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推しうさぎと月の姫になるまで〜二十歳の誕生日に助けた迷いうさぎは電撃引退した推しのアイドルでした〜  作者: 四片霞彩
月の都に招かれし君、いと美しく

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31/117

【31】

「あの子たちはまだまだ成長します。立派な腹心となって次の月の姫の力になるでしょう。そんなあの子たちをありのまま受け入れてくれる者こそ、次の月の姫に相応しい。例えば人の姿を取れなくなった響葵を受け入れた彩月さまのように……」

「私は何もしていません……」

「響葵は深く感謝をしています。今やあの子の中で彩月さまは特別な存在となっている。アイドルだったあの子を好いている彩月さまと同じくらい……」

「私はただのファンです。それに推しへの愛と好きな人への愛は別物です。多分……」


 これまで恋愛にうつつを抜かす余裕が無かった彩月でも、推しに対する“愛”と恋愛対象に向ける“愛”が別物なくらい知っている。

 響葵に向けている“愛”がどちらなんて考えるまでも無い。圧倒的に前者であろう。


「どちらにしても月の姫として完全に覚醒するには月の民との婚姻は免れません。どの月の民でも構いませんが、相手は必ず月の民の血を引く純血者でなければなりません。月で生まれ育った響葵たちのように」

「響葵くんと天里さんですか……?」

「身内贔屓と思われるでしょうが、あの子たちは優秀な子たちです。その響葵と天里のどちらかから選ぶとしたら、響葵が良いでしょう」


 すかさずもう一人の我が子をフォローするように「勿論、天里でも構いませんが」と、月祈乃が付け加える。


「すでに貴女さまと響葵は相思相愛の関係。きっと比翼連理の仲になれます。月の民の誰もが羨むような関係になれるかもしれません」

「そうでしょうか。私なんて響葵くんに比べたら全然です」

「誰であれ自分自身なんて、そう過小評価をするものです。響葵たちはきっと違う評価をされるでしょう。そろそろ良いかしら……響葵を呼んでくれますか、眉見」


 月祈乃に呼ばれた眉見が外に出ると、すぐに響葵が戻ってくる。先程と同じように彩月の隣に座ったところで、月祈乃が口を開いたのだった。


「響葵、天里、貴方たちをわたくしの近侍から解任します。そして本日付けで二人を新たな月の姫――彩月さまの近侍に任命します。必ず彩月さまの力になってください」

「謹んで拝命いたします」

「眉見、わたくしの名前で全ての月の民と協力者に連絡を。わたくしの後継者が決まりました。名は綺世彩月さま。皆で新たな月の姫を支えるように通達してください」

「承知いたしました」


 二人が深く頭を下げると、眉見は先に部屋を出てしまう。月の民と協力者たちに月祈乃の言葉を伝えに行ったのだろう。

 眉見が去った引き戸を眺めていると、「彩月さま」と呼ばれる。


「帰りの支度が整うまで、響葵に庭を案内してもらってください。いずれこの屋敷は彩月さまのものとなります。今から知っていて損はありません。響葵は彩月さまのことをお願いします」

「姫……」

「響葵、身体に気をつけて。天里と共に彩月さまのことをお願いします」

「はい。姫もどうかお元気で」


 響葵は深く一礼すると音もなく立ち上がる。彩月も後に続こうとしたが、月祈乃に呼び止められたのだった。


「どうか月の民たちとわたくしの子供たちを……響葵と天里のことをよろしくお願い申し上げます」

「月祈乃さんも、その……もっと月に関するお話を聞きたいので、いずれまた響葵くんと来ても良いでしょうか?」

「いつでもお越しください。わたくしたちは新たな月の姫を心から歓迎いたします」


 そうして月祈乃は畳に額がつきそうなくらい深々と頭を下げる。彩月たちが退室するまでそのまま叩頭していたが、引き戸が閉まる直前にわずかに顔を上げた。

 その顔は若くして重責を担うことになった月の姫ではなく、どこにでも居るような一人の母親の顔をしていたのだった。


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