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推しうさぎと月の姫になるまで〜二十歳の誕生日に助けた迷いうさぎは電撃引退した推しのアイドルでした〜  作者: 四片霞彩
天馬行空な従者、質実剛健な従者

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40/117

【40】

「どういうことよ、彩月っ! 説明しなさいっ!!」

「誰の許しを得て、動物を連れ込んでいるんだ!」

「爽月は動物が嫌いなのよ! あんたも分かっているでしょう!?」


 柳眉を逆立てる爽月を先頭にして、後ろには怒髪天を衝く形相の両親がずかずかと彩月に近付いてくる。

 身体に染み付いた恐怖とトラウマから及び腰になった彩月は後ろに下がるが、すかさず爽月たちから守るように響葵が間に入ってくれたのだった。


「なんなのよ、あんた……てか、どっかで見た顔ね」

「彩月には指一本触れさせない。彼女は俺たちの姫だ。これ以上、君たちの好きにさせてたまるものか」


 どこからともなく現れた響葵にポカンとしていた爽月たちだったが、やがてわざとらしく声を上げて嘲笑ったのだった。


「はんっ! 姫って、あんたこの男にいくら払ったの!? 金で男を雇って、ちょっと高そうな着物を着せてもらっただけでお姫さま気分なんて、良い気なものね!」

「お金なんて払っていない! 響葵くんは……その……月の姫の従者で……私の……」

「あんたみたいな不細工がこんなイケメンに相手されるわけないじゃない!! この豚がっ!! 地面に這いつくばってブヒブヒ鳴いていればいいのよ……!」

「……やれ、カラス」


 老狐が低い声で命じた瞬間、天から一筋の光が落ちると、固いものを断ち切ったような鈍い音が耳を打つ。

 その直後に塀の外から金属同士が擦れながら、バラバラと地面に散らばったような音が聞こえてきたのだった。両親が様子を見に行くと、悲痛な声が辺りに響く。


「ああっ! 自慢の愛車が……っ!」

「ほほほっ! 言い気味じゃっ!」


 老狐が声を潜めて冷笑すると、他の月の生物たちにも憫笑が広がっていく。

 彩月もつられて口を緩めてしまったが、怒りと羞恥で真っ赤に顔を染めた父に睨まれて俯いてしまう。


「だいたい君たちはいったい何者なんだ!? 何が目的でここにいる!? 警察を呼ぶぞ!」

「我らは月の姫となられた彩月さまを祝すためにここに集った。其方らこそ何者ぞ。姫さまに仇なす狼藉者かっ!」


 老狐の声に反応するように、腕の中で丸くなっていた子狐が彩月を守るように前に出ると爽月たちを威嚇して唸り声を上げる。他の月の生物も好戦の構えに入り、いつでも爽月たちに飛び掛かれるように用意を整えていたのだった。

 そんな月の生物たちに怯えるように父親の影に隠れながらも、母親が声を荒げる。


「いい加減にしなさい、彩月! お父さんとお母さんを困らせて楽しいの!?」

「そもそも月の姫とはなんだ!? 怪しげな輩に騙されているんじゃないのか!?」

「彩月ってば、とうとうここまで頭がおかしくなったんだっ! 男を誑かして、変な人たちを集めてパパとママを困らせて。可哀そうだと思って優しくしたら、勘違いしちゃったのね~。こんなことなら生意気なことを考えられなくなるくらい、もっと痛ぶっておけば良かった」


 爽月の言葉に両親が賛同すると嘲笑するように笑い出す。

 彩月が羞恥に染まった顔を伏せて唇を噛みしめながら耐えていると、先程の子狐が心配そうに彩月の足元にやってきた。

 つぶらな小さな黒い目で気遣うように彩月を見上げる姿を見ているうちに、彩月の中で決意が固まったのだった。


(もう私は一人じゃない。響葵くんや老狐さんたち月の民や生物が傍に居てくれる)


 子狐に勇気をもらった彩月がゆっくり顔を上げて口を開こうとした瞬間、パトカーの赤色灯と共にサイレン音が近付いてくると家の近くで車が停まる。

 そしてパトカーから降りた二人組の警察官に声を掛けられたのだった。


「お取込み中にちょっとすみません。ここの前の道路にゴミが撒き散らかされていて、通行を妨げているとのことで通報があったのですが、何かご存じでしょうか?」

「ああ、ちょうど良いところに!お巡りさん、聞いて下さいよ! 家族と外食している間に忍び込んだ怪しげな奴らが私の車を分解したんです! 熊や狐なんかの害獣もいるので追い払って下さい!」

「怪しげな……見たところ、若い男女とご年配の男性がいるだけのようですが? 動物なんていませんし、これからお出掛けでしたか?」


 両親は驚いた顔をしたが、いつの間にか月の生物たちは姿を消しており、響葵と人に化けた老狐、そして老狐の足元に隠れる子狐だけとなっていた。

 身体が大きい者は家の塀からはみ出ているが、何故か警察官は気付かない振りをしているので、怪訝に思っていると「彼らは月の民の協力者なのだ」と響葵が耳打ちしてくれる。

 そんな響葵の言葉が聞こえたのか、両親に事情を聞いていた警察官の一人が親指を立てて、肯定のハンドサインを送ってくれたのだった。


「それより警察が足止めしてくれている間にここを離れよう」

「でも、行き先なんて……」

「俺が暮らす天里の家にくればいい。天里の家に限らず、月の姫である彩月を迎え入れてくれる月の民は大勢いる。とにかく今は一刻も早くここを離れた方がいい。君に害が及ぶ前に」


 響葵の言う通り、体裁を気にする両親は警察官がいなくなった途端に、怒りの矛先を彩月に向けて責め始めるだろう。

 家に帰ってきた時のように暴言を吐かれて、暴力を振るわれることだってある。今回はパトカーが出動するような警察沙汰にまでなったので、ご近所での噂話を恐れてもっと酷い目に遭わされるかもしれない。

 彩月が考えている間、響葵は老狐に礼を述べ、彼らに頼み事をしていたのだった。


「彩月をここから連れ出したい。老狐、力を借りられるだろうか」

「ふぉふぉふぉ。お安い御用よ」


 老狐が指笛を吹いて合図をすると、それまで隠れていた動物たちが一斉に爽月たちに襲い掛かる。

 最初に気付いた母が悲鳴を上げて、父が母と爽月を庇うように動物たちの前に進み出ると持っていた鞄を闇雲に振って追い払おうとするが、膝はガクガクと震えていた。

 遂には小型犬が威嚇で吠えただけで、情けない声を出して座り込んだのだった。

 そんな両親の隙をついて響葵に手を引かれた彩月が小走りで敷地の外に出るが、追いかけてきた爽月に後ろから肩を掴まれてしまう。


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