プニんプニん
プニん、プニんと不思議な感触が体に伝わる。
何が体に当たっているのか確かめようとまぶたを開…
こうとした時、転移を開始する直前にあいつが発した言葉が頭をよぎった。
「…もし途中で目ぇ開けたら、転移に失敗して、異世界着く頃にはその体がただの肉の塊になっちまうから、そこんとこよろピク★」
…もう目を開いてもいいだろうか?
そういえば、さっきよりも体が軽い気がする。
まぶたを通って入ってくる光が、懐かしい…太陽のような光に変わっている気がする。
いいよね?
もう着いたよね?
あー、でも、まだだったらどうしよう…
…と、目を開けるべきか否か、[慎重にいく]か[好奇心に身を任せるand自分の勘を信じる]か、どちらを取るかを脳をフル回転させて考えている時に、
回想のへんから忘れていたあの感触が戻ってきた。
プニん、プニん。
「…。」
プニん、プニん。
「…。」
プニん
「……?」
プニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニんプニん…
「だああああああああああああああああ!!!!!!うるっせえええええええええ!!!!!!!!!」
おれは立ち上がって、今まで団子虫のように丸くしていた体を思いっっっっっっっきり広げた。
そして、さっきからプニプニしていたプニプニ野郎に一発入れようと、「フッざけんなよ、うっとーしいんだよテメー!!!」なんて罵りながら、眼を見開いて拳を大きく後ろに引き、力を込めた…のはいいが、対象がいない。
まさか、背後に回り込まれた…?
暴言を吐き、殴ろうとした…そんなおれを、プニプニ野郎は許してくれるだろうか…?
ここは異世界、今までとは違う世界。
もしかしたら、後ろにいるのは悪い奴で、おれは奴隷にされるかもしれない。
いや、ここは異世界だ。
もしかしたら、後ろにいるのは異形の者、モンスターかもしれない…。
……ん?モンスター?プニプニ野郎が?だとしたら………………………
恐る恐る後ろに振り向く。ヤバそうな奴がいたら逃げる。それが駄目なら、戦うまでだ。さっき、腰のあたりが重いと思って見てみると、刀が装備されていたのに気がついた。おそらく、あいつから貰った『伝説の武器』だろう。これで、何がいようともぶった切ってやる。
刀に手を置き、背後の敵を睨む………………………
…予想が当たった。
そこにいたのは、身体が透けていて、プニんプニん動いていて、水の塊の様なもの………スライムだった。
予想していた青色ではなく、茶色のようだったが。
まあ、スライムならみんな雑魚だろう。
そう思って、「ふっ…。」と鼻で笑ってから、刀を抜き、「先手必しょおおおおおおう!!!」と勇ましい声を上げながら、おれはスライムに斬りか
かった。
自分でも驚くほどの綺麗な太刀筋が、スライムに向かっていった。とにかく速い。『伝説の武器』の能力だろうか。剣道もやったことの無かったおれが、簡単に刀でスライムを倒…
「ぁい?」
変な声が出た。
"……おれは…この時、空を………飛んだんだ…"
と言えば聞こえはいいが、どうやら凄い勢いで刀を握った右腕がぶっ飛ばされ、身体が持っていかれたようだ。
10メートルほど後方に下げられた。
何故か?
まあ、予想はできていた。信じたくは無かったが。
しかし、前方のスライムを見て、予想は確信に変わった。
さっきと何も変わらない、まあるい形のそいつは、勝ち誇ったように、プニんプニん跳ねている。
どうやら、『伝説の武器』はスライムを斬ることなく、逆にスライムに弾かれたようだ。
「これが『伝説の武器』? え? ………………………は??」
カッコつけたのに斬れなかった恥ずかしさと、(おそらく)雑魚モンスターのスライムでさえ倒すことのできない『伝説の武器』を渡された怒りで、頭がおかしくなりそうだった。
なので、とりあえず、
おれに武器を渡し、この世界に連れてきたやつにイライラをぶつける事にした。
大きく息を吸って〜
せ〜のっ
『ふっざけんなあああ!!!!オロチいいいいいいい!!!!!!!!!』