37-3 手紙は心を映した鏡である
「さて、賭けは君の勝ちだなウィズ嬢、このままメティスがいる書庫へ殴り込みに行こうか?」
「うん!」
「よし、良い返事だ、ならばすぐに……」
言葉を途切れさせ、王様が急に真面目な顔になりポケットから映像石を取りだした。
映像石とはその名の通り、同じく映像石を持つ相手と、その場の光景を切り取ってお話が出来る優れものだ。
現代で言う『てれびでんわ』みたいだよね!
ん? げんだいでいうとって何だろう?
王様は光り輝く映像石を起動させると、光が空中に浮かび上がりそこからぼんやりとディオネ様の姿が浮かび上がった。
「ディオネ、連絡をしてくるという事は状況に動きがあったのか?」
『はい、予定通りグランデン次期公爵の隠し通路の前で数名の兵士と共に隠れて待ち伏せをし、今その隠し通路へ入っていくグランデン次期公爵の姿を確認した所です』
「そうか、ならば後を追いグランデン卿が隠している物がなんなのか調べろ」
『かしこまりました』
映像石との通信は繋いだまま、壁の石を押して現れた隠し通路の中へディオネ様は兵士と一緒に入って行く。
これは……この前ゼノとアリネスと一緒に見つけたライアン様の隠れたお部屋の調査をディオネ様達がしているという事だろうか?
王様は真剣な面持ちで映像石の映像を見ているし、事が落ち着くまで私は大人しくしていた方がいいよね。もしも、これでライアン様が隠していたものがみんなが予想していた通り、エランド兄様の身を危険に晒す物だった場合、証拠を捕らえる事でエランド兄様の身は安全になるからね。
私は早くメティスに会いたいという気持ちを堪えて、大人しく部屋で待つ事にしたんだけど……ふと、机の横に置かれた開けっ放しの箱にくしゃくしゃの紙が投げ込まれている事に気がついた。
「あれなにかな?」
なんとなく気になってしまって、それを持ち上げて広げてみた。
「あれ……私の名前だ!」
その捨てられていた紙には「ウィズへ」とメティスの字で書かれていて、これが手紙であったものだと分かった。
もしかして、メティスは私に手紙のお返事を書こうとしてくれていたのかな? でも出す事が出来なくてこうして捨ててしまったんだろうか?
どきどきと胸が高鳴り期待をしてしまう。メティスはどんな事を私に伝えようと手紙を書いてくれたんだろう? でもなんで捨てちゃったんだろう?
捨てられたものを見てしまうのは気が引ける、でも私へ宛てられたものなんだし見てもいいよね? と、心の中で言い訳をしながらそのくしゃくしゃな手紙の中身を見ようとした時だった。
『なんだ貴様達は?! ど、どこから入ってきた?!』
映像石からライアン様の焦った声が響き渡った。
驚いて咄嗟に私宛の手紙を胸元の服の中に詰め込んで、私も映像石の光景を見ようと王様の隣に近寄った。
『グランデン公爵、城内の外れにこのような隠し部屋を持っているとは聞いていませんね、王家に無断でこのような場所を設けるなど罰せられる覚悟はおありか?』
『チィッ! 王家の犬が……ッ』
『この場を塵一つ残さず徹底的に調べろ』
『なに?! やめろ!!』
ディオネ様の指示で隠し部屋にぞろぞろと兵士が雪崩れ込んできて、部屋に置かれている書類や私物などを押収し調べていく。
ライアン様はかなり焦った様子で、やめろ触るなと叫びながら暴れそうになったので、兵士が二人がかりでライアン様の体を床に押さえ込んで身柄を拘束した。
「王様、ライアン様やっぱり悪い事していたの?」
「この部屋で何をしていたのかにもよるが、城内に勝手にこのような部屋を作っていたというだけでも罪にはなるからな、まだ証拠が出ていない今その名目での身柄の拘束だな」
「なるほど! ガサ入れってやつですね!」
「うん?」
ライアン様の怒声が飛び交う中で、兵士達とディオネ様のガサ入れは続行される。
『ディオネ様、奥に何やら布が掛かった大きな物体があるようなのですが』
『どれだ』
『あちらです』
ディオネ様がそれに近づくと、ライアン様は床に押し倒された状態で目の色を変えて叫んだ。
『やめろ! 汚い手でそれに触るな!!』
明らかに今までとは違うその態度に、一同は確信をしたんだろう。
これが、ライアン様の黒い証拠になるものだと。
もしかしたら、エランド兄様を陥れる為の暗殺道具とか、悪い貴族名簿とかが隠されているのかもしれない。
ごくんと唾を飲み込んで、ディオネ様が何かが隠された布を掴んだ姿を見守った。
『改めさせて頂く』
『やめろぉおおおおっっ!!』
バサァッと、布が取り払われ、巨大なそれが姿を現した。
◇◇◇◇◇
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