私達の朝
太陽が空を淡い色で包んで、その日の始まりを優しく告げる。肌寒いような風の中に、柔らかい温度が溶け込んでいる。
貴方はいつも、私が起きると朝だー!!朝だー!!と騒いでいるから、日の出がこんなに静かなものだなんて思ってもいなかった。
「ね、どう?綺麗でしょ」
「…うん」
あんまり優しい景色だったから私は頷くだけで精一杯で、一瞬だけ遅れて気付いたのは体を抱き寄せた暖かい手。
「俺さ、雛に見せたくって時間計算したんだ」
「態々計算したばいと?」
「まあねっ」
驚いて顔を上げるといつもより近い貴方が何だかいつもより眩しく笑ってる様に見えたから、反射的に目を逸らしてしまう。
「あ、照れてる?」
「…えへへ、内緒ばい」
私の曖昧な言葉にも、貴方はへへっと笑った。
改まって言わなくたって分かってくれるところが好きだなって、私からもそっと寄り添う。
目の前にはまるで祝福してくれてるみたいな朝日。もう寒いだなんて思わなかった。
「綺麗かね」
「本当にな」
蕩ける様な温度とゆっくりと解けてゆく夜の闇、そしてどちらからするでも無いおはようのキス。それだけでもう何も要らない。
二人だけの朝。