしもし、秋?」
秋「わぁ、テンション高っ(笑)」
楓「秋から電話が来たらテンション上がるに決まってるでしょ」
秋「そう?」
楓「そう!」
秋「あはは。電話、出てくれて良かったよ。いま大丈夫?」
楓「大丈夫ー。部屋でだらだらしてたとこ」
秋「そっかそっか」
楓「それで、どうしたの?電話なんて珍しいね」
秋「声が聞きたくなったから」
楓「…えへへ、なんだか照れちゃうな」
秋「ちょっ、普通に照れるのやめてくれない?恥ずかしくなってきた」
楓「ふふふ、秋可愛い」
秋「可愛くねぇよ」
楓「私も秋の声聞きたかった」
秋「うん」
楓「何だか久しぶりな気がする」
秋「最近会えてないもんな」
楓「うん。会いたいよー!」
秋「俺も会いたい」
楓「こんなに会ってないこと今までないよね」
秋「うん、そうだな」
楓「秋が卒業旅行に行った時は一週間だったっけ」
秋「そうそう。あん時は電話越しに『会いたいよー』って泣いてて」
楓「そんな泣き方してないもん」
秋「泣いたことは認めるんだ」
楓「あ」
秋「あの後みんなにからかわれて大変だったんだから」
楓「そ、そんなこと言ってなかったじゃん」
秋「そりゃまぁ、俺だって楓に会いたかったし?」
楓「なぁんだ、秋も一緒だったんだ」
秋「おう。ま、俺は楓と違ってもう大人だったから、空気読んだってのもあるけど」
楓「また子供扱いした」
秋「だって本当に俺のほうが年上なんだから」
楓「私だってもう立派な大人だもん」
秋「本当かな?」
楓「本当!大人だもん」
秋「じゃぁ、今回は泣いてない?」
楓「…ナイテナイヨ」
秋「あからさまに動揺してる」
楓「ワタシ、ナイテナイ。ドウヨウ、ナシデス」
秋「はいはい、泣いてたのね」
楓「だって、淋しいんだよ?」
秋「うん」
楓「もうずっと会ってない」
秋「……ボソボソ(ごめん)」
楓「え?なぁに?」
秋「え?何も言ってないけど」
楓「そう?何か聞こえた気がしたけど」
秋「本当に何も言ってないよ」
楓「やだー、やめてよ。」
秋「やめてって言われても」
楓「いま一人で部屋にいるんだからね」
秋「楓はほんと怖いのダメだよな」
楓「うん、無理無理無理!」
秋「ほら、後ろ見てみ。何かいるかも」
楓「えっ!?やめてやめてやめて、ほんと怖い」
秋「いいからいいから。見てみ」
楓「………何もいない、よ」
秋「冗談に決まってるでしょ」
楓「もうー!!」
秋「……ボソボソ。(いるけどな)」
楓「ん?何か言った?」
秋「え?何も言ってないけど」
楓「やだー!もうほんとに怖いからやめてってば」
秋「ごめんごめん、ちょっとからかいたくなっただけ」
楓「やっぱり何か言ったんだ!」
秋「うん」
楓「もぉー!!」
秋「ごめんて。でも、泣かなかったじゃん、いいこいいこ」
楓「だーかーらー!子供じゃないんだから泣かないってば」
秋「うん。じゃぁ、泣かないオトナな楓さんに言いたいことが」
楓「あら、何かしら?」
秋「…別れよう」
楓「………え?」
秋「楓。俺と、別れてください」
楓「ちょ、ちょっと、ちょっと待ってよ、どういうこと?」
秋「今日で何日会ってないかわかる?」
楓「そんなの、覚えてるわけないでしょ」
秋「49日」
楓「…」
秋「ごめん。もっと早く連絡できれば良かったんだけど、楓超怖がりじゃん?どうしたら怖がらせないで話ができるかって、色々考えてて、ギリギリになっちゃって」
楓「ちょっと」
秋「もう迎えも来てるし、行かなくちゃならないんだ」
楓「…ちょっと」
秋「楓は俺に全然会ってないって言ってるけど、実は俺は結構会ったりしてたんだ。会えなくなってから、いっぱい泣いてくれたことも、ご飯食べられてないことも、あんまり眠れてないことも知ってる」
楓「…待って」
秋「何度も話しかけようとしたけれど、怖がらせちゃいけないと思って何にも言えなかった。けど。話しかけても怖がらせることなんてなかったんだ」
楓「…どういうこと?」
秋「後ろ、見てみ?」
楓「…」
秋「何にも見えないでしょ?何も。何も。」
秋「…俺には、大好きな楓の顔、見えてるんだけどなぁ。…こんなに、近くに…いるんだけどなぁ。もう、抱きしめることも…一緒に歩くことも…何も。何も、できない…」
秋「だから」
楓「ねぇ、秋」
秋「…ん?」
楓「わ、私…大人、だから…気付いてたよ。秋から電話が来た時…変だなって、わかってたよ?」
秋「じゃぁどうして」
楓「でもね、秋だから。大好きな、秋の名前が、書いてあったから。だから出たの」
秋「…そっか」
楓「ごめんね、秋」
秋「かえで?」
楓「つらいこと言わせちゃってごめん。私のせいだね。私がずっと、元気なかったから…泣いてばっかりだったから」
秋「そんなことない。俺がこんなことになったのが悪いんだから」
楓「ごめんね。引きこもってばっかりで、四十九日だったのに行けなかった」
秋「知ってる。なんだったら俺もずっと隣にいた」
楓「主役なのに?」
秋「主役なのに」
楓「秋、大人なのに悪い子だ」
秋「いいんだよ、たぶん誰も気付いてない」
楓「そっか」
楓「秋。さっきの話だけど」
秋「…うん」
楓「なかったことにして」
秋「え?」
楓「私がいっぱい泣いたことも、ご飯食べられてないことも、あんまり眠れてないことも。…別れようっていうのも、なかったことにして」
秋「どういうこと?」
楓「これからは、秋が元気だった頃みたいに、いっぱい笑う。ご飯もちゃんと食べる。羊いっぱい数えてぐっすり寝る。それでね、秋」
秋「うん」
楓「私と、別れてください(笑顔で)」
秋「……はい」
楓「今日は秋が泣き虫だね」
秋「うるさい、最後くらい、いいだろ」
楓「…うん、いいよ」
秋「そろそろ」
楓「うん」
秋「行くわ」
楓「あ、待って」
秋「?」
楓「秋、大好き。今までずっと、ずっと…本当に、あり…がとう」
秋「俺も。大好き。楓、楓…かえ、で……」
楓「…なぁに?」
秋「…泣き虫」
楓「うるさい、最後くらい、いいでしょ」
秋「…うん、いいよ」
楓「次会う時は、笑って会おう?」
秋「おう。笑い皺だらけのばあちゃんになって来い」
楓「そうなったらきっと秋からじゃ私だってわかんないから、私が秋のこと探すね」
秋「ばーか。そこはかっこよく俺が見つけてやるから」
楓「(笑)」
秋「(笑)…それじゃ」
楓「うん」
秋「楓、またな」
楓「またね、秋」
楓「……しゅうー!ありがとーーー!!」
楓「よし、ご飯いっぱい食べて、羊数えるぞーっ」




