オーバーラップ
高速バスの時間なんだけど、9時46分発なんだ。つまり……ほぼ一時間の待機ってこと。もう少し何とかならなかったのかと思うけど、遅刻するよっか絶対いいはずだよね。
そして、こんな時だからなのか、あるいは間がいいと喜ぶべきなのか――
“運営”が、コンタクトしてきたのでした。
『ポヨン』という腰砕けなチャイムのあと、ゲームマスターの、女性スタイルの落ち着いた音声が、優しく鼓膜を震わす。同時にVR方式で、視界に控え目に、テキストも表示されたのだった。
『他プレイヤーとゾーンが重なりました。バトルを希望しますか?』
キターッ、と思ったよ(笑)。努めて、リラックスした声音で、応対する。
「その前に確認したいんだけど……」
『はい?』
「ご存じだと思いますが、今回の旅、僕、長距離で、しかも色んな交通機関を利用する予定なのです。タイミング悪く、相手を待ちぼうけさせるケースもあるんじゃないかと危惧しまして?」
相手は笑顔が発するであろう声音で、返答してきたのだった。
『ご配慮ありがとうございます。心配いりません。高い確率で、ストレスなくエンカウントすると、予測しております』
うん――
高性能のシステムが断言したんだ。じゃあ、いいよね?
僕はあらためて申し入れたのだった。
「諸元を表示してもらえますか?」
『同時に、相手方にも開示されることになります。了承されますか?』
「イエス」
『……相手方の意思も確認しました。データー開示します』
そうしてVR表示されたのが、これだった……。
プレイヤーネーム:まりん(Lv1 Ex100)
性別:female(女性)
年齢:15歳7ヶ月
コース:和歌山県白浜町⇒徳島県徳島市
ライン:100km
全幅:5000m
なるほど、確かにオーバーラップしてる――て! えぇ――
「こんなのアリ~!?」大きな声をあげていたのでした。
や、彼女――
徳島ラーメンでも食べに来るんだろか? 和歌山ラーメン食い飽きたのか?
動揺するこちらを放っといて――
『マッチングが成立しましたので』
とは、悪びれない運営の御言葉だった。
……なら、仕方ないよね。
良く考えれば、両者のライン長は等しいんだ。
レベル的にも年齢的にも、僕と同格と言っていい。まさにベストマッチ、じゃなかろーか。
運営にこれほどの仕事をさせたのだ。
つまり、逃げられないってこと! 苦笑だった。
委細承知して、僕はゲームマスターに参戦の意思を伝えたのだった。
ところで、Lv(レベル)は単純に“勝ち数”だよ。その数値の背後に膨大な“負け数”があるのかもしれない、即ち経験豊かな大ベテランである可能性があるけど、さすがにLv1じゃ、そこまで警戒しなくていいと思う。
Ex(経験値)てのは、これも単純に、“累計ライン長”のこと。
Exの値と、今回のコースのライン長が一緒、て言うのは注目点だと思う。
鑑みるに、僕もまりん(敬称略)も、“一回戦は勝ち抜けたプレイヤー”、だってことなんだろうね……!




