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誓いの果て  作者: のの
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24/77

旅路①

 テオグラード達一行は、フレールに向かい進んでいた。

 エメラルからフレールまでの急ぎ旅も3日目を向かえた。5日目の昼までには、フレールに到着する予定だ。


 テオグラードは、ロゼやマークに魔術の手ほどきを受け、凄まじく上達をしていた。

 魔術を抑える腕輪がなくなり、体調の心配をあまりしないで良くなったことは、早い上達に繋がっていたし、魔術を教えてもらうことにテオグラードが飢えていたことも一つの要因だった。


 暗くなる前に、野営の準備を始める。

 まずは、ここまで人として居たものが先に食事をして酒や、コーヒーを飲み少しくつろいだ。

 その横で、テオグラードがまた狼達に解除魔術で人に戻す。


「おー、やっと飯にありつけるぞ!」

 大将がどっかりと座り込む。

 ニーナが、野菜がたっぷり入ったスープを大将に渡す。

「う~ん、良い香りだ。ありがとう、ニーナ。」


「パンも持ってきますね。」

 ニーナは、甲斐甲斐しくみんなの世話をしていた。


「おい、自分のぐらい自分で取りに行けよ。」

 アディが呆れたように呟く。


「みんなが俺の世話を焼きたがるんだ。」

 ニーナからパンを受け取りながら、大将が満足そうにパンにかぶりつく。


「みんなが呆れて世話を焼いてんだよ!」

 サミーが笑いながら、コーヒーを飲む。


 アディは移民の子、両親はすでに他界している。兄弟はおらず、今は1人で第三所領に住んでいる。


 サミーは王都の中流階級の貴族の三男坊。貴族の子らしい甘え上手。だが三人のなかではかなりの世話焼きだ。


 大将は酒場の子。

 三人の姉に甘やかされて育ったお山の大将トマス。

 大将とは、あだ名ではない。

 正真正銘、テオグラードの隊の総大将だ。

 王兵、第一、第二と折り合いの悪い各兵達と渡り合えるからとテオグラードが任命した。



 三人はまったく違う環境の子でありながら、共に13才で第三所領の騎士見習いとなった。


 キリウェルは、三人の先輩騎士達を見ながら、自分の同期達は無事だろうかと考えていた。


「アディが次狼になった時は、リードを着けてみるかな。」

 大将が楽しそうに笑う。


「そのでけぇ尻に大きな歯形付けてやるよ!」

 アディが言うと、テオグラードが目に入った。

「おい!大将のせいで、殿下がキリウェルに狙いをつけてるぞ!」


「止めてくださいよ。そんな事!」

 キリウェルは、テオグラードに注意した後、

「大将!変な遊び考えないでください。」

 大将も一喝した。


 笑いが起きるなか、ニーナがテオグラードにクッキーを持ってくる。

「殿下、クッキーはこれが最後ですよ。」

「えー!」

 ニーナはにっこり笑う。

「フレールに着いたら、どこかで厨房を借りて、また作れると思いますから、しばらく我慢してくださいね。」

「うん。分かった。」

 残念そうにテオグラードが返事をすると、横からテオグラードの残り少ないクッキーを取り、リリアーナが頬張る。

「美味しい!」

「だろ!ニーナのクッキーは世界一美味しいんだよ!」

「止めてください!恥ずかしいです。」

 ニーナが真っ赤になって慌ててる。

「ニーナさん、私に作り方を教えてください!」

 リリアーナの、必死なお願いに思わずニーナは頷いていた。


 みんながのどかな夕食を終え、コーヒーを飲みゆっくりする者、警備に入る者、寝に入る者、狼に変わっていく者がいる中、ニーナが片付けをしているとジルが近づいてきた。


「良いの?クッキーの作り方なんて教えて!恋敵に!」


「…恋敵って!声大きいし!」

 ニーナは真っ赤になった。


「王子様取られちゃうよ!」

 ジルは、いたずらっぽくウィンクする。


「取られるも何も、無理があるでしょ。私一般市民なのよ!」

 ニーナが、悲しそうに呟く。


「でも、殿下は、そういう事にあまりこだわらなさそうだけど。」

 ジルは、テオグラードを見た。


「王子様には、やっぱりお姫様よ。」

 ニーナも、リリアーナと話すテオグラードを見ていた。


 ニーナは、10才の頃、人買いに連れられてコッツウォートに来た際、助けられた娘だった。

 コッツウォートでは、人身売買は売るも買うも禁止されていたが、人買いは知らずにコッツウォートに入り捕まり、ニーナは第三所領の教会に預けられ、育てられた。

 ニーナにとって、人買いが間抜けだったことと、人買いが捕まったのが第三所領だったことは幸運だった。

 この教会は、第三所領所有の教会なので、当然テオグラードは毎週通っていた。

 人見知りしないテオグラードは、教会に来る度に、民に声をかける事を怠らないので、ニーナにも気さくに話しかけた。

 ニーナは、テオグラードより1つ年上だが、人見知りで、面と向かって話せないのでいつも下ばかり見ていた。

 そんなニーナに、テオグラードは、いつも同じ問いかけをした。


「ねぇ、ニーナ、これ見て!」

 見てほしいものは、いつも顔の横にあった。

 お花だったり、お菓子だったり、いつもたいした物はなく、最後は、

「これ、あげる。」で終わり、ニーナは、

「ありがとうございます。」と答えるだけ。

 それでも、何度も繰り返せば、二人はにっこり笑ってこの会話を楽しむ。ニーナは、いつの間にか、面と向かって話せるようになっていた。


 ニーナは、昔を思い出しながら呟く。


「王子様には、やっぱりお姫様よね。」


「何、弱気になってんの!思いきって告白しちゃいな!」

 ジルがニーナの背中を叩く。


「もう~、聞こえちゃうでしょう!それよりこれから心配だわ。戦いになるかもしれないのでしょう。」


「このジル様に任せな!殿下は必ず守るから!」

 ジルは胸を叩き、笑顔を見せる。


「ありがとう。ジルも気をつけるのよ!」

 ニーナは、安心したように微笑んだ。

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