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推しうさぎと月の姫になるまで〜二十歳の誕生日に助けた迷いうさぎは電撃引退した推しのアイドルでした〜  作者: 四片霞彩
爽月と彩月【上】

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22/117

【22】

「他のアイドルを好きになろうとは思わなかったのか?」

「思わないよ。だってあの日の自分を救って、今日まで生きる力を与えてくれたのはキョウくんだったから。私はキョウくんのために生きるって決意したんだ。たとえ何年、何十年経ったとしても、キョウくんを絶対に忘れない。いつか戻ってきたら、笑顔で迎えようって。それまでいつまでもキョウくんを信じるって心に決めて……」


 彩月も他のファンに倣って響夜以外のアイドルに触れてみたが、初めて響夜の歌を聴いた時のような感動は起こらなかった。

 綺麗な歌声や好きな曲調、印象的なフレーズに抜群のスタイル、そして響夜に雰囲気の似た顔立ち。

 そうは思っても、それ以上は何も思わない。

 自分の心をぐっと掴んで、全身を揺さぶられたような感覚にはならず、彩月を捉えて離さないといった存在にはならなかった。

 当然「推し」にはならず、アイドル以外のジャンルに手を出しても結果は同じだった。

 たとえファンの民度が低くて何度過激ファンからバッシングを受けようとも、彩月の心を占めているのはいつだって五十鈴響夜。

 他の誰にも成り代われない。唯一にして無二の存在。彩月にとっての永遠の推し。先の見えない不安の中で生きる自分の行く先を導いてくれる北極星(ポラリス)のような存在。

 それが彩月にとっての五十鈴響夜であった。


「って、なんでうさぎ相手に推しの魅力を熱く語っているんだろう……つまらない話を聞かせたよね、ごめんね」


 響葵の飼い主である派手な男性と話した時もそうだったが、大好きな推しの話になるとつい饒舌になって熱く語ってしまう。

 この変わりようには、大失敗をした今日の面接での辿々しい受け答えが何だったのかと自分を責めたくなるくらいであった。

 しかし当の響葵は心ここにあらずといった様子でポスターを見つめ続けていたので、心配になった彩月は響葵の背中に顔を近付ける。

 首の後ろに顔を埋めて匂いを嗅ぐと流石に響葵も反応せざるを得なかったようで、その場で小さく飛び上がったのだった。


「なっ、なにをする……っ!?」

「猫を飼っている人がこうして鼻をくっつけて猫を吸うって話を聞いたから、うさぎもできるのかなって思って。洗い立てだからかな。石鹸の香りがするね」

「そ、そうか……」


 温かく柔らかな黒い毛に頬を摺り寄せていると、沈んでいた気持ちが落ち着いてきた。ずっと誰かに語りたかった推しへの想いを口にしたというのもあるかもしれない。


「毛もふわふわになって気持ち良いね。でもまた洗い直さないとダメかな。汚い私が顔を付けちゃったし……」

「彩月、実は俺……っ!」


 響葵が何かを打ち明けようとした瞬間、響葵の身体から白い光が溢れ出したので、彩月は驚いて顔を離してしまう。


「これは……っ!?」

「響葵くん……!?」


 光に包まれた響葵の身体は上下に伸びていき、やがて手足が生えて頭が出てくる。身長はあっという間に彩月の高さを超えて、徐々に人の形を成していったのだった。


(響葵くんが人の姿に……!?)


 子供の頃に読んだ魔法で獣の姿にされてしまった傲慢な王子が元の姿に戻る物語を思い出す。魔法が進行して獣になりかけていた王子だったが、ヒロインの献身的な愛で魔法が解けて元の人間の姿へと戻った。

 あの時と同じような魔法のような奇跡と神秘的な光景が彩月の目の前で起こったのだった。


(いったい何が起きて……っ!?)


 呆然としている間に月光のような白い光が霧散すると、やがて響葵が居た場所には一人の若い男性が顕現する。男性の顔が露わになった時、無意識のうちに彩月は推しの名前を呟いていたのだった。


「キョウ、くん……?」


 濡羽色をした長めの前髪とツーブロックの髪型、そして白皙の肌と鼻梁の整った顔立ち。

 それはまさに男性の後ろに貼られた響夜のポスターそのものの姿であった。

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