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8話

修学旅行から帰り、家でくつろいでいる俺に、ピカリスが興奮した様子で朗報を告げた。


「響! ついにここまで来たよ! 日本の中で生き残っている妖精のパートナーは、君と茜ちゃん、そしてもう一人の、計3人で最後らしい!」


「3人…か」


俺は、ソファに深く沈み込みながら、余裕の笑みを浮かべた。


「妖精ネットワークを通じて、残る一人から最後の戦いの提案が来た。どうする? 受ける?」


俺は、ここ最近の連戦連勝で、自分の強さを確信していた。ネプチューンを一撃で沈め、相性最悪のデスサイズすら支配下に置いた。今の俺に、死角はない。


「ふん。負けるわけがない。その提案、乗ってやる」


俺が即答すると、ピカリスは心配そうに提案した。


「響、最後の戦いの前に、互いの準備期間として1週間あるんだ。茜ちゃんと協力して、事前準備トレーニングでもしようよ。相手がどんな能力かわからないし…」


「必要ない」


俺は、ピカリスの言葉を遮った。


「茜と馴れ合うつもりはない。それに、準備などしなくても、今の俺ならどんな敵でも倒せる」


ピカリスはその後もしつこく食い下がったが、王者のごとき慢心に包まれていた俺は、その忠告を鼻で笑い、一切耳を貸さなかった。


そして、決戦当日。


今回は特別ルールらしく、相手と直接会わずとも、時間になると強制的にバトル・フィールドへと転送された。


転送された先は、人気のない、錆びついた遊園地だった。


広場の中央に、俺と同じくらいの年の、真面目そうな男子学生が立っていた。


俺は、いつものようにクールなポーズを決め、名乗りを上げた。


「…神鳴 響だ。俺の能力は、雷を自在に操る力。『ライトニングボルケーノ』を持つ」


すると、相手は驚いたように目を見開き、そして丁寧に一礼した。


「初めてお目にかかります。まさか、同じ属性とは…。俺も雷を操る能力『セイントライト』。正々堂々、戦いましょう」


「雷…だと?」


俺が驚いて肩の上のピカリスを見ると、ピカリスは冷ややかな目で俺を見た。


「何を驚いているんだい、響。雷、炎、水なんて、妖精界では珍しい力じゃない。今まで他の雷使いと当たらなかったのは、それがありふれた弱い能力コモン・スキルだからだよ。今まで勝てたのは、君の運が良かっただけさ」


「なっ…!」


ピカリスの衝撃的な事実に、俺のプライドにひびが入る。


だが、相手も同じ雷だ。俺には、魔雷光、魔神雷、魔眼という多彩な技がある。


「同じ雷なら、技の差で勝つだけだ!」


俺は、先手必勝とばかりに腕を突き出した。


魔雷光まらいこう!」


紫色の電撃が走る。しかし、相手は動じることなく、掌をかざした。


聖電せいでん


相手の掌から放たれた白い電撃が、俺の魔雷光とぶつかり合い、完全に相殺された。


「弱い小技で牽制ですか。セオリーですね」


「こ、小技だと…!?」


俺の必殺技を「小技」とあしらわれ、俺は動揺した。悟られぬよう、即座に搦め手に出る。


魔眼マガン!」


俺が叫んだ直後、相手も被せるように叫んだ。


聖衣せいい!」


相手の前面に、光り輝く盾のようなエネルギー壁が出現した。魔眼の電磁波は盾に遮断され、幻覚効果が発揮されない。


「意外と、せこい手を使いますね」


相手は眼鏡の位置を直しながら、淡々と言った。


「こっちは、名乗りの前に『聖分析セイントアナライズ』を使っていましたので、あなたの攻撃パターンは事前に読めます。以前に戦った、闇を操る相手に対抗するために編み出しました」


(分析済み…だと!?)


「では、こちらからも攻撃させていただきます。聖雷電せいらいでん!」


さきほどの「聖電」より一回りも二回りも大きな、極太の白い雷撃が走る。


「ぐわっ!」


俺は地面を転がり、紙一重でかわした。アスファルトが黒く焦げ、爆ぜる。


「ほう、技も出さないで避けるとは、余裕ですね。追撃行きます」


相手の掌から、雷の連撃が放たれる。


(くそっ! 反撃だ! 魔神雷マシンライ!)


俺は周囲を見渡すが、遊園地の大型アトラクションは、バトル・フィールドのエリア外の背景扱いで、制御権を奪えない。それに、魔神雷は生きている人間には直接効かない。


「役に立たねぇ!!」


俺はプライドをかなぐり捨て、とりあえず思いっきり逃げることにした。目の前にあった、ミラーハウス(鏡の迷路)へと逃げ込む。


ミラーハウスの奥で、俺は肩で息をした。


「はぁ…はぁ…強すぎる…!」


すると、ピカリスが呆れたように言った。


「だから、事前準備をしろとあれだけ言ったのに! 相手は、強敵との戦いを想定して技を磨いてきたんだ。慢心していた響とは違う!」


「うるせぇ…! 今さら説教かよ!」


「でも…強い技は、限界の戦いの中でしか編み出せない。響、君の生存本能が、ギリギリだけど新しい技を生み出したよ」


ピカリスの言葉と共に、脳内に鋭いイメージが走る。それは、一発逆転の、攻撃特化の技。


「…これなら、いけるか」


俺は立ち上がった。


「新しい技の名前は…『魔雷牙まらいが』だ」


その時、ミラーハウスの外から、敵の声が響いた。


「追いかけっこは終わりだ。聖極電せいごくでん!」


轟音と共に、ミラーハウスの半分が消し飛んだ。ガラスの破片が雨のように降り注ぐ中、俺は広場へと飛び出した。


「出てきましたね」


相手は、余裕の表情で俺を見る。


俺は、最後の力を振り絞り、腕を振り上げた。


「これで終わりだ! 俺の最後の必殺技…魔雷牙まらいが!!」


反射的に、敵は防御態勢に入った。


「無駄です! 聖衣せいい!」


敵の前面に、鉄壁の光の盾が展開される。正面からの攻撃なら、どんな雷撃も防ぐ最強の盾だ。


しかし。この放った雷撃は、敵に向かって直進しなかった。空中で8つに分裂し、敵の頭上、背後、左右、あらゆる方向へと散開した。


そして、一斉に敵の中心へと襲い掛かる。


「なっ…!?」


「魔雷牙は、8方向から同時に魔雷光が走る、牙のような技だ! 前面だけの盾じゃ、防ぎきれねぇよ!」


ドォォォォン!!


全方位からの雷撃を受け、敵の聖衣は砕け散った。


「がはっ…!」


敵はその場に膝をつき、倒れ込んだ。


「…技に溺れたな。諦めなければ、勝利はいつだって微笑むんだ」


俺は、満身創痍でふらつきながら、なんとかクールな決め台詞を吐いた。


敵の体が光の粒子となって消え、バトル・フィールドが解除される。


「はぁ…勝った…。これで、戦いは終わりか…」


俺が一安心していると、ピカリスが肩に乗り、優しく声をかけてきた。


「おめでとう、響! ついに日本最後の敵を倒したね!」


「ああ…長かったな」


「うん! これで日本代表決定だ! あとは、世界の各国の代表を倒して、世界一を決めれば終わりだよ! さあ、最後の大バトル、頑張ろうね!」


俺の動きが止まった。


「……は?」


俺は、ピカリスをつまみ上げた。


「おい…まだ終わってないのかよ…? 世界だと…?」


「当たり前じゃないか! 妖精の王様だよ? 世界規模に決まってるでしょ!」


俺は、その場に崩れ落ちそうになった。


「やれやれ…。まだ終わってないのか…」


だが、今は考えるのをやめよう。俺は、夕暮れの遊園地(廃墟ではない現実の公園)のベンチに座り込んだ。


「ただ、今はゆっくり…勝利の余韻を噛みしめさせてくれ…」


俺は、遠くに見える一番星を見上げながら、これから始まるであろう過酷な世界戦と、まだ攻略できていない身近な恋の難問に、深い溜息をついた。

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