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小説家になろうラジオ大賞4

量子力学的には正しい

作者: 尾手メシ

 たっくんはどうにも夢見がちだ。

 いつもありえないような事を平然と言うものだから、私もついつい言ってしまう。

「そんなわけないじゃん」

そうすると、たっくんは決まってこう言うのだ。

「量子力学的には正しい」

言ってやったぜとでも考えていそうな、たっくんのキメ顔にイラッとする。


 たっくんによれば、量子の世界では全てが確率でしかないらしい。そこに物があるかも確率、壁に向かって投げたボールが跳ね返ってくるかも確率、箱に入れた猫が生きているかも確率なのだという。文系の私には何の事だかさっぱりだ。

「生きた猫を箱に入れたなら、生きてるに決まってるじゃん。何言ってるの?」

「だから、量子力学の世界では全てが確率なんだよ。何かこうさ、こう、確率で良い感じに猫が死ぬんだよ」

 良い感じに猫を殺すなよ。

 たっくんも私と同じで文系だから、実際のところ、量子力学のことは何も分かっていないのだ。ただ言葉の響きが格好良いから言っているだけだということは知っているけれど、たっくんには気付いていないふりをしてあげている。たっくんのキメ顔は確かにイラッとするけれど、その子供っぽいところが可愛らしくもある。アホの子ほど可愛いと言うでしょう?


「つまりだ、俺があの娘とお近づきになれても何もおかしくないんだよ。量子力学的に正しい」

 そう言って、たっくんはいそいそと推しのアイドルのライブに出掛けていった。いや、おかしいでしょ。なれるわけないじゃん、アイドルとお近づきになんて。

 でも心優しい私は、何も言わずにたっくんを送り出してあげた。だって気付いているんだもの、たっくんが内緒で指輪を準備していること。サプライズで誕生日に渡そうとしてくれていることはお見通し。たっくんは本当に夢見がちだ。

 来年の今ごろには、きっと名字も変わっているはず。間違いない。量子力学的に正しいのだ。

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