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悪役令嬢は魔王と婚約して世界を救います!  作者: 水神 水雲
第13章 赤獅子の王と光の小鳥(エランド編)
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135-2 ダンスの誘い



 王族席に一番近い場所のバルコニーに移動した。ここなら他の貴族達は入って来られないのでゆっくり出来るだろう。


「もう出てきてもいいぞ」

『チュピッ』


 ラフィは俺のファーから顔を出すとそのままバルコニーの手すりに降り立った。


「ついてきたいと言うから連れてきたが、あまり楽しいものでもなかっただろ?」

「不思議いっぱいでした!」

「そうなのか?」

「パーティーは人間達が契約する場所なんですか?」

「契約?」

「ダンス、特別です!」


 ラフィが人間ではない精霊寄りの何かという事までは判明していが、時折こうして俺から学んでいないような発言をするようになってきた。


「ラフィは時々、俺も知らないような精霊のルールのようなものを口にするな」

「力がもりもりになると賢いです!」

「ふむ……つまり、力が戻るにつれて知識が身につくという事か?」

「エランド様賢いです! 力がいっぱいになると最初の記憶が伝達されます! 人間は違うんですか?」


 人間は親に感情、知識、感性を教えて貰う生き物だが、精霊は違うらしい。そう言われてみると親から生まれるというよりも、自然界から産み落とされたという印象が強い。精霊は誰かに教えてもらうというよりも、世界の知識をその命に伝達されていくという方が正しいんだろう。そして、その知識は精霊の力に比例するようだ。より力が強い者の方が、世界から情報を学べるという事だろうと、ラフィと話をするようになってから分かった。

 ラキシス曰く、ラフィと俺は力を渡しあって魔力を高めているとか。これが続けばラフィはいずれ枯渇した魔力が回復して、必要な知識を思いだし精霊として完全体になれるだろう。


 何故俺まで魔力量が増えているかは分からない部分だが。


「精霊達にとってダンスは特別なのか?」

「精霊にとってじゃなくて、私達にとってはです!」

「私達?」


 俺とラフィか? と聞いてみたが、違うと首を振る。


「私達、です!」


 つまり、ラフィと誰かという事だ。

 ほぼ精霊で確定だろうと思っているが、この話し方だと精霊達とは違うようだ。精霊にも色々な種族がいるからな……そういった意味なのだろうか。


「俺やメティスも炎と水の大精霊と契約したが、ダンスなんてしていないしな」

「あれは違いますよ!」

「違う?」

「ごぎょー大精霊同じで、違います!」


 同じで違う……それが何を指しているのか、今のラフィでは上手く説明できないかもしれない。


「お前にとってダンスは何かの契約だろうが、人間は社交をするという理由で踊ったりもするんだ」

「楽しいからですよね、分かります! だって、最初にダンスを踊って契約としたのは人間の子でしたから!」

「それは……?」

「なまえ、なまえ? クルルル……?」


 ラフィが困ったように項垂れて唸っていたので、大丈夫かと頭を指先で撫でてやると、急に顔を上げた。


「分かりました! 聖女です! 聖女という人間が始めたことです!」

「聖女が始めた……つまり初代聖女の事か?」

「楽しそうでした、とても! 半分も聖女と踊るの嬉しそうでした! 王様も聖女から楽しいを覚えました!」

「ま、待てラフィ。情報が追いつかない、どういう意味なんだ」

「エランド様も!」


 ラフィは嬉しそうに満面の笑みを浮かべて見せた。


「エランド様もわたしと踊る約束、してくれてました!」

「え……」

「あ、でもわたしだけどわたしじゃないですね? わたしができる前のその前の約束だから、わたしとは約束してない?」


 ラフィは突然あからさまに落ち込んでしまった。


「わたしもエランド様と踊りたかったです……」


 もしも、この場にゼノとメティスがいたら軽率な事をするなよとか。ダンスが契約という生き物をこれ以上匿うのは止めてください、と怒られそうなものだが。目の前で項垂れている真っ白な鳥が可愛いと甘やかしたくなる衝動は抑えられそうにない。


「いつか俺と踊ろうラフィ」

「ピ! いいんですか!」

「ああ、お前はまだ弱った状態だからすぐには無理だが。いつか本来の力が戻った時に、お前がまだそれを望むのなら、俺と踊ろう」


 おそらく精霊という不確定な生き物だが、助けた時から傍にいてやらねばという覚悟はあった。赤目は複数の精霊と契約できる体質だというからな、ラフィと契約することも可能だろう。


「うれしいです……すごく嬉しいですエランドさま、ありがとうございます」


 小鳥の小さな瞳から涙がぽろぽろと流れ出す。


「わたしの片割れもきっと、この時に幸福ということばを覚えた、です」


 どういう意味なのか、それを聞くにはラフィは涙を流して感情を溢れさせてしまっている。


「今宵は星空が見えるいい夜空だ」

「ピ?」

「今日は人間式のダンスを一緒に踊ってみないか」


 ラフィを手の平に乗せて、ダンスの構えを取る。


「人間はこうして共にダンスを踊るんだ」

「ピピピ~!」


 ダンスのステップを踏み、くるりと回転すると、ラフィは手のひらの中で驚きながらも目を輝かせた。


「くるくる楽しいです! 人間のダンスもたのしいです!」

「よかった」

「ダンス! エランド様を独り占めしてるみたいで、嬉しいです!」

「ははは」


 未来の約束を交わして、俺とラフィはしばしの間夜空の下でダンスを続けた。


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