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ゆめちゃん王様に会う。

童話を目指していたので、語り口調が丁寧語です。

とある豪邸にゆめちゃんという5歳の可愛い女の子が住んでいました。お父さんもお母さんも仕事で忙しくしていて、おうちには滅多に帰ってきません。


とても寂しかったのですが、お父さんとお母さんが働いてくれてるから、自分はここで生活できるのだと思うと我儘も言うことはありませんでした。


同年代のお友達もいないゆめちゃんには、家政婦さんと家庭教師の先生、警備の人たちとしか話す機会がなく、おうちは難しい本であふれていて、暇だったため、それを読んだりしている間にすっかりしっかりとした子供になっていました。


ある日のこと、ゆめちゃんは自分のお部屋で寝る準備をしていました。ふわふわの茶色い髪の毛を両側の高い位置で縛っていたのを取り、ピンクのもこもこしたパジャマに着替えてベッドに入ろうとしていると、ゆめちゃんの前に服を着た大きなバクが現れました。バクは絵本に出てくるようなデフォルメされた外見で、頭には王冠をかぶっていました。バクはゆめちゃんに話しかけます。


「わしはおとぎワールドを治めている王様、バク99世じゃ。きょうはゆめちゃんにお願いがあって来たのじゃ。」

「不法侵入者ね。警備の人を呼ばなくちゃいけないわ。」


連絡をしに行こうとするゆめちゃんをバク王は慌てて呼び止め、焦った声で続けます。


「待ってくれ。わしはゆめちゃんにお願いがあって来ただけであって、泥棒などではないぞ。」

「泥棒も自分が泥棒だとはよほどの馬鹿か自己顕示欲の強い泥棒でもない限り、言わないと思うわ。」

「いや、その、頼む!わしの話を聞いてほしいんじゃ。」

「わたしに何のメリットがあるというの?話し相手なら他をあたってちょうだい。」


けんもほろろな言葉を返すゆめちゃんに、バク王は半泣きになりながらも必死に話を聞いてくれるように頼みこみました。その甲斐あってか、ゆめちゃんは、渋々話を聞いてあげることにしました。もちろん、聞き終えたら警備の人に引き渡すつもりですが。


「おとぎワールドとは、この地球とは違う世界にあるが、地球と密接につながっておるところじゃ。地球の子供たちの夢をみる力で作られておるからな。子供の絵本や昔話、そういった話の登場人物たちが暮らしているところと思ってくれて構わぬ。」


一旦話を区切ると、バク王はちゃぶ台と湯呑み茶碗を魔法で出して、ずずずっとお茶をすすりました。湯呑みは一つで、ゆめちゃんにお茶を出すつもりはないようです。


「じゃが、最近おとぎワールドに悪役が増えすぎてのお。正義と悪のバランスが悪くなっておとぎワールド崩壊の危機なのじゃ。そこで、ゆめちゃんにおとぎワールドに来て、悪役を改心させてほしい。なに、簡単なことじゃ、この本を悪役と思われる奴に向ければ終わる。」


そう言うと一冊の本を取り出し、ゆめちゃんに渡します。


「その本はゆめちゃんが開いても真っ白にしか見えないじゃろう。だが、悪役が見れば改心しないと大変な目に合うという警告が書かれている。」


またずずずっとお茶を飲み、ふうっと一息つくとバク王は言いました。


「引き受けてくれるな?」


聞き終えたら警備の人に引き渡す予定でしたが、あまりにもひどいバク王の一方的な言葉にゆめちゃんは頭を押さえます。深いため息をつくと、親切心からバク王に返事をしてあげることにしました。


「まず、第一に、その話を信じる根拠がないわ。二つ目、なぜこんなわたしのような、か弱い子供に頼むのかしら、自分でやりなさいな。三つ目、おとぎワールドへ行くということは、この家を離れるということよね?いきなり子供が家からいなくなったらどんな騒ぎになると思っているの。四つ目、何故わたしがこんな不十分な説明で納得すると思っているのかわからないわ。五つ目、勝手に人の部屋に入ってきて謝罪はないわ、お茶を出して飲んでくつろぐわ、わたしには当然のようにお茶をすすめないわ、失礼極まりなくて不愉快よ。そして、何よりあなたの存在事態が嘘くさいわ。」


ゆめちゃんは一気にそこまで言うと、とてもとても冷たい目でバク王を見て最後にこう言いました。


「わたしにわけのわからない話を聞かせて、無駄な時間を取らせるなんて真似、よくもしてくれたわね。もう話すこともないでしょう、お引き取り願いたいわ。」


今度こそ警備室に連絡しようとしたのですが、大慌てでバク王が叫びます。


「待ってくれ!頼む」


冷たい目線を受け、バク王は姿勢を正し、正座で座りなおして口調も改めました。


「ゆ、ゆめ殿、お願いします。待ってください。ゆめ殿でなければ駄目なのです。わしの、いえ、私の言葉が足りませんでした。私は直接おとぎワールドに介入することはできないのです。おとぎワールドに子供、ゆめ殿に来ていただくことによって、本当にそういう世界があることを知っていただき、『夢を見る力』を増幅させておとぎワールドを少しでも安定させたいのです。おとぎワールドに行っている間は地球で時間は進みません。なので、騒ぎになることはありません。」


冷や汗をかきながら、バク王は続けます。


「ゆめ殿はおとぎ話なんてくだらないものだと読んだことはありませんよね?だからこそ適任者なのです。おとぎワールドの住人達と地球に伝えられている話では若干違いがあり、悪役も違う話も多いのです。お願いします。ゆめ殿しかいないのです。か、数々の無礼を・・おゆ・・お許し・・・ください。」


恐らく非常に謝るという行為が不本意だったのでしょう、ですが、つっかえながら、小さな声で謝罪もしました。ゆめちゃんはいくらか冷めた視線の温度を上げてあげました。


「そう。じゃあ、後はおとぎワールドが存在する証拠とあなたの胡散臭さが解消されれば、ああ、もう一つ疑問があるの。おとぎワールドが崩壊すると、地球は影響を受けるのかしら?」

「は、はい。地球の子供が夢を見られなくなります。ほぼ無気力に近い状態で生き続けます。」


すごく重要なところをしゃべらなかったバク王に、わざとなのか、馬鹿なのかと考え、どちらでもいいという結論にゆめちゃんは達しました。ちょうど退屈をしていたところだし、何より、おとぎワールドがあることを知っていたゆめちゃんには、そこに行きたい理由があったのです。もちろんバク王は知らないでしょうし、自分の情報を易々と渡すつもりはないので、ゆめちゃんはしゃべりませんが。


「ええと、おとぎワールドの証明はできな・・難しいんですが、私の存在というか、身元なら証明できます。」


そう言うと、バク王は自信満々に名刺を出しました。そこには『地球人の夢管理人兼おとぎワールド管理人兼バク王国国王』とあり、さらに胡散臭さが増しただけでした。


ああ、馬鹿なんだ。こんなのが王様だなんて家臣たちは苦労しているのでしょうね。とゆめちゃんは思いましたが、特に口には出しませんでした。その分目は存分に語っていましたが、バク王はそれに気づきませんでした。


「まあ、いいわ。そうね、引き受けてあげてもいいわ。それで、時給、この場合は日当になるのかしら、そちらの話に移りましょうか。」

「え?」

「あら。こんないたいけな幼女に異世界を旅して悪役を探させるなんて仕事をさせるのよ?お給料が出るのは当然のことなのではないかしら?もちろんお給料と向こうでの旅費、滞在費諸々は別料金よ、当たり前よね?」


それから労働交渉が始まり、ほぼゆめちゃんの要望が通り、1日1万円、悪役を改心させたら3万円もらえることになりました。お給料を何に使うか考えながら、とりあえず今日のところは寝ることにしました。明日、旅支度が整い次第、ゆめちゃんのおとぎワールド世直し旅がスタートします。

いたいけな幼女(笑)ゆめちゃん、いかがでしたでしょうか。


お読みいただきありがとうございました。

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