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推しうさぎと月の姫になるまで〜二十歳の誕生日に助けた迷いうさぎは電撃引退した推しのアイドルでした〜  作者: 四片霞彩
爽月と彩月【下】

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83/117

【83】

 久慈川学園を出てから屋敷に戻った彩月たちだったが、途中の高速道路で発生した事故と渋滞により、屋敷に到着した時には夜も深くなっていた。

 渋滞に巻き込まれたことは彩月から天里に伝えており、彩月の家族には上手く伝えておくと言ってくれたが、あの家族が納得してくれただろうか。

 彩月が逃げたと思い込んで、天里たちに迷惑をかけていなければいいが……。

 そんな不安な気持ちが伝わったのか彩月を慰めようと膝の上に座った響葵を撫でているうちに、とうとう彩月たちが乗った車は屋敷の門をくぐったのだった。


「お疲れ様。途中で渋滞に遭って大変だったね」

「私は座っていただけだから何とも無いよ。運転していた犀原さんの方が大変だったと思う」


 屋敷の玄関口の横付けにされた車から降りた彩月たちを出迎えてくれた天里はどこか心配そうな素振りを見せていたが、彩月の決意が固いことを知ると響葵と同じように後押ししてくれた。

 そして両親と爽月たちがやってきた状況について、教えてくれたのだった。

 両親たち三人は何の前触れもなく昼過ぎに久慈川家の屋敷にやって来ると彩月に会わせるよう一方的に捲し立て、拒否したら娘を監禁しているとして警察に訴えると脅迫までしてきた。

 そこで留守番をしていた天里が屋敷の住民を代表して三人に会うと、彩月は遠出していて帰りが何時になるか分からないと繰り返し答えたが、それなら戻るまで待つ」と言って、遂には屋敷に押し入られてしまったとのことだった。

 天里はどうにかして一度帰そうとしたが、彩月に会わせなければ誘拐犯として警察を呼ぶとヒステリックなまでに騒ぐため強引に追い返せず、また狐塚たち屋敷の使用人たちも彩月の家族相手に強く出られなかった。

 応接間に陣取った両親は天里たちを誘拐犯も決めつけて全く話に聞く耳を持たず、彩月が不在である以上は話し合いも進展しないまま平行線を辿ってしまった。手を焼いた天里はとうとう屋敷の主である玄朔に助けを求めたのだった。

 結局玄朔も加わって天里と二人で説得しても両親の考えは変わらず、彩月に会うまで帰らない、帰るまでここに居ると子供ように一方的に言い捲るばかりであった。

 このままでは久慈川学園の見学から帰った彩月たちと鉢合わせすると危惧した天里は隙を見て話し合いの場を抜け出すと、響葵に連絡して今日は屋敷には戻ってこないように伝えて、犀原にはホテルの手配と共に状況次第ではしばらく戻って来ないように頼んだとのことだった。

 そして彩月から屋敷に戻って家族と話すと聞いた後、天里がそのことを三人に伝えると、両親と爽月は得意げになって喜び、更に図々しいことに宿泊先を用意するように高言してきたので、玄朔がホテルに連絡して部屋を確保して――彩月の誕生日祝いをしたホテルより遠い場所の系列ホテルらしい、明日出直すように伝えたと教えられたのだった。


「近くのホテルが満室で取れなかったということにして、わざと遠くのホテルを案内したからね。難色を示されたけど、スイートルームにして全額うちで負担するって言ったら喜んで行ってくれたよ」

「うちの家族が迷惑かけてごめんね。久慈川さんにも謝らないと……」

「これくらい大したことないよ。おじいちゃんも今日は一度帰って明日また来るって。念には念を入れて、ホテル側にはいっちゃんの家族が不審な行動をしないように監視を頼んで、明日の朝にホテルを出たら連絡をするように伝えたから。今夜はゆっくり休んで」

「ありがとう。天里くんもお仕事をするからって屋敷に残ったのに邪魔をしてごめんね」

「気にしないで。こういうのもオレたちの仕事だから。見学はどうだった? 途中で切り上げさせちゃったけど、ちゃんと見られた?」

「うん。心配しなくても見たいところは全部見られたよ。ねぇ、響葵くん?」


 車を降りてからもずっと抱えていた腕の中の響葵に同意を求めれば、返事はすぐに返ってきた。


「そうだな。有意義な時間を過ごせた」

「そうみたいだね。二人とも今朝より表情が明るい気がするよ。さてと、長時間の移動で疲れているところを振り回すのも悪いし、いっちゃんはお風呂でも入ってゆっくりして。ヒビはオレと一緒に対策会議。オレたちの姫を守るよ」

「それなら私も一緒に……」

「ダメ。いっちゃんは明日に備えて休むこと。疲れた顔をしていたらガンガン攻められるよ。こういう舌戦を繰り広げる時は特に」


 艶っぽく片目を瞑った天里に惚けたのが気に入らないのか、響葵がむっつりとした表情で不満げに鼻を鳴らす。

 そんな響葵の態度に慣れているのか、天里はうさぎ姿の響葵をぬいぐるみのように軽々と片手で彩月から取り上げると応接間に向かったのだった。

 顔を出した響葵が天里の肩越しに声を張り上げる。


「彩月は気にせず休んで英気を養ってくれ。明日の朝に会おう」

「響葵くんも無理しないでね。また明日」


 手を振っているつもりなのか、響葵が小さな両手を上げてジタバタと振ったので彩月も大きく手を振り返す。

 そして玄朔が暮らす本邸に戻るという犀原に礼を述べて別れると、狐塚の案内で部屋に戻ったのだった。


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