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短編読み切り②

■第一章: 廃墟の謎


太平洋戦争末期の坑道が、現代においてもその存在感を放っていた。静かな村に住む、17歳のイケイケ気質の少年、悠斗ゆうとは、ある噂を耳にする。坑道から聞こえる不気味な音についての噂だ。


「ねえ、みんなが恐れてる坑道ってどんなところかな?」


友人たちと一緒に駄菓子屋の前で立ち話をしていた悠斗が、突然の質問を投げかける。友人たちは複雑な表情で顔を見合わせた。


「坑道か…あそこは怖いって聞いたことあるけど、本当に不気味な音が聞こえるんだって。誰も近づかないようにしてるんだってさ。」


友人の答えに、悠斗の目には冒険心が宿った。彼はアドレナリンを感じながら坑道についての情報を集め始めた。歴史の教科書をめくり、ネットで調べ物をし、少しずつ坑道にまつわる不気味な伝説を知っていった。


「もしかしたら、あの坑道には何か秘密が隠されてるかもしれないんだぜ。」


悠斗はひとりで考え込んでいた。そして、ある晩、友人たちを誘って坑道に向かうことを決意する。


■第二章: 暗闇の中へ


準備を整えた悠斗たちは、夜の静寂に包まれた坑道の入り口にたどり着く。月の明かりがかすかに射し込んでいる。悠斗は友人たちに懐中電灯を配り、先頭に立って坑道の内部へと進む。


「ここがあの不気味な音の元凶か…」


悠斗の声が暗闇に消える。坑道の中は静かすぎて、逆にその静寂が不気味な雰囲気を醸し出していた。時折、地面のひび割れから微かな音が漏れ聞こえる。


「何かがこちらに近づいてくる気がする…」


友人の一人が囁く。悠斗は決意を固め、深く坑道の奥へ進む。途中、壁にはかつての戦争の名残が残されていた。彼らはそれを見ながら、歴史の深みに触れるような感覚を覚える。



■第三章: 呪いの真実


突如として坑道の中に響き渡る不気味な音が、悠斗たちの周りを包み込んだ。その音はまるで遠くで轟く雷鳴のようであり、それでいて深い淵から湧き出るような低い唸りも感じさせた。悠斗と仲間たちはびっくり仰天し、慌てて隠れるようにして身を寄せ合った。しかし、どこからその音が聞こえてくるのか、全く突き止めることはできなかった。友人たちの顔には恐怖が浮かび、悠斗自身も心臓が激しく鼓動していた。


「あの音…本当にこの坑道から出ているのか?」


悠斗が静かに問いかけると、友人たちは沈黙したまま目を丸くした。それは彼らにとっても、この不気味な場所に関する不安を象徴していた。しかし、悠斗は冷静さを取り戻し、次第にその音に向かって進む決意を固めた。


進むにつれて、坑道の壁にはかつての戦場の名残が生々しく描かれていた。彼らはその残された物語を辿りながら、深い暗闇の中を進んでいった。不気味な音はその度に強く、悠斗たちの心を不安にさせた。そして、突如として坑道の奥深くから幽霊のような姿が現れた。


若き兵士の霊は静かに手を差し伸べ、悠斗たちを導くようにして坑道の中へと誘った。彼らは恐れながらも霊の案内に従い、その奥深くへと進むことにした。壁には亡くなった兵士たちの苦悩や怒りが刻まれており、その姿は見るものすべてを引き付けた。


「彼らは何を求めているのだろう?」


悠斗が静かに問いかけると、友人たちも黙ってしまった。彼らは霊が何を望んでいるのかを理解しようとする試みをしました。


■第四章: 霊の叫び


坑道の奥深くで、悠斗と仲間たちは若き兵士の霊たちに導かれながら進んでいった。その途中で、壁に刻まれた戦争の惨状を見ながら、彼らは深い感慨に心を打たれた。幽霊たちは静かに彼らを案内し、その姿は透明でありながらも不思議な光を放っていた。


「ここが…彼らが最期を迎えた場所なんだろう。」


友人の一人がつぶやいた。その言葉に、他の者たちも頷くしかなかった。壁には若き兵士たちが書き残したメッセージや、戦いの痕跡がくっきりと刻み込まれていた。


進むにつれて、坑道の奥深くからはますます強い不気味な音が聞こえるようになった。それはまるで死者たちの怒りや哀しみが、坑道の壁に囚われているかのようだった。


「何が起こっているんだろう…」


悠斗が口を開くと、その声は坑道に反響していく。すると、幽霊たちは静かに囁くように語り始めた。


「私たちの怒りと哀しみを知ってほしい…」


その声は幽霊たちの悲痛な叫びだった。彼らは戦争の混乱の中で命を落とし、その怒りと哀しみが未だに坑道に満ちているのだということが分かった。


悠斗は霊たちの叫びに耳を傾けながら、彼らが何を望んでいるのかを理解しようと試みた。彼らはただ、自分たちの存在を忘れず、その苦しみや怒りが未来の世代に伝わることを望んでいたのだ。


「どうすればいいんだろう…」


悠斗は心の中で問いかける。彼らの叫びに応える方法を探し求める中、ふとした思いつきで携帯を取り出す。カメラを起動し、坑道の内部を写真に収めた。


「もしかしたら、これで彼らの声を世界に届けられるかもしれない…」


悠斗は決意を新たにし、友人たちも彼の行動に賛同した。彼らは霊たちの存在を知ることで、戦争の真実と平和への願いを伝える使命を負うことになったのだ。


坑道を出ると、悠斗たちはその日の体験を村人たちに語り始めた。彼らの証言は次第に広がり、坑道が単なる廃墟ではなく、歴史の証言が詰まった場所として再認識されるようになった。


■最終章: 光の未来へ


悠斗と仲間たちが坑道を出た後、彼らの体験は村人たちの間で口コミされ、坑道に新たな関心が寄せられるようになった。しかし、その関心は単なる観光地としてのものではなく、戦争の歴史と人間の苦悩が交錯した場所として語られるようになった。


悠斗は戦争の記憶と平和への思いを胸に、地元の学校やコミュニティでの講演活動を始めた。彼は坑道で体験したことを生徒たちに語り、戦争の恐ろしさとその影響を伝えることに情熱を注いだ。そして、坑道で撮影した写真や、幽霊たちから受けたメッセージを通じて、戦争の犠牲者たちの声を世界に届ける使命を果たそうとした。


数年が経過し、悠斗は成長し、人々の心に戦争の記憶を刻む使命を果たした。坑道は観光地としてではなく、平和と戦争の教訓を伝える聖地として尊重されるようになった。彼の活動は地域だけでなく、国内外にも波及し、平和教育の一環として広く認知されるようになった。


悠斗はいつも、坑道で出会った霊たちの言葉を忘れることはなかった。彼らの怒りや哀しみを受け止め、それを未来の世代に伝えることで、戦争を繰り返さないための一助となることを願い続けた。彼の行動は戦争の被害者たちの魂に対する敬意であり、平和への確かな一歩だった。


坑道の奥深くで若き兵士たちの霊が見せた光景は、悠斗たちの心に永遠に刻まれることになった。彼らの声が時を超えて、人々に平和と尊厳の大切さを教え続けるのだろう。


悠斗は、その使命を果たし、自らの心に平和の光を灯し続けることを誓ったのであった。

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