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誓いの果て  作者: のの
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ジルの恋

 リメルナ国の前は、エメラル、フレール、その近隣の同盟国が、野営の準備に取り掛かっている。




 リメルナの宮殿を、アイーシャの黒いブーツが軽やかな音を響かせて、広間に入る。


 各国の王や王子らが、挨拶をしているなかをエメラルの肌を晒した軍服が、男どもを魅了していく。


 アイーシャは、グレアムを見つけるとミムの時と同じく両手を広げた。


 ミムが吹き出した笑いをあたかも咳をしたように繕っている。


 グレアムも、母親に勝てる訳がなく、ハグに応じた。


 アイーシャの側には、キャスを夢中にしているララの姿がある。

 黒く長い美しい髪を頭の上でひとつに束ねていて、歩く度に軽やかに揺れている。

 キャスを通り越して行くララの後ろ姿は、黒い革で出来た軍服の、細く長い足と引き締まった小さなお尻が、キャスを魅了していた。


 隣でクラウスが、驚いた顔をしている。

「リーセ嬢にも、着てもらいたいか?」

 キャスがからかうように耳打ちする。

 クラウスは、赤くなりながら否定したが、想像しているに違いなかった。


 明日の朝の会議に備えて、軽く挨拶を交わし、酒で和やかに談笑し、戦いの前の健闘を称えあった。



 西にいちばん近いコッツウォートから、五人が馬に乗り、出てきた。


「凄いわね。」

 ジルは馬を止め、リメルナの前に出来た各国の野営の灯りを見つめた。


 これから戦いが始まることに、怖さはあったが高揚している自分もいた。

 今も、他の者の見回りを交代して出てきたのだ。


 もうかなり夜がふけ、辺りは静まりかえっている。



 ジルたちの横を他国の見回りが通りすぎて行く。


 いちばん西側に近いコッツウォートより先へは、グレアムが許可する斥候以外は、入っては行けないはずだった。


「あいつら何者!危険だわ、止めてくる!」

 ジルは、後を追いかけた。




「待ちなさい!勝手な行動は危険よ!」

 ジルの声に三人の男が、止まった。


「心配してくれて、ありがとうよ。お嬢ちゃん。」

 男は下品な笑みを浮かべる。

「エメラルの姉ちゃんたちに止められたら、喜んでベッドに入るが、お嬢ちゃんじゃあな。体より金を取るな!」

 三人の男たちは、大笑いした。


「おい!失礼なこと言うな!」

 ジルと一緒に来た、カルロスがジルの前に入る。


「うるせぇな。こちとら手柄たてれば、金が入るんだ。邪魔するなよ!」

 三人の男が、馬を急かし、進もうとした瞬間、いちばん前の男が、馬から落ちた。



 馬の上には、鉤爪から赤い血を流しながら、異形が笑っていた。


 いきなりの接近戦に、残った二人は慌てて剣を抜く。


 ジルも剣を抜いたが、カルロスが引くように指示をする。


 ルティスラ村からコッツウォートに向かう道中に現れた人のようなの異形が2体、人より小さめな異形が5体もいた。


 コッツウォートの面々はともかく、金目当てに出てきた二人は、当てにはならない。

 もう、すでに一人は死んでいる。


 カルロスは、金目当ての三人を見かけた時に、一人をコッツウォートに報告に行かせていた。

 揉め事が起こる前に対処していたが、コッツウォートは四人になっていた。

 すぐに、誰か来てくれるだろうが、人ほどの2体は厄介だ。

 アディ、サミー、キリウェルは一人で倒した。だが、彼らは別格だ。



 金目当ての二人が、勇んで突進していく。


「くっそ、ついてねぇな。」

 カルロスは、明日の朝、子供の誕生日を祝うために、夜の見回りに代えてもらったのだった。

 カルロスは、覚悟を決めた。


「ジル、援軍を呼んでこい!」


 カルロスの指示に、ジルが大声で返す!


「さっき送ったろう!要らぬ気遣いだよ!」


 バレたか。

 カルロスは、ジルだけでも、逃がそうとしたが失敗した。



 前方では、金目当ての二人は、呆気なく倒されていた。


 カルロスたちは、先に向かってきた人より小さめな異形に対した。


 皆、すでに小さめな異形とは相対していた。


 前の戦いで、学んだように一回の立ち回りで異形を斬り倒した。

 異形との、接近戦で最初に振り下ろした剣で倒せなかった者は、勝負に勝てない。

 異形に間合いなど無い。

 怯むことなく、何度も襲いかかり、皆殺られるのだ。


 ジルもあっさりと、異形を斬り倒した。

 カルロスは、騎士見習いのジルを誇りに思った。

 皆、無事に戻る。カルロスは、人ほどの異形に立ち向かった。


 二人一組で人ほどの異形に立ち向かったが、早くも1対1の戦いにされていた。


 カルロスとジルは、異形と剣を何度も重ね斬り倒そうと必死に戦っていた。

 闇夜に剣がぶつかり合う音が響くなか、馬のいななきが聞こえた。


 助けが来た。


 ジルは、ちょっと気がそれた。

 その瞬間、足下で死んでいる異形の血だまりに足をとられ、バランスを崩す。

 ジルが慌てて顔を上げると、異形は剣を振り上げていた。


 異形の剣は、ジルの肩から腰までを切り裂いた。


「ジル!」

 カルロスの声が闇夜に響いた。


 ジルは片膝をつくと、そのまま頭から異形の血だまりに倒れこんだ。


 異形が、剣を下に向け、自分に止めを刺そうとしている。

 ジルは、まったく動けず見ているだけだった。



 異形が、胴体を真っ二つに切り裂かれ倒れた。


 闇夜でよく分からないが、ガタイの良い男が、ジルを切った異形を真っ二つにして、もう1体の異形をも切り裂いた。



 男が、ジルを覗きこみ、何かを言っている。




 ニーナ、こんな酷いことある?


 強くて、カッコいい男が、現れたのに。


 恋した瞬間、死ぬなんて。



 ジルは、静かに目を閉じた。


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