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生きたがりの君と死にたがりの僕  作者: 飛鳥シンジ
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4月③

 始業式の翌日、これまたクラス替えで定番の委員会選考があった。

 僕はそういったことは今までやってこなかったし今回もやるつもりはなかった。のだが…


 「じゃあ次は図書委員、やりたい人いますか~」


 と、壇上にいるのは斉藤若葉。当然のように学級委員に立候補、当選した彼女が仕切っているようだ。


 「はいはいはい~!!!」


 千歌が元気に手を上げた。ちょっと意外な気がした。活発な人、という第一印象は間違っていないようだったが、それ故図書委員というのは似合わない気もした。なんとなく図書委員というのは大人しい文学少女がやるイメージがある。

 

 「女子は千歌で決定…っと。男子は?誰もいないとじゃんけんになっちゃうよ~」


 すると席替えで偶然(ほんとに偶然か?と疑った)後ろの席になった和馬が肩をたたいてきた。


 「奏多、お前やれば?」


 「はあ?何で僕が?」


 「だっていつも暇そうだし、超かわいい千歌ちゃんとお近づきになれるかもじゃん」


 「じゃあ和馬がやればいいじゃないか。彼女作るチャンスだろ」


 「いや俺は体育委員になったし。会議聞いてなかったのかよ」


 確かに聞いていなかった。そして和馬は続ける。


 「それに、俺はちっちゃい女の子が好みなの。もちろん千歌ちゃんは好き好きだけどぉ~~」


 「キモすぎ」


 とはいえ確かに千歌は非常に綺麗だ。あんな子が彼女だったらさぞかし楽しいだろう。

 そこまで考えたところで僕の頭がズキッと傷んだ。

 -こんな希死念慮抱えてる根暗なんて、どんな女の子も願い下げだな-

 -それにもし千歌と付き合えたからって何になるっていうんだ?どうせ100年後にはみんな死んでるし、突出した才能も頭脳もない自分が生きていて何が起きるっていうんだ-


 まずい、いつもの悪癖だ。自己嫌悪で吐きそうになってきた。頭を振り、会議に戻る。


 若葉は数十秒待ったが誰もやりたがらなかったようだ。他の委員になってない男子全員でジャンケンになった。大人数のジャンケンになったときは最初は2つの組に分けてそれぞれでジャンケンをする。掛け声はお決まりのあれだ。


 「「グッとパ~で分かれましょ!」」


 するととんでもないことが起きた。


 「は?」


 なんと僕だけがグーで周りのみんなはパーを出していた。不正だ不正だと喚いてみたが通らず。それにそんな談合をしている時間はなかった。まさかの低確率、麻雀で言えば天和、ポーカーで言えばロイヤルストレートフラッシュクラスだろう。するとそれを見ていた千歌が嬉しそうに笑いながら、


 「及川くんすごいジャンケン弱いんだね~!私より弱い人初めて見た!」


 と話しかけてきた。あまりにキラキラしすぎて目を直視できない。


 「う、うん…」


 と陰キャ丸出しの返答をしてしまった。それでも千歌は

 

 「一年間よろしくね、及川くん!」


 とにこやかに笑った。


 僕はどうして昨日会ったばかりで話したこともない特徴もない僕の名前を覚えているのか、疑問に思う余裕すらなかった。


 

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