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ゆめちゃん、狼さんに再び会う。

ゆめちゃんは子ヤギ達を優しく説得・・・はできなかったようで。

ゆめちゃんは今子ヤギたちを説得しています。


「暇つぶしに狼さんの人生を狂わせてしまうなんて、酷いと思わないの?」

「だって狼だぜ?悪い奴に決まってんじゃん。」

「そうよ!お母さんは狼は悪い奴だって言ってたもん。」


流石のゆめちゃんも七匹も相手にするのは大変なので、一番目と二番目のお兄さんとお姉さんとだけ話すことにしました。


「確かに、悪い狼さんもいると思うわ。でもあの狼さんはただお腹がすいていて、食料を分けてもらいたかっただけなのよ。」

「お腹すいてたんなら俺たちを食べたかもしんないじゃん。」

「そうよ!私たちが食べられちゃってもいいっていうの!?」

「あの狼さんはお肉が食べられないのよ、草食なの。」


だからあの残念狼さんは狼の群れにいられなかったのです。


「そんなの知らなーい。」

「知らないもん。」


どうやら難航しているようです。仕方がないので、ゆめちゃんはリュックサックの中から先ほど録音していたICレコーダーを取り出そうとしましたが、それは最終手段として取っておくことにしました。


「そうね、まず狼さんも悪いと思うわ。この村に家はいくつもあるのに、子供たちだけで留守番をしている家を訪ねるなんて警戒されて仕方がないわね。でも、あなたたちの留守番の仕方はよくないわ。」

「留守番の仕方?」

「そうよ。何のためにあなたたちは7匹もいるの?訪問者は狼さん一匹だけなのはわかったのでしょう?」

「うん・・・他には誰もいなかったけど・・?」


思ってもみないことを言われて、お姉さんヤギは戸惑っているようです。ゆめちゃんは今度はお兄さんヤギに問いかけます。


「狼さんがこの村の住人ではないことは知っていた?」

「うん、見たことない奴だったからな。」

「それならあなたたちは狼さんがいい狼か悪い狼かわからなかったのよね?」

「だからそう言ってんじゃん。」


二匹の答えを聞き、ゆめちゃんは両手を腰に当て、諭すように言います。


「なら、まず、自分達だけでどうにかできると思ってはいけないわ。」

「どういうこと?」

「狼さんが強くてとっても悪い狼さんだったらどうするの?ドアを破られて、あなたたち全員食べられちゃってたわよ。あなたたちだけじゃない。あなたたちのお母さんも危ない目に合うところだったのよ?」


思ってもみなかったことをゆめちゃんに指摘されたのでしょう。子ヤギたちはいっせいに静かになりました。


「玄関に狼さんを引き付けておくのはあなたたち二匹だけで十分。裏口から別の子は近所に助けを呼びに行くべきだったわ。そうすれば、狼さんがこの村に通された客人だったのがわかって、あなたたちも狼さんに悪戯をなんて考えなかったでしょう?」


留守番というものは大人しく家でじっとしているものと子ヤギたちは思っていました。不審者が来た時の対応など考えたことがなかったのです。


「それと、あまり大人の目を信用しないほうがいいわ。さっきの言葉とは矛盾してしまうけれど、あなたたちは村の中には危険な者はいないと思っているわね?」

「いないよ。だって門番のおっちゃんたちが悪い奴は通さないもん。」

「その門番さんだって間違うこともあるのよ?」

「じゃあ、どうすればいいの?」

「自分の目で見て考える事ね。それを続けていれば人、というか相手を見る目が養われるわ。まだあなたたちには難しいだろうけど。」


お兄さんヤギがムッとしました。ゆめちゃんの挑発にのってくれたようです。


「やってやるよ!!すぐいい奴か悪い奴か見抜けるようになってやる!!」

「あら、かっこいいわね。まあ、その前に狼さんは悪くなかったとお母さんや村の人に言ってちょうだい。狼さんは真面目に働きたいと思っているの。今のままでは仕事を探すことなんてできないわ。」


二匹は顔を見合わせると、他の五匹とひそひそと相談を始めました。


「他人から告げ口されるより、自分たちから言い出した方が少しでもいい印象を与えられると思うわよ。」


七匹がひるんだ今がチャンスなので、ゆめちゃんは追い打ちをかけてみます。しばらく相談していた子ヤギたちですが、しぶしぶ自分たちのイタズラだったことをみんなに白状することにしました。


ゆめちゃんは帰ってきたお母さんヤギにも子ヤギたちのことをもっと気にかけてあげてほしいとお願いしました。子ヤギたちの寂しい気持ちもゆめちゃんはわかっていたのです。


・・・・・・


さて、子ヤギたちから証言してもらったことによって、狼さんの誤解は解けたのですが、肝心の狼さんにゆめちゃんはまだ会えていません。先に、村長さんたちに犯罪者ー指名手配犯がこの村にいることを告げることにしました。


「おお、ゆめさん、この村は見て回ったかい?いい村だろう。この村は虐げられた動物が身を寄せ集まってできた村だ。この村にいれば安心して暮らせるよ。」

「村長さん、大事なお話があるのですが、聞いていただけますか?」

「なんだい?」


先程の村長さんの話を聞いて、ゆめちゃんはもう一つ言わなくてはいけないことができました。


「村長さんも外の世界で辛いことがあってこの村に来たのですか?外の世界は嫌いですか?」

「・・・ああ、そうだよ。」

「そうですか。でも、それではこの村の人たちを守ることはできません。村長さんや門番の方は外を向かなければいけないんです。嫌いな外の世界に真っ正面から相手をして、背中で村人たちを守らなければ、村の平和は保てません。確かに、村の人が困っていないか、いさかいが起きていないかとかは村の中を見ていなけれわかりませんが、いつまでも外に背中を向けていたら、外から悪い人が入ってきてしまいますよ。」

「そんなことは!」

「村を守る人が一緒に村の中で守られていてはいけないのです。外に目を向けていれば、指名手配犯を村の中に入れてしまうようなことはしなかったでしょう。」

「なっ、指名手配犯じゃと?」

「ええ、キットさんから教えていただきました。」


指名手配犯の絵を村長さんに見せます。


「こ、この方たちは」

「ええ、名簿にもきちんと名前が書かれていましたね。幸い、この指名手配犯たちは殺人ではなく、詐欺師です。逆にこの村から出さなければ被害はおこりません。」

「詐欺師だなんて・・。」

「この村の家は木造ですね、レンガの家はいかがですか?火にも強いですよ?レンガの家の良さを広めるために、広場を貸してもらっていいでしょうか?そこに簡易的に藁の家、木の家、レンガの家を建てて、村の人に見比べていただきたいのです。・・・これが三匹のいつもの手口だそうです。」


村長さんは真っ青になりました。ゆめちゃんが言った言葉は、営業に来たといったサラリーマンの言った言葉と全く同じだったのです。そこへパフォーマンスが始まったと村長を呼びに副村長のかばさんが呼びに来ました。そして、ゆめちゃんと村長さんは急いで広場へ行きました。


・・・・・


「・・・ので、比べてみましょう。こちらが藁の家です。まあ、簡単にできますし、費用もお安いで」

「オー、ウマソウナ、コブタガ、イルゾー。タベルゾー。」

「うわ!こんなところに狼が!!」


営業に来た3匹の豚が家の説明をしていると、棒読みでひどくへたくそな役者が出てきました。当たってほしくない嫌な予感にきちんと応えてくれる、流石残念狼さんです。とりあえずゆめちゃんは、三匹の豚がパフォーマンスをしているうちにキットさんに連絡を取ることにしました。

動物の村編が終わらなかった。次回で終わるだろうか。

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