↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

婚約破棄のたくらみをただ黙って聞いていたメイドの話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/09/19

「罪人、ハンナ!取り調べだ!出ろ!」


「はい・・・」


 私はハンナ、王太子付きの元メイドである。

 今は学園の使用人室で監禁をされている状態だわ。



 会議室で取り調べが行われる。貴公子達や令嬢達がいた。

 皆、目を輝かせているわ。まるでオモチャを目にした子供のようだわ。



「罪人ハンナ!どうして元王太子ゲオハルト様の浮気を婚約者、フォルク公爵令嬢にお知らせしなかった!」

「そうよ。全て見ていたはずよ!同僚のテイジー殿はフォルク公爵令嬢にお知らせしたわ」

「全く、テイジー殿は見事にフォルク公爵令嬢をお助けした」


「何も出来なくてもフォルク公爵令嬢にお知らせすることは出来たはずよ!」



 皆、口々に罵る。

 テイジーとは私の同僚で男爵家出身、私は商家の出身だわ。

 それを揶揄する方もいる。


「全く、いくら裕福でも貴族との差はこれだな」



「「「何故!報せなかった!」」」



 だから、私はゆっくり口を開き。心の内を述べた。


「それは、私の主人はゲオハルト様だからですわ・・・」




 ☆☆☆


 私は王太子宮付のメイドになれた。歳は17歳の時だ。嫁入り前に箔をつけようとのお父様のお考えだった。


 同僚にテイジー様がいた。没落した男爵家出身だわ。

 若干、私を蔑むような言動が目立つただのいけ好かない貴族の女、そんなイメージだった。


「ハンナ、ここにはコップ一つで貴女のお給金の何ヶ月分の物がそろっていますわ。気をつけて扱うのよ」


「はい、テイジー」

「様が抜けているわよ。平民と貴族の差は歴然としているわ」


 それは良い。没落した貴族令嬢はそんなものだ。



 しかし、いつしかテイジーは私に耳打ちするようになった。


「聞いた?殿下、男爵令嬢に入れ込んでいるのよ。それ私の知り合いなんだから」

「へえ、左様ですか・・・」


 興味はなかった。


 男爵令嬢のコリーナ様?殿下とは学園で知り合った。

 殿下は上機嫌だ。


「君、コリーナにプレゼントを贈りたい。何が良いと思うか?」

「それは・・・貴族の気持は分かりかねます・・」


「はい!はい!コリーナの好みなら私にお任せ下さい」

「君は?」

「はい、テイジーと申します」



 よほどの側近でなければメイドや従者の名を覚えない。

 殿下はテイジーの名を覚えた。


 ということは秘密の仕事が私に入って来た。メイドは犬と猫と同じ。ただそこにいるだけの存在だわ。


「そこの君、ベッドメイキングをしてくれないか?」

「はい・・・・」


 昼間、ベッドメイキングをする。

 浮気相手と閨を共にするのね。


 テイジーは遠ざけられた。

 聞こえて来る噂は殿下と男爵令嬢の世紀の愛。

 いや、けしからん。との二分された。


 この王国は陛下が公然と愛人を囲う事件があった。

 愛人はカゲで陛下に影響を持つから今のうちに近づこうと言う者が多々いた。


 学園では人気者だったそうだ。



「??テイジー、どうしたの?」

「あ、これは違くて・・・」

「仕事中にむやみにメモを取ってはいけないわ。機密になるって」



 テイジーがメモを取っていた。王太子殿下の部屋の前だわ。

 もしかして、聞き耳を立てていたのかしら。


「用があるから行くわ」


 テイジーはそそくさと去ったわ。


 私は部屋をノックして入った。


「殿下、お茶をお持ちしました」


「おう、来たか。諸君、お茶休憩をしよう」


 そこには学園の高位貴族、低位貴族の貴公子達と令嬢・・・コリーナ様がいた。


「殿下、今度の終業式が良いかと思います」

「うむ。皆の耳目が集まっている・・・」


「遂にですね。エリザベート様を断罪するのは・・」

「ああ、皆の前で婚約を破棄すれば父上も認めざるを得ない」


「防諜もばっちりです」


 私は人と認識されていない。家具と同じだわ。だから私の前で話したのね。


「失礼します。また、お呼び下さいませ」


 私は人数分のお茶を入れて退室したわ。


 それからテイジーがうるさくなった。



「ねえ。何を話していたの?」

「・・・私には政治の話など難しくて分かりませんでしたわ」


「コリーナは殿下の寵愛を受けてから私を見下すようになったわ。学園に通えたのもほうぼうから借金をしてやっとの貧乏男爵家のくせに・・・一緒に一泡吹かせない?」

「テイジー様、掃除の時間ですわ。失礼します」



 それから学園で婚約破棄が起きた。

 しかし、婚約者のフォルク公爵令嬢は冷静に対応し。

 王家と公爵家の話合いになった。

 当然と言えば当然。


 私は学園に殿下の荷物を取りに行ったら・・・


 学園生達に取り囲まれて・・・今に至る。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「はあ?主人の間違いを糺すのが使用人の役目だろう!」

「そのような契約ではございません」


「全く、テイジー殿を見習え。浮気を逐一手紙でお知らせしていたのだぞ」

「そうよ!テイジー殿みたいなメイドが欲しいわね」



 全くラチが空かない。

 その時、ノックも無しにドアが開き。

 令嬢とテイジーが入って来たわ。



「フォルク公爵令嬢!」

「まあ、テイジー殿!」


 令嬢は殿下の元婚約者らしい。

 黒髪を腰まで降ろし。目が若干怖い。

 扇で口元を隠しながら言ったわ。



「あら、ラスカル様・・・とウーズラ様とロッテリリー様・・・皆、真実の愛を応援していましたはずだわね・・・」



「そ、それは・・」

「殿下にそう言えと言われて・・・」


「今は改心して不忠メイドを懲らしめています」


 すると、令嬢は扇をパチンと閉じて・・・



「そのメイドはハンナね、ヴェルナ商会長の娘ね・・・フ~ン」


 ジロリと見られたわ。

 しばらくジィと見つめられて・・・



「貴女、私の所に来なさい。レディースメイドにしてあげるわ」


 とまさかの上級メイドとして雇い入れの提案をされた。気に入られたようだ。



「はあ?エリザベート様!私は殿下の浮気をお知らせしたのですよ。その地位は私が相応しいはずですわ!それにハンナは殿下の浮気を黙っていました!」


「だからよ・・私の周りにおしゃべりはいらないわ。お金を上げるからどっかに行きなさい。フン!」



 それから私はフォルク公爵令嬢と共に一回だけ王宮に参内した。



「現行法では秘密を守ったメイドを罰する法はない。これからも作るつもりはないぞ」


「陛下、直々にそう仰って頂き有難うございます」


「学園の自治を悪用してメイドを閉じ込めた学園生たちには罰を与えると約束しよう」


「陛下、有難うございます」



 私は平民の礼法片膝を付き、右拳を胸の前に当てて黙ったままだわ。


「して、エリザベートよ。婚約者のことだか・・・」

「陛下、傷心でして、今はそのような気持になれませんわ」



 後から聞いた話だけども、テイジーの情報でとっくに王家と公爵家が動いていた。

 殿下とコリーナ様はどこかの離宮で軟禁されるそうだわ。



 その後、エリザベート様は・・・



「ハンナ、あの殿方はどう見る?」

「はい、誠実な方かと思いますわ。使用人にも丁寧に接していますわ」


 伯爵令息に夢中だわ。


「お手紙届けて頂けないかしら?」

「はい、お嬢様」


 お嬢様の婚約者候補では一番序列が低いけど、私は応援しようと思う。

 何故ならば、名前で呼んでくれたからだわ。



 ・・・敵の情報を自ら持ってくる裏切り者には金を与えて放逐しろ。決して重用するなとの古の兵法があるが、エリザベートがその教えを知っていたかは定かではない。


 その後、公爵令嬢と伯爵令息の婚約する衝撃の話が吟遊詩人によって語られそうになった事件があった。

 吟遊詩人達が大金を積んで詳細を聞こうとしたが、レディースメイドは決して口を開かなかったと伝えられている。

最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まともに職務を従事してる人が、まともに評価される。そんな良い話を読んで、現実でもまともに評価されない真面目な人の誠実な仕事ぶりが評価されますように。って、気持ちにされました(しみじみ.........…
現実のリアルメイドとか下男って洗濯機とかルンバとかの家電扱いだからな、 それが平気で密告するってつまり盗聴・盗撮カメラ付き家電と・・・ うん、そこから得た情報は買う事あっても、そんな家電は要らないよ…
問い詰めてたの、よりによってお前らかい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。