ミッヒとカイ
洞穴の前で、ミッヒとカイは、少年と別れた。
自分は、大丈夫だから、カイの怪我の手当てを頼むと言われ、黒い狼にも促されるように首を振られ、ミッヒとカイは、森に向かう事にした。
ミッヒとカイは、森の中で遠吠えをあげる狼に向かって走るが、雪に足をとられ体力を消耗していた。
カイは肩に傷を負っている為遅れ始めていた。
「カイ、お前はあの岩場で待て。」
ミッヒは、立ち止まり、カイの背中を擦る。
「すまない。」
矢はすでに取り除ぞかれていたが、少年の力では治癒まではできなかった。
「くっそー、この辺りには、薬草が無いのか。第3所領なら、すぐ見つかるのに!」
ミッヒは、カイも少年と一緒に、洞窟に置いて来れば良かったと後悔した。
突然、上空から鷹の鳴き声が響き渡る。
鷹が餌を採るように、カイに向かってきたが、葉が数枚、落ちてきただけだった。
「薬草か、……ありがとう!」
ミッヒのお礼の言葉に、鷹が答えるように、また鳴き声が響く。
「…あれが女なら、俺は彼女と結婚するよ。」
苦しげにカイが呟く。
馬の嘶きで、話しが中断すると、銀色の狼を先頭に、狼達が、四頭の馬を囲むように現れた。
戦闘の中、主を亡くした馬だろう。鞍が着いたままの状態だ。狼に囲まれ静かに様子を伺っている。
急いで、鷹が落として行った葉を揉み、葉から液体が出てくると、岩に寄りかかっているカイの肩を掴み、急いで傷口に押し付ける。
鷹が落とした葉は、薬草として、この国ではよく知られ、冬場でも手に入る貴重なものだった。
国土のほとんどを、森と草原に囲まれた彼らは、木や草花に精通していた。
早く近くの街で、カイの治療が必要だ。肩の傷口も心配だが、熱が上がり体が震え始めていた。
応急処置の間に、銀色の狼が、仲間を連れ、ミッヒ達が走ってきた方向に進みだした。
「カイ、このままもう少し我慢してろよ。すぐ戻るからな。」
一頭の馬の手綱を掴み、馬に跨がると、急いで狼達の後を追った。